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     ~ラブラブハーレムの世界へようこそ♪~


コンチェルト~美優樹(1) コンチェルト~美優樹(1) 美姉妹といっしょ♪~新婚編
 
「はぁ~~~、何であたいが女性(ひと)の『初体験(はじめて)』をアシストするハメになったのかしら」

 灯りの落ちたリビングを抜け、オレンジ色のフットライトに浮かび上がる東廊下を歩きつつ千恵は形好い眉を八の字に下げて自嘲気味に呟く。
 今宵、宏と同衾するのは千恵の番なのだが、今回は黒を基調としたゴスロリ衣装を身に纏った美少女を従えていた。
 頭にはレースのヘッドドレスを冠り、白いレースのフリルがそこかしこを飾るドレスを纏う少女は、初めての経験を前にしてもいつも通りの格好だ。
 いや、こんな時だからこそ、普段通りの格好をしているのかもしれない。

「やれやれ。何でもかんでも面倒を見てしまうあたいの姐御的性格も考えモノだわ」

 眉根を寄せたままブツブツと口の中で呟いていると、後ろを歩く七つ年下の美少女が青ざめて見える顔のまま緊張気味に声を掛けた。
 どうやら、千恵の独り言が耳に届いたらしい。

「千恵さん。もう賽は投げられたんです。諦めて協力して下さい。美優樹には千恵さんしか頼る人がいないんですから」

「う゛っ! …………♪」

 それまでの憂いはどこへやら。
 後輩の可愛い女の子から哀願され、プライドをもくすぐられた千恵は、いとも簡単に機嫌が上向く。
 歳の離れた可愛い妹みたいに思い始めていた美優樹からのお願いには、とことん弱い先輩だった。

「ったく、しょうが無いわね」

 腹を括った千恵は宏の部屋の前に立ち、ドアノブに手を伸ばし掛けた所でクルリと振り向いた。

「いい? これから中へ入るけど、ホントに好いの? やめるなら今のうちよ?」

 ロングポニーテールを揺らした千恵は両手を腰に当て、今夜の主役である美優樹を仰ぎ見る。
 このゴスロリ少女は身長百八十センチと屋敷一高いので、それより三十センチ低い千恵が傍に立つとどうしても見上げる形になってしまうのだ。
 そんな心配気に見つめる千恵に、少女は強張った顔のまま、油の切れた、からくり人形の如くカクカクと頷く。

「あ……は、はいっ。あの、そのっ……大丈夫ですっ。いっ、行きますっ」

 好きな男性(ひと)の部屋を前にした所為か、はたまた一世一代のイベント(?)を目前にした所為か、緊張の度合いがピークに達したらしい。
 言葉は硬く、動作もギクシャクとしているし、切れ長の瞳から放たれる視線も妙に固まったまま微動だにしない。
 血の気の引いた白い肌と纏う衣装が相まって、目の前の美少女は本当にアンティークドールになったかのようだ。

(やれやれ。石みたく固まって全然大丈夫じゃ無いじゃない。可愛い顔に似合わず強情……と言うか何と言うか、案外頑固なのねー)

 千恵は美優樹の青白く見える顔色に、心の中で溜め息を吐(つ)く。
 さすがに人生の一大転換期を迎えているだけあって、周りを見る余裕や微笑む気持ちの余裕すら無いようだ。

「あのさ。別に、十六歳の誕生日を過ぎた途端に慌ててコトを進めなくても好いと思うんだけど? チャンスはこの先いくらでもあるんだし、もっと絆を深めてからでも遅くは無い……」

 声を潜めた千恵は、後輩の美少女の翻意を促してみる。
 この先はノリや勢いだけで済ませて好い部分では無いし、先走った行動を取って後々、後悔して欲しくない。

「でもっ! もう……心が……美優樹の心が言う事を聞かないんですっ! だからっ……」

 千恵の言葉を遮り、意気込む美優樹の瞳に、見る間に大粒の雫が浮かんで来る。

「あ――――っ、ハイハイ、判ったから! こんな夜中に、こんな所で泣かないでっ!」

 フットライトに煌めく涙を見た千恵はポニーテールを激しく揺らし、慌ててなだめに掛かる。

(今泣かれたら、起き出したみんなから何事かと問い詰められるのは目に見えてるじゃないっ! 殊に安眠を妨げたかどで晶さんからの糾弾に耐える自信など、あたいには無いわよっ)

 この東廊下には筆頭妻の晶と、千恵の双子の妹である若菜の部屋があり、しかも宏の部屋の正面、目の前にあるのだ。
 こんな所で夜遅くに騒いでいたら頭から角を生やした晶に責められ、館内スピーカーの様な妹に見つかったら美優樹の秘めた想いがあっという間にみんなに知れ渡ってしまうではないか。
 そんな事を考えたら、こっちが泣きたくなった。

(だったらいっその事、みんなも巻き込んで美優樹ちゃんのロストバージンに協力させる……訳にもいかないし)

 鬼気迫るオーラを纏う後輩を眺めつつ、諦めの境地に立った千恵はドアノブにそっと手を掛けた。


     ★     ★     ★


 話はその日の午後まで遡る。
 屋敷の周囲に生い茂っていた木々もすっかりと葉を落とし、街やテレビでは間近に控えたクリスマスの話題で盛り上がっている十二月の初旬。
 キッチンに立って夕餉の準備をしていた千恵は、いつものゴスロリ衣装を纏った美優樹から声を掛けられた。
 厚手のコートを羽織り、ノートや教材の詰まった小さなバッグを背負っている所を見ると、帰宅してそのままここへ来たようだ。

「あの! 折り入ってお願いがあるんですけど……よろしいでしょうか。こんな事、誰にも相談出来無くて……」

 辺りを見回し、誰もいない事を確認した美優樹は自分より遥かに背の低いお姉さんに向かって頭(こうべ)を深く垂れる。
 しかし、勢い込んだものの最後は声が小さくなってしまう年下の少女に、調理の手を止めた千恵は大きく破顔して頷いた。

「何でも言って! あたいだったら、誰よりもどんな事でも立派に解決してみせるからっ」

 胸をドンと叩いて豪語する千恵。
 並み居る妻達の中から他の誰でもない、自分だけに相談してくれたと言う事実が千恵の自尊心をいたくくすぐったのだ。
 中高大学と、面倒見の好い姐御として君臨した時の血が騒ぎ出しているのが自分でも判る。
 人から頼られる快感に、久し振りに浸って(酔って?)いると言っても過言では無い。

「社会人組の四人は十八時過ぎまで帰って来ないし、若菜と真奈美さんは足りない食材を駅前のスーパーまで買い出しに行って優さんも一緒に銀行へ行ってるから、あと小一時間は誰も戻らないわ。今、屋敷にいるのはあたいだけだから安心して♪ ……って、飛鳥ちゃんは? 今日は一緒じゃないの?」

「お姉ちゃんは神保町で資料を探すと言うので大学(がっこう)で別れました。帰りは十七時過ぎになるそうです」

 何やら真剣な表情の美優樹に、話が長くなると読んだ千恵はダイニングテーブルに手際好く湯気の立つお茶を二人分、淹れて置く。

「ほら。まずはバッグを下ろして、コートも脱いで座って。慌てなくて好いから、自分のペースで話してね♪」

 ウィンクひとつ、投げて寄越すお姉様に、美優樹の硬い表情がだいぶ柔らかくなる。
 千恵の今の表情は、新幹線ホームで飛鳥がはぐれた時に見せてくれた時と同じ、心温まる笑顔だったからだ。

「……あの」

 それでも暫く逡巡し、顔を上げて言い掛けるものの、すぐに口をつぐんで目を伏せる美優樹。
 自分の事なのに他人(ひと)を巻き込む事が何とも心苦しく、胸が痛いのだ。

「でも、いつまでもこのままじゃ一生何も変わらない。……でも、千恵さんの厚意を当てにするのは気が引けるし……だからと言ってこのまま悶々と過ごすのはもっと嫌だし……」

 いつまでもブツブツと自問自答を繰り返す美優樹に、千恵は黙って優しい眼差しを向けたままだ。
 先を急がせたり焦れったさにイラついた態度を見せたりする事は一切無く、実に悠然と構えている。
 そんな千恵の頼り甲斐のある態度に、少女は表情を引き締めて顔を上げた。

「実は……」

 温(ぬる)くなったお茶をひとくち啜った美優樹は、胸に抱(いだ)いていた長年の想いを吐露した――。



「なるほどね~。その気持ち、判るわ。あたいもそうだったからね~」

 後輩の長い話を聞き終えた千恵は、すっかりと冷めてしまったお茶を一気に飲み干す。

 ――遠い存在だった宏が身近な存在となったものの、想いを伝えられない切なさや辛さに身を焦がす毎日――

 美優樹の宏への想いは、かつて自分達が抱いていた想いと全く同じだったからだ。
 もっとも、自分達の場合は集団押し掛け女房的な行動で解決したし、お互い相思相愛だったから結ばれるのも簡単だった。
 しかし、この繊細で淑やかな後輩に夜這い同然の押し掛け女房役はたぶん――いや、絶対に無理だろう。

「美優樹に力業(ちからわざ)は無理です。宏さんの隣に立つだけで逆上(のぼ)せてしまいますから」

 本人も自覚しているらしく、想いを伝える切っ掛けすら掴めないと言う。

「なので、ここは是非、屋敷唯一の常識と謳われる千恵さんに、自らの経験を元に美優樹の告白から初体験までを取り持って貰きたい、と考えまして」

「な、なるほど。それで、あたいと宏が同衾する時に同行させて欲しい――と言う訳ね」

 大きく頷く美優樹に、千恵は思わず苦笑する。
 かなりゴマすりな部分はあるが、確かにこんな事は誰にも相談出来無いだろう。
 美優樹は面倒見の好さに定評があると夏穂を始めみんなから聞かされていた事も、千恵を頼る一因となったと語った。

「でもさ。告白と同時に、いきなり……その……初体験(はじめて)……と言うのは、チョッと飛躍しすぎじゃない?」

 未成年に生々しい言葉を使うのを躊躇う千恵に、七つ年下の女の子は首を横に振り、目元をほんのり赤く染めて曰(のたま)った。

「でも、ほのかさんと若菜さんから伺った所によると、みなさん告白と同時に処女を捧げた、と仰っていました。それならば、同じ条件の美優樹にもチャンスは大いにある……と思いまして」

 打てば響く早さで返って来た言葉に、千恵は思わず頭を抱える。

(……って、ほのかさんにあの娘(こ)は未成年になんつーコト教えるかなっ! もうちっと相手の歳を考えろってーのっ! 第一、他人(ひと)の初体験を簡単にバラしやがって……恥ずかしいじゃないっ!)

 顔に出たのだろう、しかめっ面に紅が差す千恵に美優樹が柔らかく微笑んだ。

「宏さんとの馴れ初めを強くお聞きしたのは美優樹です。若菜さんやほのかさんに罪はありません。それに、美優樹はもう十六です。誰に臆する事無く胸を張って結婚出来る年齢になったのですから、好きな人へのアプローチに何ら支障はありません」

 切れ長の瞳を潤ませ、夢見る乙女そのものの美優樹に、千恵はそっと溜め息を吐(つ)く。

(こりゃ、何を言っても無駄ね。恋する乙女は純粋な分、向こう見ずなのよね~。……まぁ、それだけ宏の事を想っている……って事なんだろうけど)

 宏と結ばれた当時を思い出した千恵は、美優樹の想いは他人事(ひとごと)とは思えなくなった。
 今の美優樹は昔の自分達と同じだ。
 ここで美優樹の想いを否定する事は、宏に対する自分達の想いをも否定する事になる。

(仕方無い。ここはもう少し様子を見るか。話すだけ話せばスッキリする場合もあるし)

 ここまで頼られ、懐かれれば嬉しいし、上手くコトが進まなくても最後まで面倒を見てあげようと言う気にもなる。
 翻意を促す事を諦めた千恵は、目の前の乙女に頭の片隅で疑問に思っていた点を尋ねる。

「ねえ? あたいに頼る気持ちは当然として、どうして夏穂先生や飛鳥ちゃんには内緒にするの? 二人とも美優樹ちゃんの宏への想いは知ってるんでしょ? だったら変に隠さないで応援して貰った方が後々好いんじゃない?」

 幾分背負っている先輩の言葉に、黒のヘッドドレスが左右に揺れる。

「これは美優樹個人の問題であり、夏穂お姉さんやお姉ちゃんの想いはこの際、関係ありません。早い者勝ちです。美優樹には、宏さんと二人っきりの場面で告白し、余人を交えず結ばれたい、って言う長年の想いがあります。あ、もちろんサポートして戴ける千恵さんは別です」

 意外と狡猾(?)な面を覗かせる美優樹だが、それだけ一途な想いを抱えている証拠だろう。

(しかも、美優樹ちゃんの中では、あたいが後押しする事が既に決定済みとなってるし)

 こめかみに冷や汗を浮かべる千恵を余所に、瞳に力の篭もったゴスロリ美少女の言葉が続く。

「それに……三人一緒になって宏さんの許へ押し掛けても宏さんは困るだけだと思います。夏穂お姉さんははしゃぎ回ってうるさくなりそうですし、お姉ちゃんは恥ずかしがって何も出来無いでしょうし」

 身内だけあって、それぞれの行動パターンを把握しているのは流石だ。
 ここで小さく微笑んだ美優樹は視線を手元から千恵へと向ける。

「その点、千恵さんなら他の誰よりも頼りになりますし、決して美優樹を悪いようにはしないと思っていますから」

 己の抜け駆けをスルーし、さり気なく先輩をヨイショする美優樹。
 伊達に知識だけ優れている訳では無く、人心掌握(世渡り?)術も十六歳にして完璧に把握しているようだ。
 結果、後輩からのおだてに見事に乗った(乗らされた)千恵は鼻高々に胸を張る。

「あら♪ やっぱそう思う? まぁ、あのメンバーを見れば、あたいが一番まともなのは当然よね~」

 再び大きく破顔した千恵は莞爾と笑い、並み居る面々を思い浮かべる。

「晶さんは一から十まで仕切りたがるし、ほのかさんは全員を巻き込んだお祭りになりそうだし。真奈美さんは淫魔の如く豹変するし、優さんは……男女の交わりについて妙なうんちくを語りそうね。あの娘――若菜のことだ――に至っては何も言う事無いわね。そんな面々に、一生に一度の経験(はじめて)を邪魔されたくはないわよねー」

 回想に耽る千恵の言葉に、目を見張る美優樹。
 ここ数週間共に過ごし、思い描いていた各人のイメージとピタリ合致したので、言い得て妙だなと感心したのだ。

「ですから、ここは是非、千恵さんのご協力を以て美優樹の初体験(はじめて)をサポートして下さい! お願いしますっ!!」

「あ、でもさ。肝心な部分だけど、宏の美優樹ちゃんに対する想いはどうなっている……」

 椅子から勢い好く立ち上がり、テーブルに額が着くまで深々と身体を折る美優樹に、千恵は出かかった言葉が途切れてしまう。
 オマケに、お願いされた条件反射でつい、大きく頷いてもいた――。


     ★     ★     ★


「宏。お、お待たせ」

 千恵のいつもと違う、いくぶん緊張気味な声に訝しんだ宏は、ベッドの上で読んでいた温泉雑誌から目を上げる。
 と、部屋に佇む二人目の美女の存在に初めて気付いた。
 ひとりは紫掛かった黒髪を白のリボンで縛ってロングポニーテールにした小柄な女性で、黒のTシャツに白のフレアミニスカートを纏い、ムッチリとした太腿を惜し気も無く晒した千恵なのだが、もうひとりは……。

「あ……あの。こ、こんばんは……」

 徐々に小さくなる澄んだ声と、ぎこちない笑顔で少し俯き加減のかんばせ。
 千恵より頭ひとつ分高く、スラリとした八頭身ボディーの女の子。

「み、美優樹ちゃんっ!?」

 栗色に煌めく髪をツインテールにし、頭には黒のレースのヘッドドレスを冠り、黒を基調として白のフリルで装飾された長袖のドレスを纏っているゴスロリ美少女だった。
 ナチュラルメイクが施され、少女とは思えない大人びた顔と艶っぽく光る紅い唇に目が一瞬、奪われてしまう。
 こちらは裾の長いドレスを着ているので生足は拝めないが、黒のストッキングを穿いている事は判った。

「ち、千恵姉? 美優樹ちゃんと一緒に……どうしたの?」

 いつもと違い、どことなく妖しい雰囲気を纏う美優樹に宏の声が上擦り、鼓動が一気に倍増する。
 目鼻立ちの整った美顔が、真っ直ぐ自分を捉えて離さないのだ。
 黒目がちな切れ長の澄んだ瞳に魅入られつつも、相手が五つ年下にも係わらず屈しそうになる宏。
 背中と手の平にじわりと汗が浮かび、腰も引ける。
 高い位置から見下ろされると、まるで抗争中の若菜やほのか、夏穂や晶と言った年上の長身メンバーと対峙している気分になってしまうのだ。

「あ~~~~、それはその~~~~、何と言いますか……………………」

 どう切り出したものかと迷う千恵に替わり、硬い表情のまま美優樹がベッドサイドに歩み寄る。
 そして、天井を見上げると口の中で何事か呟いた。

「十六年分の勇気と気力を振り絞って、清水の舞台から飛び降りるのよっ……えいっ!」

 さらに一歩進み出たゴスロリ美少女は、遂に触れたくても触れられなかった想い人の手を取る事に成功した。

「あのっ! つまり、そのっ……」

 首から上、耳まで真っ赤に染めた美優樹は両膝を折り、ベッドで上体を起こしている宏に顔の高さを合わせる。
 しかし、全ての勇気と気力を使い果たした美優樹の意識は、ここで無情にも混濁してしまった。
 想い人の温かな眼差しが美優樹の理性を吹っ飛ばし、頭の中が真っ白になって前もって考えていた台詞が全て消え去ってしまう。

「えっと、あの、その、だから……」

 両手で挟んだ宏の手の温もりが、美優樹の重力すら奪ってゆく。
 今、自分がどんな姿勢なのか、どこを向いているのかさえもあやふやになって来る。
 しまいには、今何をしているのかさえも判らなくなった。

「あ゛、あ゛ぅ~~~~~~……」

 すっかりパニック状態となる美優樹。
 二本に垂らした髪は落ち着き無く不規則に跳ね回り、口からはオットセイのようにアゥアゥと言う言葉しか出て来無い。
 しかも、切れ長の瞳なぞは漫画のように渦を巻いてしまっている。
 と、そんな泡を食う後輩を見かねた千恵が一歩、前に進み出た。

「あのね、宏。実は……」

 これまでの経緯(いきさつ)を話そうと、千恵が美優樹の肩に手をポン、と置いた、その瞬間。

「宏さん! 美優樹は、ずっと昔から宏さんをお慕い申し上げておりました。好きです! ひとりの女として、宏さんが好きなんですっ! 愛していますっ!! お願いです。美優樹を……宏さんの手で女にして下さいっ!!」

 千恵がスイッチを押したのか、はたまたパニックの果てに自爆したのか。
 ビクンと身体を大きく震わせたゴスロリ美少女は生まれて初めて、異性に対して己の恋心を口にした。


                                            (つづく)

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コンチェルト~美優樹(2) コンチェルト~美優樹(2) 美姉妹といっしょ♪~新婚編
 
「美優樹は宏さんが好きですっ。愛しています! 宏さんの手で美優樹を女にして下さいっ!」

 宏と出逢い、ひとりの男性として意識し始めてから丸六年。
 その想い人の手を取り、胸に秘めていた想いを一気呵成に吐露する美優樹だったが……。

(あれっ!? この後、どうするんだっけ? えっと……確か……あれれ?)

 これまで何度も宏に抱かれるシーンを頭の中で想像し、シミュレートして来たのに肝心な時に思い出せない。
 好きな男性(ひと)を目の前に逆上(のぼ)せ上がり、日頃の冷静さを欠き始める美優樹。
 焦れば焦るほど額と背中に冷や汗がじっとりと浮かび、ドツボに嵌ってゆく。

(告白の後は……宏さんを押し倒すんだっけ? いや、違うっ! 嫌がるフリをしつつ自ら服を脱ぐんだっけ?)

 学問に於いては飛び級を繰り返す程の類い希なる知識を誇っていても、男女間の知識に於いてはまだまだ年相応な十六歳の少女。
 栗色に輝く長いツインテールを振り乱し、口をパクパクさせて狼狽える美優樹に、付き添っていた千恵が面倒見の好い姐御として堪らず口を出した。
 七つ年下の後輩の慌て振りに見ていられなくなったのだ。

「美優樹ちゃん! 告白の後はキスするの! 目を瞑って唇突き出すのよ!」

 まるで、どこぞの女将のように隣から小声で指示するものの、テンパっている美優樹には通じない。

「えっ!? キス!? キス……するの? 誰が? 誰に? ……ほぇ?」

 何の為にここにいるのかさえも忘れてしまう程、混乱を極めるゴスロリ少女。
 もはや、目の前の宏すら目に入らない。
 結果、ベッドサイドで宏の手を取ったまま、彫像の如く固まってしまう。

「えっと……その……美優樹ちゃん? 大丈夫?」

 宏も年下の少女の余りに必死な形相に思わず声を掛けるが、見るからに引き攣っている美優樹からは何のリアクションも返って来ない。
 果たして彼女の想いに応えてこのまま手を引いて胸の中に抱き寄せるか、はたまた押し倒されるのを待つべきか。
 しかし、このまま美優樹の次の行動を待っていたら、それこそ朝になりそうだ。
 だからと言って、彼女の明確な意志が確認出来無い以上、こちらからは手出し出来無い。

「あの、千恵姉?」

 思わず助っ人(?)に視線を向けた瞬間、ポニーテールを跳ね上げた千恵が二人の間へ強引に割り込んだ。
 ツインテール娘の余りのもどかしさに我慢ならなくなったのだ。

「ああもうっ、見てらんないわっ! 美優樹ちゃん! ちょっとどいて! いい? 次はこうするのよっ!」

「……えっ!? あ……千恵……さん?」

 肩を叩かれた衝撃で我に返るゴスロリ娘を余所に、千恵はベッドに半身を起こして横たわる宏に跨り、肩に両手を載せるや否やバードキスの嵐を宏に見舞う。
 首を何度も前後させ、宏の唇に己の唇を重ねる千恵。
 その顔は赤らんでほんのりと上気し、後輩にキスの仕方を教えているようにも、宏との逢瀬を待ち切れなくなったようにも見える。

「ほらっ、ボケッと突っ立って無いでこっち来て! あたいと同じ様にやって見なさいっ」

 吊り上った瞳のまま手招きする千恵に、ゴスロリ美少女は素直に従う。
 その余りに血走った瞳に、ここは大人しく従った方が好いと本能が告げたのだ。

「えっと、こう……ですか?」

 息巻く千恵と場所を交代し、見よう見まねで宏の腰に跨って対面座位の姿勢になる美優樹。
 と、ここで少女はハタと気付いた。

(……って、これまで宏さんの傍にいるだけで舞い上がっていたのに、今はごく自然に宏さんと触れ合えている!?)

 二人の間に薄い掛け布団があり、宏はロングTシャツ、美優樹はゴスロリ衣装を纏っているとは言え、想い人とほぼ密着している事に驚きを隠せない。
 どうやら、頼りになる千恵の存在と的確な(?)指示が美優樹の消極的な性格を忘れさせ、前に進む後押しをしてくれているようだ。
 そう思った瞬間、驚きは歓喜の渦となって美優樹を襲った。

「宏さん……宏さんっ!」

(これまで触れたくても触れられなかった男性(ひと)が、まさに手の中にいる!)

 美優樹は嬉しさの余り、それまで溜め込んでいた感情が溢れ出すのが判った。

(宏さんに美優樹のファーストキス、やっと捧げられるんだ……。嬉しいっ!)

 宏の澄んだ瞳を見つつ、上気した顔を少しずつ寄せる美優樹。
 今の自分を鏡で見たら目尻が下がり、すっかりと頬が緩んでいる事だろう。

「宏さん……♥」

 宏の瞳に映る自分の顔が徐々に大きくなり、好きな男性(ひと)の息遣いも感じ始める。
 しかし、いざとなるとあと数十センチが途轍もなく長い距離にも思えてしまい、思い切って唇を寄せられない。

「そう。そのまま顔を寄せて……って、ほらっ! 宏もボケッと見惚れてないで受け入れるっ!」

 やっと動き出した美優樹に目を細めて満足そうに頷く千恵だが、今度は全く動かない宏にまで指示を出し始める。
 この二人に任せていたら、処女喪失は一週間後になってしまうと本気で思ったのだ。

「美優樹ちゃん。顔を少し斜めに傾けないと鼻が邪魔になるわよ。……そう、そんな感じ。……あ、もう少し顎を上げて……うん。そのまま唇を重ねれば、後は宏がリードしてくれるわ♪」

「あの~、俺の意見は……」

「却下! 今は美優樹ちゃんの想いを成就させる事があたいの使命なのっ! ええいっ! つべこべ言わずにさっさとキスせんかっ! 美優樹ちゃんがお待ちかねよっ!」

 ベッドサイドに仁王立ちになり、細かく世話を焼く幼馴染のお姉様に宏はやれやれと肩を竦める。
 異様にギラ付く瞳を見て、これはもう従う以外に選択肢は無いと長年の経験から悟ったのだ。
 それに、少なからず好意を抱いていた相手との触れ合いに、大いに喜んでいる自分もいる。
 宏は美優樹の澄んだ瞳に映る自分を見ながら、思いの丈をぶつける。

「えっと……美優樹ちゃんの想い、確かに受け取ったよ。俺も美優樹ちゃんの事、好きだ。数年前、出逢った頃は妹みたいに感じていたけど、こうして一緒に暮らしているうちにひとりの女性としか見られなくなってたんだ」

 想い人からの思いもよらぬ告白に、唇が重なるまで数センチを残してゴスロリ美少女の動きがピタリと止まる。
 同時に切れ長の瞳が大きく見開かれ、首から上が見る間に真っ赤に染まってゆく。

(ひ……宏さんが……美優樹を好き? 好きだと言った……!? 美優樹、宏さんから告白……されたっ!)

 両想いになれた嬉しさと喜びで頭が痺れ、早鐘のように脈打つ心臓が今にも爆発しそうだ。

「好かったわね、美優樹ちゃん! 想いが叶って」

 ニコリと微笑んだ千恵は、そのまま宏に鋭い視線を向ける。

「ホラっ! 女に恥を掻かせない! 男からキスして、とっとと次に進むっ!」

 すっかりプロデューサー気取りの千恵。
 どうやら、美優樹の世話を焼く事に生き甲斐を感じ、最後の最後まで面倒を見る腹積もりのようだ。
 その証拠に鼻息も荒く、顔もすっかりと紅潮している。
 宏の返事も聞かず、奥手な後輩へ次々と指示を出している。

「美優樹ちゃんも、いつまでも固まってないでっ。好きな人と触れ合える嬉しさ、悦びを全身で味わって!」

 千恵の心温まる(?)お言葉に、宏と美優樹は再び相手の瞳に自分の姿を見る。
 そして少女は目をそっと閉じる。

「宏……さん♥」

「美優樹ちゃん♥」

 ベッドに落ちる二つの影が、初めてひとつに重なった。


     ☆     ☆     ☆


(あぁ……美優樹、宏さんと……キス、してるぅ)

 顔に掛かる息遣いと、思った以上に柔らかい唇。
 そして伝わる、宏の――好きな男性(ひと)の温かさ。

(キスって、こんなにも気持ち好いものだったのね……。皆さんが毎日、宏さんとキスしてる理由が判る気がする)

 目を瞑り、美優樹がファーストキスの感慨に耽っていると、それを後押しするかのような指示が耳に届いた。

「美優樹ちゃん、少しで好いからそのまま顔を左右に振ってごらん。もっと気持ち好くなれるわよ♪」

「顔を左右に? こんな感じで……って、なにこれ!? 凄く……気持ち好いっ!!」

 薄い唇同士の擦れる刺激が性電気となって全身を走り抜け、思わず目を見張る美優樹。
 すると、超ドアップで宏の顔が目の前に現れた。
 キスの間中ずっと目を閉じていたので、改めて宏との距離を痛感したのだ。

「あぁ……宏さん。好き……好きですぅ……♥」

「俺も好きだよ♥ ……チュッ、チュッ……はむっ」

「宏さん……宏さんっ♥ ……チュッ、はむっ」

 いつしか、宏と同じ唇の動きをしている美優樹。
 軽くついばみ、優しく唇を挟む。
 舌先で唇をなぞり、舌先同士を軽く触れ合わせる。

(あぁ……宏さんとのキス、癖になるぅ♥)

 ベッドに半身を起こした宏に跨り、バードキスを繰り返すゴスロリ美少女。
 愛する男性(ひと)との甘いキスに切れ長の瞳はすっかりと蕩け切り、細い眉と共に八の字に下がってしまっている。
 鼻息もだんだんと荒く、早くなってゆく。
 と、そこへすぐ隣で指揮していた千恵が顔を寄せて来た。

「次のステップは、こうよ!」

 言うが早いか、宏の顔を強引に奪うと舌を突き出し、ディープキスを実演する千恵。
 二人の愛情溢れるバードキスを目の当たりにして羨ましくなり、自分自身が早々に次の段階へと進みたくなったのだ。

「こうして……互いに舌を絡め合って……あむっ……ンフンッ……あぁ……♥」

 わざと口を大きく開け、己の舌使いを見せ付ける千恵。
 宏の舌を吸い寄せ、己の舌を回転させるようにして絡め合う。
 そんな発情した千恵に、美優樹とのキスで昂奮状態になっている宏も便乗する。

「好きな女性(ひと)と舌を擦り合わせると、凄く気持ち好いんだ。だから美優樹ちゃんとも大人のキスをしたいな♪」

 ニコリと微笑む宏に、美優樹はいとも簡単に落ちてしまう。

「美優樹も宏さんと大人のキス、したいですぅ♥ して下さいぃ♥」

 ファーストキスを捧げ、すっかり骨抜きにされたゴスロリ美少女は千恵と宏の言うがままに舌を躍らせ、愛する男性(ひと)の唇を貪ってゆく。

「あむっ……ぴちゃっ……ずりゅっ……んふんっ……ああっ! 舌が擦れて……気持ち好い……」

 呼吸をするのも忘れる程、愛する男性(ひと)とのディープキスにのめり込む美優樹。
 さっきまでの強張った表情はとっくに消え、今や顔を紅潮させて蕩け切っている。
 受ける宏も久し振りに味わう処女の唇にすっかり昂奮し、飽きる事無く長い時間、舌を絡め合う。

「美優樹ちゃんの唇、プリプリしてて……美味しいよっ」

 背中に回した手に力を込め、ギュッと抱き締めて親愛の情を示す宏。
 すると黒のゴスロリ衣装に隠されたスレンダーな肉体の感覚が、それこそ手に取るように判った。
 当然、股間には血液が流れ込んだ立派な塔がそそり勃っている。

「あんっ……宏さん。ずっと前から……その……お尻に硬いモノが当たってるんです……けど……」

 それが何なのか既に知っている美優樹は恥ずかしげに瞳を伏せるが、言い訳(?)する宏より先に千恵が口を開いた。

「ふふっ♪ すっかりヤル気満々、準備完了! って感じね。それじゃ、美優樹ちゃんに宏の真の姿を見せてあげる♪」

 二人の横にいただけに、世話焼のお姉さんは素早い身のこなしで掛け布団はもとより宏の着ていた衣類全てをあっという間に剥いでしまう。
 すると、布団の中とパンツに篭もっていた男の熱い匂いが部屋に溶け出し、二人の女性の身体を包んでゆく。

(きゃっ! ひっ、宏さんの……裸っ! あれが……おちん……ちん!)

 夢では無い、現実(リアル)な宏の裸体に視線が吸い寄せられつつ、女の身体から発する匂いとは明らかに違うフレグランスに思わず深呼吸する美優樹。

(これが男性の……匂い? 想像の中では決して判らなかった、宏さんの……匂い♥)

 宏の、男の発情した匂いを嗅いだ為か、心なしかお腹の奥が熱く疼くのは気のせい――だろうか。
 ベッドには、ゴスロリ衣装の美優樹と、これまたいつ服を脱いだのか下着姿の千恵が宏の腰を挟んで座っている形となった。

「ほら、美優樹ちゃん。これが宏のオチンチンよ。この硬くそそり勃った肉棒が、もうすぐ美優樹ちゃんの膣内(なか)に挿るの」

 千恵が指差す方向には、臍まで届く程に勃起した男根がお腹と平行に横たわり、ビクビクと脈打っていた。

「こっ、こんなに大きいの!? 宏さんの、お……おちん、ちん、って。……ざっと見、長さ百八十ミリ強、陰茎部分は直径四十ミリ弱のやや偏平した円筒形……って感じかな? あれが……ピンク色のヘルメットみたいな部分が亀頭……って言うのね。それに……陰茎全体に浮き出てる青黒い血管が……実に生々しいわ。……そっか、これってよくよく見ると真っ直ぐな棒じゃなくて、若干左に曲がりながら弓なりに反っているのね」

 宏の股間に顔を寄せ、首を左右に傾けつつ男の生殖器に魅入る美優樹。

「この陰毛の生えた、皺くちゃな袋に入っているのが陰嚢……睾丸、なのね。へぇ~、ホントに二つ、ぶる下がってるわ。大きさは……卓球の球……位かしら? しかし、どれもこれもレディコミで読んだ漫画よりもリアルで……全然迫力が違うわ」

 初めて生で見るペニスに、恥ずかしさよりも知的好奇心が湧き上がる少女。
 真っ赤になった顔を少し背けつつも、横目でしっかりと股間を観察し、つい、数的データをも把握してしまう。
 一方、千恵は宏のイチモツに手を伸ばし、嬉々として曰(のたま)った。

「それじゃ、さっそく触ってみようっ! 大丈夫。噛み付かないから♪ 慣れれば可愛いモノよ♥」

 にこやかな顔のまま、何気に珍獣扱いする千恵。
 千恵自身、宏の勃起したペニスに性欲が盛んに煽られ、抑えが効かないのだ。
 それもその筈、本来なら今頃は宏と合体している筈だったのだから。
 後輩の為に先に道を譲り、自分はお預けの現状では当然の反応かもしれない。
 千恵のショーツのクロッチ部分は笹の葉状に大きく濡れそぼり、無毛の肉裂がすっかりと浮き出ている。

「千恵姉ってば、そんなに昂奮して……。って、そこまで強く握らなくても好いのに」

 濡れたショーツに気付き、涎を垂らした犬(?)状態の千恵に宏は思わず苦笑いする。
 しかし、美女二人――しかもひとりは処女――から弄られる快感に浸っているのも事実だった。
 敢えて二人に逆らわず、むしろ大の字になって股間を晒す。
 初めての男に選ばれた嬉しさが、好きな女性(ひと)を抱ける喜びが宏を大胆にもしているのだ。

「美優樹ちゃん。色々と弄っても好いよ。そして納得したら、俺とひとつになろうね♥」

 見られる(?)快感に早くも先走り液を滲ませる宏の肉槍に、美優樹(と千恵)は身体ごとにじり寄り、顔を寄せる。
 舌なめずりした千恵も竿を垂直に立たせ、美優樹が観察しやすいようにする。

「美優樹ちゃん。こうするともっと好く判るでしょ? これが宏のオチンチンの全貌よ♪」

 竿を上に向けた事で勃起した男性器の造形が好く判り、処女娘の視線を釘付けにする。

(なるほど。レディコミの懸賞にあるディルドーやバイブって、これを元にして作ったのね。確かに亀頭の形やくびれ具合なんかはそっくりだわ)

 雑誌に載っていた写真と現物を頭の中で比較していると、オモチャでは絶対にあり得ない現象に気付いた。

「大きく震える度に先っちょから透明な汁が湧き出して……これが俗に言う『ガマン汁』? 何だかプックリと染み出して……可愛い♪」

 すっかり生ペニスに慣れた美優樹は、顔を綻ばせると人差し指でカウパー汁を掬ってみる。

「すごいっ! こんなに糸を引いて……思った以上に男の人の愛液って、粘っこいんですね。それに……この亀頭って、思った以上に柔らかいし弾力もあるんですね」

 何度も鈴口に指を這わせ、溢れ出るカウパー氏腺液を指一本で亀頭全体に馴染ませる美優樹に、宏の快電流はボルテージを一気に上げた。

「うわっ! そんなに……触れるか触れないかの力加減で撫でないで! 焦れったくて……たまらないよ!」

 既に六人の美女と何度も身体を重ねている宏だが、処女の性的好奇心には敵わない。
 ごく軽く触れる微妙な力加減が焦らされる感覚に匹敵しているのだ。

「ふふ♪ それじゃ、もっと力を入れてみようか♪」

 千恵が頃合いとばかり、竿を握る手付きをしてみる。

「あ、これを……握る……んですね」

 思わずゴクリと喉を鳴らす美優樹。
 さっきから、勃起したペニス本体の感触を確かめたくて仕方なかったのだ。
 いくらレディコミや性具の画像を見ても、本物の男根の硬さや熱さ、手触りや匂い迄は伝わって来無い。

「こんなに血管が浮き出て……。ここもこんなに張り詰めて……痛くないんですか? それに、ココに一本の太い筋が走ってます」

 青黒い血管やカリ首、裏筋を人差し指でなぞる美優樹。
 素朴な疑問がゴスロリ少女から向けられるが、我慢を重ねる宏には焦らされている事に変わりはない。
 ペニスに残る疼きに腰を大きく捩ってしまう。

「美優樹ちゃんが触ってくれると、痛みが収まるんだっ。だから……早く握ってみて!」

 仰向けのまま腰を浮かせる宏に、千恵が微笑む。
 焦れったそうに顔を歪める幼馴染の姿が、何とも可笑しかったのだ。

「美優樹ちゃん。こうするのよ♪」

 姐御として、まず見本を見せる千恵。
 しかし、実際はこの張り詰めた肉棒を口一杯に頬張りたいのを我慢しているのだ。

「こうして手筒にして……親指と人差し指で作った輪で、この開いたカリ首を刺激するの♪」

 すっかりとガマン汁で濡れ光る肉棒に手を被せ、上下に扱く千恵。

「あぁ! 千恵姉っ、気持ち好いっ! うぁっ、はぁ~~~っ!」

 するとたちまち部屋にはクチュ、ニチャ……と粘着質な水音と宏の呻き声が響き出す。

「えっと、どの位の強さで握れば好いんですか?」

 鼻先数センチにまで顔をよせた美優樹に、千恵が応える。

「そうね、最初は軽く、優しく握るの。それから徐々に力を入れると宏は悦ぶわ。論より証拠、やってごらん♪」

 目元を赤らめた千恵が手を離すと同時に、こちらも顔を赤くした美優樹の白魚のような指が灼けた鉄棒に絡まった。

「あっ! 熱いっ! それに……すごく硬い……。これが……宏さんの……おちんちん……」

 竿の真ん中を握ったまま微動だにしない美優樹。
 念願叶い、文字通り宏を手中に収めたのだ。

(思った以上に熱くて……火傷しそうだわ……。それに……すっごく硬いっ! 骨じゃ無いのに、どうしてここまで硬くなるの? ……しかも、この灼けた太い鉄棒みたいなのが……美優樹の膣内(なか)に……挿るの!?)

 一瞬、恐怖の感情が湧き上がるが、それを見越したのか千恵が柔らかく微笑んだ。

「その熱さと硬さが、女に悦びを与えるの♥ まぁ、最初は怖く感じて当然よ。落ち着いたら、ゆっくりで好いから上下に動かしてごらん。怖さが可愛さに変わるから♪」

「あ、はい。やってみます。……こう、ですか?」

 実体験に基づくのだろう、千恵のアドバイスに従って手筒をそろりそろりと動かす美優樹。
 その手先を見つめる瞳はすっかりと潤み、ともすると泣いているようにも見える。

「そうそう、上手上手♪ ……そう、指の輪っかでカリ首を擦って……下から上に向けて扱く時に少し力を入れ、上から下へ動かす時は手を緩めるの」

 最初はおっかなびっくりだった美優樹の動きが、ガマン汁と千恵の垂らす唾液によって徐々に早く、巧くなる。

「時々、上下に動かしながら手首を回したり握る力加減を変えたりもするの。そんで、ガマン汁が湧き出したら指を伸ばして先っちょも撫でるの。触るのに慣れたら、今度はここを舐めてごらん。こんな風に♪」

 美優樹に手コキさせたまま、亀頭に唾液で滑(ぬめ)った舌先を寄せる千恵。

「あぅっ! うぁあっ!」

 途端、宏の呻き声と共に肉棒が美優樹の手筒を押し広げた。

「ね♪ ソフトクリームを舐める要領で舌を動かすと、こんな風に宏、悶えながら悦ぶのよ♪」

「凄い……。千恵さんが舐めた途端、さっきより太く、硬くなったわ……。なるほど、そんな風に手と口を同時に使って愛撫出来るんですね。……こう、かしら?」

 黒の衣装を纏い、頭にも黒のヘッドドレスを載せたゴスロリ美少女が顔を真っ赤に染めつつ、ピンク色の舌を張り詰めた男根に伸ばした。


                                            (つづく)

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