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 ライトHノベルの部屋  ライトHノベルの部屋  ライトHノベルの部屋
     ~ラブラブハーレムの世界へようこそ♪~


アンサンブル(5) アンサンブル(5) 美姉妹といっしょ♪~新婚編
 
「あぁ……晶姉っ……!」

 夫の絶叫に、それまで淫乱モード全開だった二人から高笑いが起こる。
 愛撫する動きがピタリと止まり、抱き締める双方の腕が緩む。

「ふふっ。ちょっとした、夫婦のスキンシップよ。さすがにこのままじゃ風邪引いちゃうわ。それに、『思ってるみたい』とか、『何かする』の答えをまだ聞いてないしね♪」

「あはは♪ 美人妻ツートップによる素股プレイ、気持ち好かっただろ? 今度はベッドでしてやるからな♥」

 可笑しそうに声を上げて笑う国産美女とハーフ美女。
 そんなお茶目(?)な二人に宏は脱力し、思わず天を仰いだ。

(こ、この二人は散々人を弄ってからに~~~っ。……それにしても、さすが晶姉だな。こんなエロい事しててもちゃんと本題は覚えてるなんて、伊達に管理職張ってないわな)

 股間の昂ぶりを持て余したまま、宏はやや緊張気味に応える。

「晶姉。思ってるみたい、って言うのは、下宿開始を十月下旬にした理由だよ。みんなが『思ってるみたい』にハネム~ンの終了に合わせた、って事」

 宏はあくまで妻達が思っている部分をさり気なく強調する。

「なるほど。じゃ、するとかなんとか言ってたのは、何をするんだ?」

 背中に密着しているほのかがバストと腰を押し付けながら尋ねる。
 両手は依然として前に回り、胸板をさすりつつ肉棒を優しく扱いている。
 しかしそんな態度とは裏腹に、ほのかもエロエロモード全開だった筈なのに疑問点はしっかりと覚えていたようだ。
 二人とも現場の最前線で仕事を任されているだけあって、頭の切れは抜群だ。

「ほのかさん。それは明日からの事さ。ほのかさん、真奈美さん、晶姉……つまり叔父さん家(ち)を経て、最後に隣の千恵姉ん家(ち)と訪ね、俺達にとって新たな義父(おとうさん)や義母(おかあさん)、その親類縁者に挨拶回りする……って事だよ」

 宏は話に矛盾が生じないよう、予め用意――シミュレートしてあった答えを淀みなく口にする。
 ここでミスしようものなら今迄の苦労が全て水泡に帰し、肝心なサプライズプランが崩壊してしまう。
 まさに、ここが本当の正念場だ。
 宏の額に、一粒の汗が流れる。
 しかし、二人からの追求の手は思いのほか深くは無かった。

「なるほどね。うん、判った。ヒロが風呂場でブツブツ言ってたから、どうしたのかな、と思って。細かく聞いてごめんね」

「あ、そっかぁ~。晶や千恵ちゃん達の両親はオレにとっても義理の両親になる訳だ。あはは~。んなコト、すっかり忘れてたぜ」

 納得した顔で頷き、額に浮かんだ汗を拭ってくれる晶と普段と変わらぬ豪快さで笑うほのか。
 ほのかは新たな義父(パパ)や義母(ママ)と会う事に何のプレッシャーも感じていないらしい。

「いや、いいんだ。独り言するなんて、少し酔ってたのかも。……ところで晶姉」

 宏はこれ以上の追求を避ける為に、やや強引に話の向きを変える。

「ホントに夏穂先生達を下宿させても好かったの? 俺、今迄の例からして、てっきり晶姉は反対するものかとばっかり思ってたんだけど」

 宏は掬った湯で晶の肩や腕を撫でながら真意を問う。
 未だに晶が率先して下宿案に賛同した事が不思議に思えるのだ。

「今迄の例……って?」

 ほのかは宏の左肩に顎を載せたまま首を傾げる。
 そして宏の身体が冷えぬよう、手のひらで掬った湯を右肩に掛ける事も忘れない。

「ほら、クリスマスカードや年賀状とか――」

 晶とほのかの追求を機に、今は先程迄のエロチックムードを微塵も感じさせない、まったりとした時間が流れていた。
 あれ程昂ぶっていた宏の性衝動も、サプライズプランの運命を左右する場面に遭遇したお陰ですっかりと収まっている。

「夏穂先生から送られる季節ごとの葉書に対してことごとく辛辣にツッ込んでたじゃない。だから、いくら恩師でも下宿は許さないと思ったんだ」

 宏の説明にほのかは「なるほど」と昔のクリスマスパーティーを思い出して首肯するが、晶は不満気に眉根を寄せる。

「あら、そーだったかしら? ……記憶に無いわ」

 そっぽを向く晶だが、その照れた横顔にはハッキリと記憶してます、と書いてある。

「まぁ、ほら、あれよ、あれ。人道的見地……かしら? 懇意にしてた人が困ってるのを知った以上、そのままには出来無いわ」

 何とも胡散臭い言い回し(しかも棒読みだ)に、ほのかが眉をしかめる。

「嘘くせ~。晶がそっぽ向きながら言う時って、大概、誤魔化しとか嘘なんだよなー。ホレ、全部吐いてスッキリしちまいなっ。楽になろうぜ」

 苦笑するほのかに、晶の弁解(?)が続く。

「な~んにも無いわよ、ホント。好意を持っていた恩師と可愛く成長した後輩を路頭に迷わすなんて……あたしには出来無いわっ」

「オマエが泣くタマかっ!」

 抑揚の無い話し方と、よよよ、と泣き真似をする晶に間髪入れずツッ込むほのか。
 この親友コンビの付き合いも途中二年程のブランクがあるとは言え七年目になるので、ボケツッ込みも完璧だ。

(あ、あははは……。晶姉ったら、昔とちっとも変わらないや)

 晶は他人(ひと)に本心を見せまいとして、ワザと無関心を装う時がある。
 しかし、その時は台詞が棒読みとなり、抑揚の無い話し方になって逆に本心を知らしめている事に本人は気付いて無いのだ。
 宏はそんな晶の優しい心根に触れ、心が温かくなる。

(やっぱり、晶姉は最高だな♥ 何だかんだ言っても、夏穂先生達の事をちゃんと考えてる。 ……でも)

 ここで宏に、ちょっとした悪戯心が湧き上がった。

「晶姉、か弱い女は似合わないよ」

 昼間、際どい所まで追い詰められた恨み(?)を晴らす宏の言葉に、素に戻った晶は頬を大きく膨らませる。

「なんでよっ! あたしだって情も涙もある、か弱い女よっ! ……ったく、あたしを何だと思ってたのよっ」

 それまでのしおらしい(?)態度はどこへやら。
 可愛い女が全く通じなかった晶は瞳を吊り上げて咆える。
 そんな息巻く晶に、ほのかと宏が同時に止(とど)めを刺した。

「「血も涙もない冷徹なお局様」」

 ほのかはともかく、宏からの強烈なしっぺ返しに本気で泣く晶だった。


     ☆     ☆     ☆


「夏穂先生達の下宿開始時期なんだけど、晶姉が最初に言ったように社会人組の寿休暇終了に合わせたんだ。……まぁ、俺自身、ハネム~ンを期間一杯楽しみたい、って思いもあってさ。それに、この間にそれぞれの親類縁者さん達とも親交を持つのも大事だと考えたんだ」

 宏の部屋には人数分の布団が隙間無く敷かれ、寝間着姿の妻達が車座になって主(あるじ)の話に耳を傾けていた。
 宏は十月下旬まで下宿出来無い理由について、浴室で晶とほのかに話した内容をそのまま他の妻達にも伝える。
 風呂場で先に聞いた(探り出した?)晶とほのかも頷き、間違いないと夫を後押しする。

「それに、下宿探しで不安な思いをしている夏穂先生達三人の目の前で俺達の都合をあからさまにするのもどうか……と思ってさ」

 あくまで神妙な顔付きをする宏に、千恵が腕を組みながら何度も頷く。

「なるほど。宏が即決出来無かった理由はそこだったのね。自分達の浮かれた気分は出さずに夏穂先生達の気持ちを慮った――って訳ね」

 千恵が宏の言葉を先読みし、若菜や真奈美、優も「そうだったの……」と宏の想いに感銘を受けている。

(あ……あははは。まぁ、嘘は言ってない……よな。実際、休暇の終了に合わせたんだし、明日からは親戚巡りするんだし)

 宏は若干の罪悪感に囚われるが、ここは心を奮い立たせて押し通す事にする。
 あくまで自分達のハネム~ン休暇を前面に押し出し強調する事で、サプライズプランの完全なる隠蔽を図ったのだ。
 もとより、明日から始まる各実家への顔見せ(家庭訪問?)を前に、下宿案に即断出来無かった理由を問われる危険性を一掃したいと考えていた。
 このままでは、いつ誰が時期的制限の付いた理由を尋ね出すか判らず、帰京するまで息が抜けなくなってしまう。
 そこで妻達の思い込み――休暇の終わる時期と合わせた――を利用させて貰い、今後の憂いを完全に払拭しようと企てていた。
 風呂場で晶とほのかの強襲を受けたのも、そんな胸算用(皮算用?)をしていた時だった。

「それに、それぞれのご両親には俺達が訪ねる事を前もって伝えてあるから、日程の変更も難しくて……ね」

 宏のもっともらしい説明(策略?)に、もはや時期的な疑問を持つ者など誰もいない。
 むしろ自分達の事を最優先に考えてくれている宏に、感謝の瞳を向けている。

「……そうね。夏穂先生達には悪いけど、あたい達だって一生に一度の事だもん。余計な事は考えずに期間一杯、水入らずで過ごしたいわ」

 千恵の言葉に真奈美が頷き、ほのかと晶、優も首肯する。
 みんな恩師や後輩を心配する部分もあるが、心の片隅では自分達の幸せを追い求める気持ちもあるのだ。
 しかも一生に一度の、宏とのハネム~ンの最中なら、その想いはより強くなって当然だろう。

「だから、俺達は十月下旬までの時間を大事にしたい!」

 宏の堂々たる宣言に、妻達は熱い眼差しで応える。
 みんな瞳を潤ませ、盛んに頷いている。

(どうやら、上手く事が運んだみたいだな)

 宏は内心、安堵の息を盛大に漏らす。

(ここまで来れば、もはやサプライズプランは安泰だな。あとは上京後に改築した屋敷を披露すれば、数ヶ月にも及んだ一連のプランの完結だ)

 今後の憂いを全て一掃させた宏は、ものの見事に難局を乗り切ったのだ。

「と言う訳で、明日からはほのかさんの家に二週間、お邪魔するよ。その後、真奈美さん、晶姉の実家、最後に隣の千恵姉の実家と続くからね♪ ……って、うわぁっ!」

 宏の言葉が終わらぬうちに、ショーツだけの姿になった六人の美女が嬌声を上げつつ一斉に躍り掛かって来た。
 前後左右上下から伝わる柔らかい肉布団の感触に宏の巨砲が見る間に勃ち始め、覆い被さる千恵の美尻をノックする。

「あんっ♪ ご指名されちゃった♥ それじゃ、今夜の一番搾りはあたいからねっ♥」

 自ら腰を浮かせ、クロッチを横にずらして割り開いた秘裂に灼けた肉棒を宛がう千恵。
 そこはすっかりと準備が整い、宏の腹に白蜜を垂らす程、潤っていた。

「あぁぁぁあああっ! 今日も元気で……気持ち好いっ♪」

 尻上がりに響く千恵の嬌声が他の妻を牝に変え、宏は牡となって腰を突き出した――。


     ☆     ☆     ☆


 その後、宏達はほのかの家を皮切りにそれぞれの実家で二週間ずつ過ごし、ハネム~ン最後の一週間は千恵と宏の実家(隣同士なので一纏めにした)で過ごした。
 過ごしたのだが……。

「ママ、もう勘弁して~ぇっ! もう呑めない~~~~っ! お願いだから宏と寝かせてぇ~~~~~っ!!」

「ナニ言ってんのかしら? この娘(こ)は。今、呑まないでいつ呑むのよ。あんた達は来月になれば東京に帰るから好いけど地元に残る私達の身にもなってよ。久々に娘と対面した親心が判らないのかしらねぇ、宏さん♪ こんな薄情な娘は放っておいて今夜も新たに娘となったみんなと呑み明かしましょうね、晶さん♪ あ、ご返杯は三倍返しだから覚悟してね、優さん♪ ホラ、こっちの刺し盛り、今朝、河岸に上がったばかりなのよ~。どう? 新鮮で美味しいでしょ。どんどん食べてね、千恵さん♪ あ、若菜さんったら、さっきからジョッキが空じゃない。お酒はた~っぷりあるから遠慮しないで呑み尽くしてね♪ 真奈美さんも部屋の隅に隠れていないで前に出て歌って踊ってね♪ 賑やかなのは大歓迎よ~~~♪」

 どこの家にも現れるほのかの母に、娘は人目をはばからずに泣き声を上げた。
 その声は宏達に加えて、それぞれの両親の同情と涙を誘い、いつまでも耳と記憶に残っていたと言う。


                                            (つづく)

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恋風(1) 恋風(1) 美姉妹といっしょ♪~新婚編
  
[ 作者からの補足 ]

 この物語 『恋風(1)』 は、既出の本編 『夢のかたち(8)』 から続く形となっております。
 新婚編 前章の 『アンサンブル(5)』 → 本編 『夢のかたち(8)』 → 新婚編 『恋風(1)』 の順でご覧戴くと、ストーリーに、より深みが出るかと思われます。
 是非とも、お試し下さいませ♪
 
 
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 周囲の木々が緑から黄や朱(あか)に色付き始め、頬を撫でる風も日増しに冷たさを増してゆく、とある秋の日。
 ハネム~ンやサプライズプランの余韻も薄れ、替わりに夏穂、飛鳥、美優樹の三人が加わって今日も賑やかな一日が始まろうかとしていた、そんなある朝。

「きゃぁ――――――――――――っ!!」

 絹を裂くような悲鳴が屋敷を揺るがし、生け垣や屋根でさえずっていた小鳥達が羽音けたたましく一斉に飛び立ってゆく。

「なにっ!? いったいどうしたの!」

「真奈美さん!? 何が起きたのっ!?」

 初めて耳にする叫び声に、自室で宏と一夜を過ごした晶が、すわ何事かと足音けたたましく宏共々リビング――正確にはリビングダイニングキッチンだ――へと駆け込んで来た。
 しかし、晶は胸元がはだけたパジャマ姿、宏はトランクス一枚だけのあられもない姿だ。
 どうやら、朝のまどろみを楽しんでいた真っ最中だったようで、宏の胸元や背中はもちろん、首筋や太腿などにもハッキリクッキリと赤い痣(キスマーク♥)がいくつも付いている。
 そんな二人に、キッチンで二つのフライパンを交互に振るっていた若菜が手を休める事なく、切れ長の瞳を細めて微笑んだ。

「あ、宏ちゃんに晶姉さん、おはよう~♪ 今日も朝からご一緒で……昨夜からのお楽しみが続いてるみたいだね~」

 今朝の若菜は腰まで届くストレートロングヘアを首の後ろでひとつに縛り、薄手のピンク色のセーターに裾の長いライトグレーのフレアスカート、その上には純白のエプロン姿と、画に描いたような新妻ファッションだ。
 漆黒の髪を纏める大きな白いリボンがステップを踏む度に軽やかに揺れ、初々しさを振り捲いている。

「宏、晶さん、おはよう♪ 今日も好い天気よ……って、あんたは何、品の無いオヤジみたいなコト、言ってんのよっ」

 その隣では、双子の姉の千恵が鍋の火加減を調節しながら妹に軽くツッ込む。
 今日の千恵はスリムジーンズに真っ赤なトレーナー、ピンクのエプロン姿で見るからに活動的な出で立ちだ。
 紫掛かった黒髪を頭の高い位置で縛り、ポニーテールにした千恵も妹の若菜に負けず劣らず、新妻の香りをそこかしこに漂わせている。
 二人とも悲鳴を聞いても一切動じず、朝食の準備を続けているのは流石、台所を預かる主婦の貫禄充分と言ったところか。

「みんな、おはよう! で、いったい何が――」

 宏が律儀にも挨拶を返しつつ、事の顛末を問い質そうと一歩前へ踏み出したところで。

「……ふわぁ~。……ヒロクン、おはよう♪ みんな、おはよう。……ついでにお姉ちゃんもおはよ」

 真奈美の賑やかな声(?)で起こされたのだろう、寝惚け半分の優が現れた。
 その姿に宏の足がピタリと止まり、僅かに見開いた瞳が顔から徐々に下がってゆく。
 無地の真っ白なTシャツを押し上げ、柔らかそうに揺れる二つの慎ましやかな胸の突起(七十七センチでギリギリCカップだ)はノーブラである事を示し、ハイレグ気味のホットパンツから伸びる贅肉のないスラリと伸びた太腿が朝の光に輝いて艶めかしい。
 ショートヘアをシャギーにし、スレンダーな肢体を惜し気も無く晒して宏の視線を奪うその姿は、爽やかな朝の光景にしては少々刺激が強過ぎる。

「きゃあ、きゃぁ…………あ、宏君。おはよう♪ 晶先輩と優先輩もおはようございます」

 今さっきまで顔を引き攣らせて悲鳴を上げていた真奈美も、愛しき宏の姿を認めるとそれまでの態度が一変、満面の笑顔で夫を迎える。
 真奈美はアイボリーホワイトをベースにした花柄のワンピースとライトグリーンのエプロンを纏い、背中の半分まで届くストレートの黒髪を三つ編みにして一本に束ね、胸元――胸の谷間に流している。
 広く開いた襟元から覗く白い肌と艶やかな黒髪の対比が目にも鮮やかで、宏の視線が優から速攻で移って来る。
 こちらもさり気なく女らしさを強調し、夫の目を意識しているのは明白だ。
 リビングには屋敷のメンバーがほぼ集結し、明るく華やかになる。
 キッチンからはご飯の炊ける香ばしい香りや味噌汁の匂いが漂い、溶き卵が熱せられたバターで弾ける美味しそうな音と香りも流れ出して、リビングはいつもと変わらぬ朝の風景となった。

「で、真奈美は朝っぱらから、なんで悲鳴を上げたのよ?」

 寝起き直後の頭をゲシゲシと掻きながら晶が何の気無しに、庭に面する窓際でしゃがんでいる真奈美の隣に立った。
 そして、事情を説明しようと真奈美が指で指し示す方向に視線を向けた途端。

「い゛っ!? いやぁ――――――――――――――っ!!」

 今度は顔面を蒼白にした晶の絶叫が近所に響き渡り、雲ひとつ無い澄んだ蒼空に吸い込まれてゆく。
 両手で頬を挟み、両目を剥いて悲鳴を上げるその姿はムンクの叫び、そのものだ。

「晶姉? 真奈美さんも、いったいどうしたの……って、これは……………………ぷぷっ! うっくっくっ!」

 続け様に起こった悲鳴を訝しんだ宏は二人の傍に寄り、騒ぎの元となったモノを見て――思わず大笑いしてしまう。

「あはははっ! そっか、そういう事か。なるほどね~。……うぷぷぷっ……くっくっ……あはははははっ!!」

 お腹を抱えて笑い転げる宏に、涙目になった晶が猛然とツッ込んだ。

「なに笑ってんのよっ! あっ、朝っぱらから、こっ……こっ……こんなモン見せ付けられて悲鳴を上げない女なんていないわよっ!!」

 寝癖で跳ねた髪も怒りの為か、はたまた恐怖の為か(きっと後者だ)、微妙に蠢いて見える。
 顔を引き攣らせた晶がビシッと指差す方向には、お魚咥えたドラ猫……ならぬ、体長二十センチは優にあろう丸々と太ったドブネズミを咥えた三毛猫(推定生後六ヶ月の♀)が真奈美に向かってチョコンと鎮座していた。

「あ~、可笑しいっ! 三毛(みけ)、きっと真奈美さんに褒めて貰いたいんだよ。『ちゃんとエサを獲ったぞ、どうだっ!』、ってね」

 なおも笑う宏の言葉が判ったのだろう、三毛猫はネズミを咥えたまま大きく首を縦に振る。
 いつもと違い、今日は自慢気に胸を張っているようにも見えるのは……宏だけだろうか。
 この野良猫は頭が良く、宏達の言葉に頷いたり「にゃ~♪」と返事をしたりするのだ。

「……なるほど、ミケクンが遊びに来てたのか。何事かと思ったけど、いつもの事だね」

 宏の肩に手を置いて覗き込んだ優も悲鳴の原因を見つめ、小さく微笑む。

 ――焦げ茶色を基本に白と黒の毛が全身を覆い、小さな丸顔にピンッ、と凛々しく立った三角形の大きな耳。
 ピンク色の小さな鼻に愛らしいつぶらな大きな瞳と、毛糸玉みたいなフワフワの毛並みに長い尻尾。
 その愛らしい姿は見る者全てに癒しを与え、些細な争いすら消滅させるパワーを持っている神秘の生き物――

 宏や優から「三毛」「ミケクン」と呼ばれた三毛猫はおよそ四ヶ月前の初夏の頃、親猫とはぐれた上に瀕死の怪我をして動けずにいた所を通り掛かった真奈美に保護された。
 当時、猫嫌い(実は猫恐怖症)だった晶の猛反対を押し切り、すったもんだの末、全員による手厚い看護を受けた仔猫は順調に快復、ひと月後には親元に帰す事に成功した。
 それが今では立派に成長し、若き野良猫としてこの屋敷を中心に根城(テリトリー)を築いていた。
 殊にハネムーンから戻った後は二日と空けずにフラリと現れ、時にはご飯をねだり、時には一緒に昼寝したり遊んだりして、屋敷の面々に癒しを与えてくれる小さなアイドルと化していた。
 因みに、この三毛猫の事を真奈美は『三毛ちゃん』、優は『ミケクン』、宏は『三毛』、ほのかは『ミケ』、千恵は『ニャンコ』、若菜は『猫ちゃん』と親愛を篭めて呼び、それぞれ可愛がっている。
 ただひとり、この三毛猫のお陰で猫恐怖症を克服した晶は『猫』と呼び捨てるものの、みんなの隙を突いては頭を撫でたりお腹をさすったりして可愛がり、果ては肉球のプニプニ感に目尻を大きく下げて喜んでいる。

「リビングの窓を開けてたら、三毛ちゃんが大きなネズミを咥えたまま走り寄って来たの。だから思わずびっくりして、つい悲鳴を上げちゃった。ちゃんと見れば、どうってコト無いのにね」

 チロッ、と舌を出しておどける真奈美の自己弁護に、リビングは暖かい笑いの声が広まる。
 真奈美は猫の咥えているネズミを見ても平然としているが、血走った瞳を今なお吊り上げている晶だけは笑わない(と言うより笑えない)。

「みんな、ナニ笑ってんのよっ! 猫の牙がネズミに深々と食い込んで……血がタラタラ滴ってるしっ! んなモン、朝っぱらから見せ付けんじゃないわよっ!」

 いつの間にか、宏の背中に隠れるようにして縮こまっている晶。
 猫恐怖症は治っても、動物界の弱肉強食を目の当たりにして大いに腰が引けている。
 自分を含めた破瓜の血は平気でも、捕食した時の血は別物のようだ。
 会社では上司の会長すら顎でコキ使う(ほのか談)、秘書課課長の晶だが、こればかりは生理的に受け付けられないらしい。
 顔を猫から背け、きつく目を瞑って震える晶は、さながら可憐で繊細な少女そのものだ。

「まぁまぁ、晶姉。三毛にとって真奈美さんは命の恩人。捉えたエサを親分に持って来るのは当たり前だよ」

 ようやく笑いを収めた宏の言葉に、姉の愛らしい仕草に目を細めていた優も頷いて補足する。

「……助けて貰った上、時々ご飯を上げる真奈美は、ミケクンにとって親猫と同等かそれ以上の存在。この家ではヒエラルキーの最上位に位置している。献上品を持参するのは自然の摂理」

「だ、だからって……何もネズミを捕まえなくても……」

「……だったら、まだスズメの方が好かった? それとも、イモリとかゴキブリとかを――」

「優っ!! それ以上なんか言ったら、ただじゃおかないわよっ!」

 真奈美の悲鳴に負けない金切り声で、妹のシュールな台詞を慌てて切り捨てる晶。
 その美顔は恐怖に歪んで引き攣ってさえいる。
 どうやら、目の前の猫がスズメやゴキブリを咥えて走り寄って来るシーンをリアルに想像してしまったらしい。
 宏の肩に載せた指が、かなりの深さで筋肉に食い込んでいる。

「あははっ。優姉、今朝はその辺で。真奈美さん、三毛をお願い。晶姉、もう大丈夫だよ。三毛は……ネズミごと向こうに行ったから」

 晶と優の双子美女姉妹(ふたごしまい)漫才を心ゆくまで堪能し、気分上々の宏が仲裁に入ると、その場は立ち所に丸く収まる。
 と、それを見越したように、台所に立つ千恵と若菜の双子姉妹から溌剌とした声が掛かった。

「みんなお待たせ~っ! ご飯出来たよ~。今日もモリモリ食べて元気に行こう~♪」

「ホラ、宏。さっさと着替えて。晶さんと優さんも早く顔を洗ってね。ご飯冷めちゃうわよ。真奈美さんも、手を洗ったら手伝ってね」

 ポニーテールを揺らした千恵がパンパンと手を叩き、それを合図にそれぞれが動き出した。

「ふわぁ~~~、みんな、おはよ~。宏、おはよ♥ ……おっ♪ 今日もオムレツが旨そうだな」

 ここで、波打つ長い金髪を寝癖で乱したほのかが頭を掻きつつ大きなあくびをし、鼻をヒク付かせてリビングに現れた。
 どうやら屋敷に充満する朝ご飯の匂いに誘われ、やっと目が覚めたようだ。
 真奈美や晶の悲鳴は夢の中の出来事だったらしい。

「あ、ほのかさん。おはよ……う゛!?」

 宏はほのかの姿に目を見開き、思わず立ち止まって息を呑む。
 こちらは黒のタンクトップ一枚にオフホワイトのローライズショーツだけと、優よりも扇情的な姿だ。
 しかも、ゆらゆらと柔らかそうに揺れる双丘の頂点には丸く飛び出たポッチが丸判りで、ショーツのクロッチには女の亀裂がそのまま深く刻み込まれてもいる。

「ほ、ほのかさん……っむぅ!」

 朝の光に目映く包まれたほのかのセクシーな姿に、ごくりと喉を鳴らして魅入る宏。
 そんな夫の腕を、ほのかは寝起き直後とは思えない素早さで捉え、引き寄せる。
 そのまま唇を夫の頬に寄せ、次の瞬間には強烈なハグをかました。
 愛しい男性(ひと)の頭を、問答無用で己の胸の谷間に抱きかかえたのだ。

「ん~~~~、宏ぃ♥ 今日も愛してるぜ~♥ ほらほらほら~、柔らかくて暖かいオッパイだぜ~♪ んふん。布越しでも宏の息遣いが判るぅ~~~♥ あ~~~、宏の温かいぬくもりがオレを生き返らせるぅ~~~~♥」

「うぷぷっ、ほ、ほのかさんっ! 息が……出来無くて……くっ……苦しいってばっ」

「ふふっ、充電完了~♪ 宏の熱い吐息と向けられる愛情を浴びて、ようやくエンジンが掛かったぜ」

 もがく宏の頭を解放したほのかは、視線をゆっくりと下に向ける。
 そこには矛先を自分に向けた肉棒がトランクスを突き破らんばかりにそそり勃っていた。
 夫の元気溌剌! な股間を見て満足気に、そして目元を赤く染めて妖艶に微笑むほのか。
 世界のトップモデルや有名女優すら到底及ばない鼻筋の通った彫りの深い美顔に見つめられ、宏は状況を忘れて一歩、ほのかの透き通った碧眼に吸い寄せられた――ところで。

「ほのかさんっ! 起きたならさっさとシャワー浴びて着替えて! 宏も朝っぱらから発情しない!」

 千恵の若干、怒気を孕んだ声がリビングに轟いた。
 情欲にかまけて時間を潰すと、烈火の如く怒るのだ。

「あははははっ~! せっかく宏をその気にさせたのに……残念っ」

「はわわっ!? ごっ、ごめ~んっ」

 イエローカードを突き付けられたほのかは豪快に笑って浴室へと消え、限り無くレッドに近いイエローカードを食らった宏は我に返ると慌てて両手で股間を隠し、急いで部屋へと戻る。

「ったくもう、遊んでる時間なんて無いでしょ! 会社に遅刻したって知らないからっ」

 千恵の、それでも苦笑いする姿や宏達の背中を興味津々といった目で見つめる二人と、憮然とした顔で見つめる娘がひとり。
 夏穂と美優樹、飛鳥の新規参入組だ。
 飛鳥はチェックのシャツと真っ赤なミニスカートに黒のサイハイソックス、美優樹は黒をベースとしたゴスロリドレスに頭には白で縁取られた黒のヘッドドレスと、こちらの姉妹はいつも通りの服装だ。
 ただ、夏穂だけは今月――十一月から女子高の非常勤講師として働いているので紺のスーツ姿だ。

「ここに来て三日と経たないけど……いつ見てもこの家(うち)の面々って面白いわ~。毎朝毎晩ずっと見てても飽きないし」

「みなさん超個性的で、毎日がすごく楽しいわ。下宿させて貰って、本当に好かった♪」

 リビングのソファーに座り、朝食の出来上がりを待っていた夏穂と美優樹が頬を緩めて楽し気に笑うが、飛鳥は目を眇めて信じられないと言う顔付きで一同を見渡し、毒を吐く。

「朝からこんなハイテンションになるなんて、いったいどーゆー神経してんだろ。……宏先輩もあんなに顔、緩ませちゃってさっ! みんな、新婚ボケなんじゃない?」

 好きな男性(ひと)が大勢の美人妻に囲まれているのは仕方無いとしても、よりにもよって豊かに揺れる胸に埋(うず)まって目尻を下げた事が、『無い胸』を自覚する飛鳥の逆鱗(コンプレックスとも言う)に触れたのだ。

「ふふ。お姉ちゃん、朝が弱いもんね。でも、朝から好きな人といられれば、美優樹もそうだけど自然とテンション上がると思うけど? それに、宏さんは胸の大きさで女性を計らないよ?」

「まぁ、未だに自分よかオッパイ大きい娘(こ)に目くじら立てるお子ちゃまな飛鳥ちゃんには、大人の恋愛はまだ判らないかなぁー。好きな男性(ひと)が傍にいるってだけで、女は幸せだし嬉しいもンなのよ♪」

 胸の大きさにこだわらない妹(バスト八十センチのBカップだ)に続き、これ見よがしに胸を揺らす叔母(八十四センチのDカップだ)からも辛辣に突っ込まれた飛鳥は更に顔をしかめてしまう。
 自分も場の雰囲気を素直に味わいたいのだが、どうしても遠慮や引け目(バスト七十四センチのAカップと屋敷のメンバー中、最も小さい)と言った文字が身体を縛るのだ。

「し、仕方無いじゃないっ! いきなり同居して、いきなりみんなみたく接せられないわよ! ……ふんっ! 無駄に胸、揺らしちゃってさ」

 腕を組み、胸を反らせて眉根を寄せる飛鳥。
 しかし内心を押し隠して強がるものの、夏穂や美優樹には焦る気持ちが丸判りだ。
 自分達だって、もっと宏と懇ろな間柄になりたいと思ってはいるが、新婚の輪――しかもハネム~ンから帰った直後だ――に入る切っ掛けがなかなか掴めないし、近寄るのをつい遠慮してしまう。
 結果、今朝のように一歩引いた位置から宏達を羨みつつ、黙って見守る機会が多くなってしまうのだ。
 茶髪の長いツインテールが落ち着き無く揺れているのが、飛鳥の心情を好く表している。

「まぁ、そうよね~。いくらウチだって、いきなり新妻の輪に加われないし、そこまで厚かましくはないもん。……胸の大きさは関係無いと思うわよ?」

「お姉ちゃん。今は環境に慣れる事だけを考えましょ。宏さんや皆さんと、よりお近付きになるのは、それからでも遅くは無いと思うよ? ……自分より大きい胸を敵視するのは好い加減止めたら? より惨めになるだけだよ?」

 三十路の叔母からはともかく、三歳下の妹から慰められ、諭される十八歳の飛鳥だった。


                                            (つづく)

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