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ライトHノベルの部屋
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~ラブラブハーレムの世界へようこそ♪~
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恋情(2)
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美姉妹といっしょ♪~新婚編
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宏が懐かしい面々に想いを馳せていた頃。 夏穂と飛鳥、美優樹の叔母・姪トリオはキャリーバッグ片手に地元の駅へ向かって歩いていた。 そこからローカル線のディーゼルカーで三十分の距離にある県庁所在地の街まで行き、東京行きの新幹線に乗り換えるのだ。
「ねえ、夏穂姉さん。向こうに着いたらすぐに宏先輩の家へ行くの?」
長い栗色のツインテールを揺らした飛鳥が叔母に向かって目線を少し下げて尋ねる。 飛鳥は身長百八十センチ、張りのある肌、瑞々しい唇、切れ長の瞳に鼻筋の通った小顔を持つ十八歳の美少女だ。 そんな飛鳥が自分より十センチ低い叔母と歩きながら話すと、どうしても目線が下がってしまうのだ。
「そうね~、先にホテルへ荷物を置いてからにしましょ。その方が身軽に行動出来るしね♪」
セミロングの髪を背中に払った夏穂が満面の笑顔で応える。 これから宏のいる東京へ行くので足取りも軽い。 夏穂は凛々しくも優しさを湛えた瞳、皺ひとつ無い肌、目鼻立ちの整った顔など、とても三十路の女性とは思えない若々しさと美貌を備え持つ美女だ。 飛鳥と並ぶと、どう見ても歳の近い姉妹にしか見えない。 そんな二人に並んで歩く、もうひとりの美少女が首を傾げつつ声を掛ける。
「それはそうと、僅か一週間の滞在中に正式な部屋を決められるの?」
こちらは髪の色から姿形(胸のサイズを除く)まで何から何まで飛鳥と瓜二つの美少女――もうすぐ十六歳になる――美優樹だ。 但し、こちらはスカートの裾が長く、黒を基調にして白いフリルがたくさん付いた衣装、いわゆるゴスロリ衣装を纏っている。 美優樹はこの手の衣装が何より好きなのだ。 半袖の腕には肘まで隠れる黒のグローブを嵌め、細い足にも黒のニーソックスを穿いている。 ナチュラルメイクに黒のレースの帽子を被り、全身黒で統一されたその姿は秋葉原ならともかく、周囲に田んぼしかない田舎町には少々(かなり?)そぐわないファッションだ。 赤のミニスカートに白のニーソックスとチェックのシャツの姉や、紺のタイトスカートと焦げ茶のストッキングにジャケットスタイルの叔母と比べても明らかに一線を画している。 しかし、一見、儚げな雰囲気を持つ美優樹が着ると、これが案外、似合っているのも事実なのだ。 そんな美優樹からの問い掛けに、夏穂は掌をパタパタ振って笑い掛けた。
「大丈夫よ。ちゃんとネットや友人からの賃貸情報を持ってるから、まぁ何とかなるでしょ。一度っ切りの人生、楽しまなきゃ損よ♪」
ウィンクひとつ、投げて寄越す夏穂に美優樹は苦笑する。 姉や自分とは違う、楽天的な思考と性格が羨ましく思えるのだ。
「でも宏先輩、ちゃんと日本に帰って来てるかな? 予定が伸びた、とか飛行機が遅れたから明日帰って来る、とか言わないでしょうね?」
若干の不安を滲ませ、飛鳥が眉根を寄せる。 三人は東京での住まいを決める為に上京し、ついでに新婚旅行から帰国した宏に逢う(強襲する?)腹積もりなのだ。 しかし、心の中では宏に逢う事が第一優先順位となっている。
「大丈夫よ。ちゃんと宏クンのご両親から『今日帰国して家に帰る』って聞いたから間違い無し♪」
姪の不安を吹き消すかのように瞳を輝かせた夏穂が破顔し、自信満々とばかり大きく胸を張る。 するとDカップの双丘が柔らかそうにプルルン♪ と揺れ、それを目の当たりにした飛鳥の瞳が親の敵とばかり、きつく吊り上る。 夏穂の豊かな胸はAカップ娘――飛鳥の天敵なのだ。
「くっ! 無駄にデカい胸晒してからにっ……。だったら、さっさと東京に行きましょっ!」
足早から駆け足になって駅に駆け込む飛鳥。 夏穂と美優樹は顔を見合わせ、宏に逢いたいと素直に言えない飛鳥に微笑むのだった。
☆ ☆ ☆
「みんな起きて。もうすぐ終点だよ。ほらっ、もう着いたよっ」
車内に到着を告げるアナウンスと接続列車の案内放送が流れる中、宏は女子高の修学旅行の引率教師張りに長旅の疲れと時差ボケ(ストックホルムと日本の時差は八時間だ)で熟睡している美女軍団をひとりずつ起こして回る。 六人の美女達は三人掛けシートを向かい合わせにして肘掛けを跳ね上げ、肩を寄せ合って眠り込んでいたのだ。
「ん~~~、もう着いたの? あと二時間は寝ていたい気分だわ」
目を擦りつつ、頭を小さく揺すって最初に目覚めたのは千恵だ。 頭の高い位置で縛ったポニーテールがリボンのように揺らめき、それが隣で寝ていた妹の顔をくすぐる。 すると、切れ長の瞳を半分開けた若菜が顎を上げ、両手を伸ばして曰(のたま)った。
「宏ちゃん~、おはようのキスぅ~♥」
どうやら若菜はまだ寝惚けているようだ。 そんな宏と千恵、若菜の声と車内のざわめきが残りの面々を起こした。
「ん……。ヒロクン、着いたみたいだね」
「あ……姫乃川が見える……ってコトは着いたのね。なんだか懐かしいわ」
「くぅ~~~、よく寝たぁ~。ん~~~、小一時間は熟睡してたな。……おぉ、懐かしい建物が見えるぞ♪」
窓の外に懐かしい風景を見た優が座ったまま大きく伸びをし、ほのかと真奈美も見覚えのある川やビルに目を細める。
「はぁ~、中途半端に寝るもんじゃないわね。家(うち)に着いたら熱いシャワーとキンキンに冷えたビールでスッキリしたいわね」
半目のまま長い髪に構わずボリボリと頭を掻く晶は、どこに行ってもマイペースだ。 もっとも、この位の肝っ玉を持ち合わせていないと会長秘書の激務など到底務まらないだろう。
「みんな、あともうちょっとだから頑張って。家(うち)に着いたらゆっくりと横になって休めるからさ」
宏は手荷物を下ろしながら声を掛けるが、六人の美女は生まれ育った故郷へ着いた気の緩みで動きにイマイチ精彩が無い。 座席に座ったまま、ボンヤリと窓の外を眺めている。 とそこへ、まだ寝惚け半分の若菜の澄んだ声が車内に響いた。
「休むなら~、宏ちゃんの濃厚な精液飲んでから休む~~~♥」
乗り合わせた乗客とたまたま通りかかった車掌や車内販売のお姉さんから一斉に冷ややかな視線を向けられ、若菜以外の面々は到着まで頭を抱えてシートに身を伏せるしかなかった。
「あ~~~、やっと着いた、って感じ。なんせストックホルムを発ってから丸々十五時間近く経ってるもんな~」
新幹線の十四番ホームに降り立った宏が開口一番、大きく伸びをしながらつい独りごちる。 すると、隣に立っていた晶も首や肩、腰を捻りながら頷いた。
「ホント、ずっと座りっ放しっていうのも結構疲れるものなのよね~」
二人の話を聞き付けた面々も同じような感想を漏らし、その場で笑いの花が咲く。 もっとも華やかなのは宏達だけで、同じホームの反対側――十三番線には発車間近の東京行き新幹線が据えられ、ホームは列車から降りた乗客とこれから発つ乗客とで雑然としていた。
「中央のエスカレーターは混み合っているから……向こうのエスカレーターで下に降りようか」
前方に見えるホーム西側のエスカレーターに向け、宏は美女軍団の先頭に立って歩き出した。
☆ ☆ ☆
夏穂達三人は一階にある在来線ホームから二階にある新幹線コンコースへと足を向けていた。
「ほら、急いでっ。あと五分で新幹線が出ちゃう! こんな何も無いトコで一時間も待つなんてイヤよっ!」
飛鳥が夏穂を急かし、妹と共に足を速める。 実家の最寄り駅から乗った列車が信号トラブルの影響で三十分近く遅れて到着し、乗る予定の新幹線に間に合うかどうかの瀬戸際なのだ。 この新幹線を逃すと、次は十四時二十八分まで東京行きは無い。
「えっと……何番線?」
「十三番線だよ」
飛鳥の問い掛けに、阿吽の呼吸で答える美優樹。 三歳違いだが、息の合ったコンビネーションは双子の千恵姉妹や晶姉妹並だ。
「ほら急いで……って、あれれ? 夏穂姉さん、どこ行った?」
乗換え改札を抜け、新幹線コンコースまで来た飛鳥が後ろを振り返ると、いる筈の人物がいない。 慌てて周囲を見回すと、ホームへ上がるエスカレーター横に設置されている売店から聞き慣れたアルトの声が耳に届いた。
「飛鳥ちゃん~。まだ三分あるから、そんなに慌てなくても大丈夫よ~。自由席なんだから、次の列車に乗ったって好いんだし~♪」
焦る飛鳥を尻目に、夏穂はのんびりと駅弁を三つ、買っていた。 しかも、二合徳利に入った日本酒とおつまみまでも追加購入しているではないか。
『間も無く、十三番線から十三時二十八分発……』
飛鳥がヤキモキしながら叔母を待っていると、東京行きの発車アナウンスが聞こえて来た。 同時に、十四番線に列車到着を告げるアナウンスもコンコースに流れる。
「げげっ! 夏穂叔母さん急いでっ! 新幹線が出ちゃうっ!!」
いよいよ焦って両手で手招きする飛鳥の頭上に、ズズン、ズズン、と重い音を響かせて新幹線の走る音が聞えて来た。 この列車が到着した三分後に東京行きが出発するのだ。
「早く、早くっ!」
「まったくぅ、落ち着いて買い物も出来やしないわねぇ~」
昇りエスカレーターと平行して設置されている下りエスカレーターには、到着した新幹線の乗客が姿を見せ始めた。
「ほらっ。叔母さんっ、急いでっ!」
額に青筋を浮かべた飛鳥は、素面なのにまるで酔っているかのような口振りの夏穂の背中を強引に押し、ホーム中央に向かう昇りエスカレーターへ乗り込んだ。
(つづく)
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恋情(3)
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美姉妹といっしょ♪~新婚編
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宏達が乗った新幹線が十四番線に到着した時、同じホーム向かい側の十三番線には飛鳥達三人が乗る予定の新幹線が間も無く出発しようとしていた。 ホーム中央へのエスカレーターを昇る飛鳥達三人と、ホーム西側のエスカレーターからコンコースへ下りようとしている宏達七人。 果たして運命の再会と相成るのだろうか――。
☆ ☆ ☆
昇りのエスカレーターからホームへ上がった飛鳥は首を左右に巡らせ、慌てたように叫んだ。
「あれれっ!? どっちの列車に乗るの? それに自由席っ! 自由席はどっち!?」
ホームの両側には車輌の形や窓周りに塗られた色が全く同じ列車が据えられていた。 片方はこれから乗る東京行き、もう片方は東京から着いたばかりの列車なのだがどちらもドアが開き、乗客が乗り降りしているのでパッと見だけではどちらが東京行きなのか判らない。
「お姉ちゃん、十三番線はこっち。右に停まってる列車の前四輌、一号車から四号車までが自由席だよ」
すぐ後ろにいた美優樹が頭上に視線を向けてから姉を案内するように歩き出す。 美優樹はホームに上がった所にある発車案内板を確認しての行動なのだが、気が急いている飛鳥には目に入らない。 一刻も早く宏のいる東京へ行きたいと言う想いで頭が一杯なのだ。 しかも、出発時刻が迫っている。
「判ったっ。美優樹、走るわよっ! 叔母さん、急いでっ!」
「こらっ! 誰が叔母さんじゃっ! お姉さんと呼べと、何度も言ってるでしょ……」
「あっ、お姉ちゃん、待って……」
夏穂の怒りの篭った声と妹の制止する声を背中で聞きつつ、バッグ片手に陸上部で培った俊足を飛ばしてホーム前方へと駆け出す飛鳥。 しかし幅のあるホームとは言え、到着列車から降りた人やこれから乗る人が入り乱れて真っ直ぐに走る事が出来無い。 右に左に人を避けつつ車輌の出入り口に表示されている号車番号を確かめながら走っていると、発車を告げるベルが鳴り出した。
(やばいっ! 急がないと乗り遅れちゃう……ん?)
飛鳥がふと視線を前に向けた時、腰まで届く見事なまでの漆黒のストレートヘアや光り輝く金髪をなびかせた女性などがいる一団に気付いた。 どうやら今着いた列車に乗っていたグループらしく、前方に見える西側のエスカレーターで下りるようだ。
(みんな背が高いのに、一人だけ背の低いポニーテールの女の子が混じってるけど……日本の高校生かしら? なんだか国際色に溢れた変った集団ね)
飛鳥の頭の中は宏と逢える喜びで占められ、宏の妻となった面々の身体的特徴がすっかりと忘却の彼方にあった。 宏達が東京にいると言う先入観も手伝い、飛鳥は目の前の集団が誰なのか気付かずに想い人共々見逃してしまう。 宏が背の高い女性陣に囲まれて見え難かった事も、飛鳥にとっては不運だったのかもしれない。
(……って、それよか美優樹と夏穂姉さんはちゃんと付いて来てるんでしょうね!?)
長いツインテールを真横になびかせつつその集団を追い越した所で、飛鳥は目指す四号車のデッキに飛び乗った。 少し荒くなった息を整えつつ後から付いて来ている筈の二人を確認する為に振り向いた、まさにその時。
「え゛っ!?」
この世で最も愛すべき男性(ひと)が、そしてここにいる筈の無い人物が目の前を歩いているではないか。 信じられない光景に息が詰まり、胸が急激に締め付けられる。 頭の中が真っ白になり、自分が立っているのかしゃがんでいるのかも判らなくなる。
「宏先輩っ!?」
それでもひと言だけ、飛鳥の口から愛しい男性(ひと)の名前が飛び出した。
☆ ☆ ☆
ここで時間は少し遡る。 宏が一団の先頭に立ってホームを歩いていると、すぐ後ろを歩く千恵が宏の腕を取った。
「ねえ、宏。このまま家(うち)に帰る?」
メンバーの中で最も良識派である千恵が上目遣いに宏を見つめ、続けてほのかと真奈美に視線をチラリと向ける。 実家に帰る前に、この街にあるほのかの家や途中駅にある真奈美の家に寄って挨拶しては? と暗に提案したのだ。
「あ……そうか。ほのかさんのお義母(おかあさん)にはストックホルムで目一杯お世話になったし、真奈美さんのご両親にも帰国報告しとかないと拙いわな」
面倒見が良く、一般常識にも長けている千恵ならではの気遣いに、宏はそれもそうかと思案する。 しかし、いくら気丈に振る舞っていても新幹線の車中で爆睡していた妻達を見ているだけに、今日は真っ直ぐ帰って休んだ方が好いようにも思える。
「でも、みんな長旅で疲れているし、突然大人数で荷物を持ったままお邪魔するのもナンだし……」
「まぁ、そう……ね。正直、今日はこのまま帰りたい気分ではあるわよねぇ。でも、ほのかさんや真奈美さんは、まずは実家に帰りたいんじゃ……」
「あ、オレの家(うち)なら今日でなくてもいいぜ。休みはまだまだあるんだし、宏の実家はオレのもうひとつの家にもなったんだし♪」
ほのかが手を振りながら千恵の言葉を遮ってウィンクし、真奈美も同感とばかり首を縦に振る。 二人にとって、愛する男性(ひと)の実家が自分の実家と等しく思える幸せに浸っているのだ。
「それじゃ宏。今日はみんな疲れているから、このまま宏の家(うち)に帰る、ってコトで」
千恵の言葉を肯定するかのように、筆頭妻の晶や補佐役の優も頷いている。 宏がみんなをよくよく見ると、肌艶が失われ、肌の張りも無い。 どうやら地球を一周した疲れがここに来て出たようだ。
「うん、そうだね。今日は無理しないで、日を改めてそれぞれの家(うち)にお邪魔しようか」
宏の決断に、五人の妻達が一斉に微笑む。 流石に今日はこれ以上の寄り道をしたくなかったのだ。
「あ、あの~、私の意見は……」
「それじゃ、さっさと帰りましょ♪」
ひとりだけ元気溌剌な若菜はともかく、全員一致の結論に(妹の意見は聞くだけ無駄なので無視した)千恵は内心これでようやく心身共に休めると安堵し、満面の笑みを零す。 と、宏に視線を向けた時、後ろから駆け足で追い越して行った背の高い少女が目の前のデッキに乗り込むのが目の隅に映った。
「ん? あの娘(こ)、どこかで見たような髪型ね」
こちらは追い越された側なので顔は判らないが、少女が列車に飛び乗った時に栗色の長いツインテールがなびいているのが見えたのだ。 千恵は飛鳥に似た娘がいると教えようと、宏の腕を引く。
「ねえ、宏。今、追い越してった女の子……」
宏を先頭にした集団が少女の飛び込んだデッキの前を通り過ぎている、まさにその時。 宏の名前を叫ぶ甲高い声が辺りに響いた。
☆ ☆ ☆
「え゛っ!? ……………………宏先輩っ!?」
ずっと恋い焦がれていた男性(ひと)が突然目の前に現れ、飛鳥は思わず一歩下がって狼狽えてしまう。 その鋭い声が、たった今追い越した集団の足を止めた。 突如名前を呼ばれ、先頭を歩いていた人物も首を巡らせて驚きの声を上げる。
「……えっ!? 飛鳥ちゃん!?」
「…………………………うそっ!」
この時、飛鳥の耳にはホームに鳴り響く発車ベルの音や周りの音は一切聞えず、無音の世界にいた。
(ど……どうして宏先輩がここにいるのっ? 何で東京にいる宏先輩が田舎(こっち)にいるのっ!? どうしてここに……)
飛鳥の頭の中は同じ疑問が渦巻き、まともに考える事が出来無い。 宏もまた、見覚えのある茶髪のツインテールや切れ長の瞳の美少女に視線が釘付けとなる。 高い身長に目鼻立ちの整った美しい小顔、スラリと長い手足にミニスカートとニーソックスの組み合わせなど、以前と少しも変らない容姿に懐かしさを覚える。 同時に、妻達とは別の、瑞々しい若さ溢れる肢体に男の本能が刺激される。
「「……………………」」
新幹線のデッキで佇む飛鳥とホームで佇む宏。 互いの視線が互いの瞳を捉え、二人とも微動だに出来無い。 いったいどの位の時間、見つめ合っていただろうか。 そこへ発車ベルに負けない位、一際高い二つの声がホームに響いた。
「宏さんっ!!」
「宏クンっ!?」
新たな声で名前を呼ばれた宏が反射的に振り向くと、黒で統一されたゴスロリ衣装の美少女と紺のスーツで身を固めてカートを引く美女(もう片手には弁当と徳利が入った袋を提げている)が駆け寄って来た。
「えぇっ!?」
これまた見覚えのある衣装やいつ見ても美しい顔の登場に、宏の頭や身体が完全に石化してしまう。 美優樹や夏穂も思わぬ所で想い人との再会に、何をどう言って良いのか判らず硬直してしまう。
「あ~~~、美優樹ちゃんだ~♪」
「……って、夏穂先生っ!?」
意外な場所で意外な人物と遭遇(?)してフリーズ中の宏に代わり、若菜と千恵が双子ならではの同じタイミングで声を上げる。 若菜は普段と変らないにこやかな態度で手を振るが、千恵は恩師をつい、指差してしまう。 こんな所で想像もしなかった人物と出逢って驚いているのは千恵だけでは無く、残りの面々も同じだった。 晶と優も瞳を大きく見開き、恩師や後輩の登場に口をあんぐりと開けている。 ほのかと真奈美は何が起きたのか判らず、誰一人として動かない宏達と夏穂達を交互に眺めるだけだ。 そんな膠着状態を真っ先に破ったのは美優樹だった。
「宏さん……どうして田舎(こっち)にいるんです? ハネムーンを終えて東京にいる筈では……?」
挨拶もそこそこに、飛鳥と同じ疑問を――こちらはちゃんと口にする。 もっとも、切れ長の瞳が限界まで見開かれているのは姉と一緒だ。 そんな驚きを露わにするゴスロリ美少女からの問い掛けに応えたのは若菜だ。
「あのね~、私達、今週からは田舎(こっち)で過ごすの~。だから羽田からそのまま来たんだよ~」
簡単明瞭な説明に、フリーズが解けて顔を引き攣らせたのは夏穂だ。
「そ、それじゃ……ご両親が言ってた『家(うち)に帰る』って言うのは、東京じゃなく田舎(こっち)の家の事だったんだ……」
それを聞いた美優樹は思わず額に手を当て、天を仰いだ。
「叔母さん~~~~。んもう、肝心な部分が曖昧なんだから……。こっちで宏さんと逢えるなら、何も慌てて上京すること無かったんじゃない……。でも、嬉しい♥」
夏穂の、教師とは思えない早とちりに姪として猛烈に恥ずかしくなる。 しかし、宏に逢いたいと言う気持ちは同じなので深くはツッ込まない。 何より、好きな男性(ひと)とこうして逢えたのだ。 ここは素直に再会を喜ぶべきだろう。
「いやぁ~~~、面目無いっ。あ~~~~っはっはっはっは~~~~ぁ」
頭を掻いて豪快に笑い飛ばす(それでも最後は流石にヘコんだ)態度に、それまで固まっていた宏もようやく動き出す。 二人の叔母・姪コンビに向き直り、軽く頭を下げる。
「あ……えっと……、ともあれ、夏穂先生、ご無沙汰してました。お元気そうで何よりです。……美優樹ちゃんも正月に逢った時よりもずっと大人っぽくなって……うん、今日も綺麗だよ。その衣装も似合ってるし♪ 夏穂先生も相変わらず若々しくて何よりです♪」
社交辞令と本音が混じった言葉に、夏穂と美優樹の目尻がホンノリ赤くなる。 お世辞と判っていても、好きな男性(ひと)からの褒め言葉は天にも昇る程、嬉しいものなのだ。 宏の言葉を皮切りに、晶や優以下六人の美女軍団も改めて挨拶を交わし始めた、その時。
『十三番線から東京行き、発車しま~~~す。お見送りの方は白線までお下がり下さ~~~い』
宏達が固まっている間、発車ベルはとっくに鳴り終え、出発時刻になっていたのだ。 ホームに流れるアナウンスが終わると同時に、目の前のドアが音も無く閉まる。 そして定刻通り、東京行きの新幹線がゆっくりと動き出した。
「あれ? そう言えば……お姉ちゃんは?」
挨拶をし終えた美優樹が今気付いたとばかり、周囲を見渡す。 自分と同じく、頭ひとつ高い少女の栗色のツインテールは人混みの中ではちょっとしたランドマークなので見失う筈は無いのだが、ホームにはそれらしき人影は無い。
「あっ!」
美優樹の声に真っ先に反応したのは宏だ。 鋭い声を上げ、顔をやや蒼ざめさせて徐々に加速する新幹線を指差す。
「飛鳥ちゃん、デッキに乗ったままだ……」
その声と指差す方向で全員が見たものは。 ドアのガラスを激しく叩きながら頬を押し付け、こちらに向かって何かを叫んでいるツインテール娘がどんどん遠ざかる所だった。 唖然とするみんなを余所に新幹線は見る間に小さくなり、列車の最後尾を示す赤い尾灯が風景に溶け込んでやがて見えなくなる。
「あらら……行っちゃった……」
最後まで見送った若菜の澄んだ声が、一同の哀愁を誘った。
(つづく)
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