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ライトHノベルの部屋
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~ラブラブハーレムの世界へようこそ♪~
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恋風(2)
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美姉妹といっしょ♪~新婚編
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「みんな、何か不自由は無いかしら。足りない物とか必要な物があったら、遠慮無く言ってね」
夕食後、リビングのソファーでくつろいでいた夏穂、飛鳥、美優樹の元へ、屋敷では日用品の管理も担当する千恵がにこやかに話し掛けて来た。
「ん~~~~~~~~、今の所、無いわ。ありがと、千恵ちゃん」
暫し考え、首を横に振った夏穂は、生徒時代と少しも変わらない面倒見の好さを窺わせる元・教え子に嬉しさが込み上げ、思わずニッコリと微笑んだ。 高校時代、千恵は学年や男女に関係無く『姐(あね)さん』と呼ばれ、慕われていた事を思い出したのだ。
「何かあったら宏クンか千恵ちゃんに言えば好いのよね? まだここに来て二日目だからすぐには思い浮かばないけど、これから何かお願いするかと思うわ。その時は宜しくね♪」
缶ビール片手にケラケラ笑う夏穂に、姪の飛鳥が苦笑しつつツっ込んだ。
「お願いするのが前提かよっ。その前に自分で揃える努力しろよなー」
叔母の図太い神経に呆れると同時に、千恵に対してフレンドリーに接している事が羨ましくもあったのだ。 夏穂にとって千恵達は教え子でも、飛鳥にとって宏以外の面々は少々歳の離れた先輩方、と言う意識が強い。 中高と同じ学校に通っていたとは言え、千恵と若菜の双子姉妹は五歳、晶と優の双子姉妹は七歳も上なのだ。 この四人とは学校のOGと言う共通点はあるものの、おいそれとフランクに話せる相手ではない。 しかも、ほのかと真奈美の二人に至っては、陸上大会に出場する宏を応援しに来ていた時に紹介されただけの繋がりなので、限りなく他人に近い知人と言う感覚だ。 飛鳥には六人の先輩美女達へいきなり気安く声を掛ける神経など持ち合わせていないし、声を掛けられたら掛けられたで緊張してしまうのだ。
「そうよ、夏穂お姉さん。机やベッド、整理棚などを揃えて貰ったのに、これ以上何かお願いするのは、いくら何でもどうかと思うわよ?」
飛鳥の三歳年下の妹、十五歳の美優樹も眉をひそめて三十歳の叔母をたしなめる。
「曲がりなりにも夏穂お姉さんは高校の先生なんだし、このお家(うち)では最年長なんだから、あんまりみっともない真似はしないでね」
いくら相手が元・教え子さんであっても、下宿早々に微妙なプレッシャーを掛けるのはどうかと思う。
「美優樹達は下宿させて戴いてる立場なのよ? 皆さんと仲良くなりたいと思っているのに、これじゃ、卑しく思われちゃうじゃない」
美優樹は好きな男性(ひと)の前で自分達のみっともない部分を見せたくない心理が即座に働き、叔母に対してさり気なく毒を吐いてしまう。 美優樹と宏は六歳、妻達の中で一番歳の近い千恵と若菜でさえ八歳も違う。 しかも、晶姉妹や千恵姉妹、そして飛鳥と同じ中学と高校に通ったとは言え、飛び級を繰り返したので都合三年間しか在籍していない。 果たしてこれで同じ学校のOGと言えるのかどうかも怪しいと思っている。 だからこそ、姉と同じく宏を通じてしか直接の接点が無い新妻六人とは、みんなの妹――までとは言わないが、せめて近い親戚のように仲良く接したいと願っていた。 間違っても、嫌われたり疎ましく思われたりする事だけは何としても避けなくてはならない。 そんな事を考えていた矢先だけに、叔母の傍若無人に映る言動が気になって仕方がないのだ。
「ちょっとぉ~。曲がりなり……ってナニよ。ウチは、れっきとした高校教諭よっ。教員免状だって、ちゃんと持ってるんだからねっ! それに最年長……って、いや、まぁ、それはそうだけど……」
姪からの手厳しい戒めに思わずたじろぎ、表情を強張らせて口籠もる夏穂。 ほんの軽口のつもりで千恵に返したのに、よもや、ここまで強烈にツッ込まれるとは露程も思わなかったのだ。 そんな、缶ビール片手に泡を食う夏穂に、飛鳥がツインテールを小さく揺らして溜め息混じりに呟いた。
「……教師つったって、当面は非常勤じゃん」
飛鳥の苦笑とも冷笑とも取れる台詞に、一人掛けソファーでお茶を啜りながら一緒にテレビを見ていた宏が笑い声を上げる。 叔母と姪の掛け合いがことのほか面白く、三者三様の意外な面を見られて御機嫌なのだ。
「あははっ! 好いんだよ、飛鳥ちゃん、美優樹ちゃん。大学卒業までは、みんなここで暮らすんだし、俺達は全く見ず知らずの間柄じゃ無いんだから、変な遠慮は無しだよ」
「「あ……」」
想いを寄せる男性(ひと)からの心温まる言葉に、服装は違えど同じ髪型、鏡に映したかのような同じ顔の姉妹が同時に朱(あか)く染まってゆく。
「そうそう。遠慮するだけ損だぜ。ここにいるヤツらは気の好い連中だから、いつでも気軽に声、掛けてくれよな。どんな願い事でも、大概の我が侭でも聞いてやるからさ♪」
「一緒に下宿するのも何かの縁。せっかく同じ釜の飯を食べるのだから、仲良く過ごしましょうね♪」
サムズアップしながらウィンクするほのかと、小さく手を振ってにこやかに笑う真奈美に、一緒にくつろいでいた晶、優、千恵、若菜のOGカルテットもニコリと微笑み、一斉に頷く。 それは大家と店子、先輩と後輩、年上と年下の垣根を取り去ってくれたかのような、暖かみのある笑顔だった。
「「あの……ありがとうございます」」
六人の美女から向けられる厚意に思わず背筋を伸ばし、ソファーに座ったまま腰を折る飛鳥と美優樹。 嬉しさと緊張で、今、自分がどんな顔になっているのかすら判らない。
「あはははっ! 青春してるわね~。まるでつい昨日のウチを見ているようだわ」
恋い焦がれ、しゃちほこばる姪の表情が余程可笑しかったのだろう、缶ビールを飲み干した夏穂が豪快に笑い倒す。 そんな夏穂に、宏の隣で座布団に座っていた晶がニヤリと不敵な笑みを浮かべ、口を開いた。
「夏穂先生の青春はとっくに終わってるもんねー。遙か昔に」
知ってか知らずにか(絶対前者だ)、時限爆弾を投げる晶。 その煌めく瞳は、かつての担任を対等の立場でいじくれる喜びに満ちているかのようだ。 そこへ、夏穂の正面に座り、読んでいる雑誌に視線を落としたままの優がポツリと呟いた。
「……夏穂先生も気付けば三十路。人生の三分の一をずっと独り身で過ごしている」
姉に同調するかの如く、元・担任の逆鱗に両手でペタペタ触りまくる優。 瞳を細めて薄く笑うその表情は、恩師をいじくる快感に浸っているようにも見える。 さらに、洗い物を終えた若菜が宏の背後からしな垂れると両腕を首に巻き付け、無邪気な顔のまま(よせば好いのに)好く通る澄み切った声で曰った。
「夏穂先生~。『もう枯れた』、ってホント~? 何でも『クモの巣が張ってる』、とか何とか、誰かが言ってたような~」
「………………………………」
その言葉に場の空気が一瞬で凍り付き、それまで朗らかに笑っていた夏穂の動きがピタリと止まる(但し、右手に持っていた缶ビールが一瞬で握り潰された事に本人だけは気付いていなかった)。
「あらら。あたしでさえオブラートで幾重にも包んで言ったのに、そのものズバリ、核心を突くわ ね~。……この後どうなっても知~らない、っと」
「……ボク達、そこまであからさまに言ってないよ? 可哀想だもん。……同じ女として同情はするけど」
怖い物知らず(?)な若菜のストレート過ぎる台詞に苦笑した晶と優の美女姉妹(しまい)はアイコンタクトで会話し、次の瞬間にはその場から消えていた。 高校二年と三年の二年間、夏穂を担任としていただけあって、先を読み切った、実に見事な身のこなしである。 片や、妹の発言をハラハラしつつ見守っていた千恵も慌てて物陰に身を潜め、元・担任から一定の距離を保つ。 こちらも、過去の経験が活きているようだ。 宏は宏で、そっと腰を浮かせてその場から立ち去ろうとしたが、背中に引き金を引いた若菜が引っ付いているのでどうやっても逃げられない。
「こっ、こりゃヤバいっ! 退くわよっ!」
「うんっ! 早く早く! 巻き添えになっちゃう!」
叔母から立ち昇る禍々しいオーラを瞬時に感じ取った飛鳥と美優樹は這々の体で逃げ出し、リビングの隅で必死の形相で手招きしていた千恵(見るからに安全地帯?)の元へ転がり込む事に成功する。
「~♪ 何が出るかな、何が出るかな~♪」
「ワクワク、ドキドキ♪」
一方、すぐ隣のダイニングテーブルに座って一連のコント(?)を見ていたほのかと真奈美は、これから何が起きるのかと瞳を輝かせて身を乗り出している。 お昼のトーク番組で流れるワンフレーズを口ずさみ、二人とも新たな同居人とのスキンシップに興味津々だ。 直後、腹の底から響く夏穂の怒号が屋敷を揺るがした。
「あ、あ、あ、あんたら――――――――――――――――っ!!」
その後の惨事(?)について、唯一の目撃者であるほのかと真奈美が後に語った所によると――。
「夏穂さんの大噴火は暫く続き、火山弾(糾弾?)と火砕流(涙!)をまともに食らった宏は噴火が収まるまで延々と床に正座させられていたぜ。いや~、見応えあったなぁ♪ え? 若菜ちゃん? ……そう言えば、いつの間にかいなくなってたなー」
「夏穂さんの怒りようったら、それはもう凄まじかったわ。髪が逆立ったと思ったら窓がビリビリ震えて、三毛ちゃんが怯えて外に逃げ出す程だったもの。その後、青くなってた宏君に『恩師に対する妻への教育がなってない』とか『夫たるもの、妻への躾が何たらかんたら』とか、まるで学校の先生みたく、お説教が続いてたの。そしたら今度は『まだ枯れてないっ、現役だ!』とか『ウチはまだ処女だ、クモの巣張るほど穴が開いてないっ!』とか、自ら暴露しつつ手足をバタつかせて大泣きし始めたの。そんな夏穂さんを赤くなった宏君が必死になだめたりして。そんな、いつもと違う宏君の慌て振りが見ていて面白かったわ~♪ ……あ、夏穂さんって、学校の先生なんだっけ? それじゃ『まるで』、じゃ無いわね。てへっ♪」
二人の目撃談は優によって文章化、及び音声データ化され、永久保存された。 そして――。 飛鳥と美優樹は小さな千恵の大きな背中に隠れながら、今夜が下宿二日目だとは到底思えなかった。 夏穂と宏達が実に自然体で解け合っているからだ。 それは、まるで何年も何十年もここで暮らして来たかのような錯覚を起こさせる程に。
「ねえ、美優樹。私達って……いつ、ここに来たんだっけ?」
「お姉ちゃん……。えっと、昨日、なんだけど……夏穂お姉さんを見てると、とてもそうは思えないわ」
額を突き合わせてヒソヒソと話す二人の姉妹は、唐突にこの屋敷へ来た時の事を思い出してい た――。
★ ★ ★
ここで、話は昨日の昼過ぎへと戻る。
「夏穂先生、飛鳥ちゃん、美優樹ちゃん。ここが、みんなの下宿する家だよ。ようこそ我が家へ♪」
東京駅まで迎えに来てくれた宏に先導された三人娘は、乗り換えた快速電車に揺られて三十分。 駅前の賑やかな商店街を抜け、周囲を畑に囲まれ点在する民家や雑木林を見ながら閑静な一本道をの~んびり歩く事、さらに十五分。 途中、そよぐ風に木の葉が揺らぐ音や小鳥のさえずりに何度も包まれ、遥か蒼空ではトンビがぐるりと輪を描く様子など幾つも見つつ、ようやく到着した家の門を一歩入った所で。
「「「………………………………」」」
顎をカクンと落とし、目を見開いたまま呆然と立ち尽くしてしまった。
「な゛……なんなの、このお家(うち)は!? まるで……時代劇に出て来るような武家屋敷じゃない!」
震える手で二階建ての堂々たる日本家屋を指差し言葉を詰まらせる夏穂に、家主の宏は相好を崩す。 元・担任が目を剥いて驚く様に、元・生徒の宏は高校(がっこう)生活で受けた様々な辱め(濃厚なスキンシップだ)の借りを返した気分になったのだ。
「さすがです。仰る通り、ここは武家屋敷風の商人宿を前のオーナーが個人の別荘として譲り受けた物なんです。で、少し前から使われなくなっていた所を、俺が結婚を機に土地ごと買い取ったんです。……まぁ、二階部分や西側――正面から見て左に伸びた部分は、あとで増築したんですけどね」
自慢気に胸を張る元・教え子に、夏穂の頭の中では更に幾つものクエスチョンマークが湧き上がる。
「……買い取った? こんな大きなお屋敷を……土地ごと!? 宏クン、あなた一体……何者なの!?」
夏穂は見開いた瞳のまま、屋敷から宏へと向き直った。
(つづく)
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