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 ライトHノベルの部屋  ライトHノベルの部屋  ライトHノベルの部屋
     ~ラブラブハーレムの世界へようこそ♪~


コンチェルト~夏穂(4) コンチェルト~夏穂(4) 美姉妹といっしょ♪~新婚編
  
「先生、いきます♥」

「宏……クン♥ うん、来て♥」

 唇を外した宏に、夏穂は満面の笑みで応えた。
 いよいよ想い人とひとつになるのだ。

(あぁ……夢みたい。宏クンと……身も心もひとつに結ばれるなんて)

 そう思った途端、出逢ってからの想いが胸から泉の如く溢れ出て来る。

 ――高校入学から三年間、宏の担任になった事。
 一年生ながら陸上部のエースになり、放課後のグランドを疾走する姿を目で追い続けた事。
 興味心から恋心にいつしか変わり、職権乱用ギリギリでスキンシップを楽しんだ事。
 卒業した宏がいつまでも心から離れなかった事。
 偶然が重なり、同居出来る幸運に恵まれた事。
 そして、想いが通じた嬉しさ――

 五年間の出来事が走馬燈のように浮かんでは消え、夏穂のまなじりに涙が浮かぶ。
 宏も愛する者を抱ける悦びに目を細め、腕に力を込める。

「先生……あぅ!?」

 正常位の形で腰を進めた宏だが、二人を挟むように陣取っていた美女姉妹(しまい)が手を伸ばして来た。
 どうやら、余りの純愛アツアツ振りと姉妹の存在をまるで忘れたかのような態度に黙っていられなくなったらしい。

「……ヒロクン。ボク達が見届け人になってあげる。……ボクが支えてあげるから、ヒロクンはそのまま押し進めていい」

 下腹部に平行になっていた宏のペニスを挿入角度に修正し、誘導するのは優だ。
 要らぬお節介(?)なのに、それを感じさせない爽やかな笑顔が優らしい。

「ホラ、入り口はココよ♪」

 片や、姉の晶は恩師の肉溝を逆V字に広げた指で割り開き、妹の誘導に合わせて処女の膣口を露わにする。
 切れ長の瞳は淫靡に濡れ光り、恩師に対する尊敬さなど微塵も感じさせない笑みを浮かべている。
 双子らしく息の合った、実に見事なコンビネーションだ。

「えっと……それじゃ、いきます!」

 優に導かれ、宏の肉槍が処女孔に宛がわれると従姉達の手が離れる。
 ここから先は文字通り、宏が道を開拓するのだ。

「先生、俺達が触れ合っているの、判ります?」

「うん。熱くて硬いのが……ウチの入り口にいるのが判る。ヤケドしそうな位だわ」

「先生のもぬかるんでて……このまま吸い込まれそうです」

 宏はペニスから伝わる快感に身を震わせ、腰を徐々に押し進める。

「あぁ……宏クンが……挿(はい)って来る……」

 処女膜を押し広げられる圧迫感に、夏穂はつい眉間に皺を寄せてしまう。

「先生、痛いですか? 何だったら……」

「ううん、大丈夫! 大丈夫だから……ウチを宏クンのモノにして」

「モノだなんて、とんでも無い! 夏穂先生は俺の大事な女性(ひと)です!」

「……宏クン♥」

 胸をときめかせた夏穂は両腕を宏の背中にそっと回す。
 愛される悦びに、股間からの鈍痛が少しは和らいだ気がした。

「宏クン。いいよ。ウチの処女、宏クンにあげる。……やっと、宏クンに上げられる♥」

「先生の大切な処女、俺が貰います!」

 宏の言葉が終わらないうちに、夏穂は薄肉が引き延ばされるかのような痛みを感じた。
 張り詰めた亀頭が処女膜を押し広げるにつれ、それまでの快感が消え失せて圧迫感と痛みが増してゆく。

「うぐぅっ! 挿(はい)って来てる! 宏クンが……ウチの膣内(なか)に……!」

「くっ……! き、きついっ! 入り口が狭くて……挿(はい)らない……」

「うぅうっ……、い、痛いっ!」

 夏穂は灼けた鉄棒が胎内に分け入る感覚に全身が強張り、知らず知らずのうちに爪を立てていた。
 宏もまた、亀頭の中程が強力な輪ゴムで縛られているかのような痛痒さに身動きが取れなくなった。
 処女特有の締め付けが強烈な性電気となって百戦錬磨のペニスを痺れさせ、これまでにない快感の大津波となっていとも簡単に射精へと導いて来るのだ。
 その刺激で張り詰めた亀頭が更に強靱な鉄槍と化し、年代物(?)の処女膜に、より一層食い込んでゆく。
 結果、更に進入を妨げる要因となってしまう。
 宏は予想以上の抵抗感と甘美な刺激に腰が止まり、進退窮まってしまった。

「あらら。身体が熟しているからすんなり挿(はい)るかと思ったけど、案外手こずってるわね。ヒロのサイズと先生のサイズが違い過ぎる……のかしらん? それとも、ヒロの強度が足りない……とか?」

「……うん。見た目と違って相当堅守な処女膜みたい。こ~んなにも引き伸ばされているのに破れないなんて……年相応に硬くなってるのかも。蛙を呑み込む蛇みたく膣口が広がっているから大丈夫だと思ったけど、案外手強いね。……これぞ鋼鉄天使・夏穂。な~んちゃって♪」

 脂汗を流す夏穂と宏を尻目に、興味津々と結合部を覗き込む晶と優。
 その表情は神聖な儀式を見るそれでは無く、お菓子を頬張りながらノンビリと娯楽映画を見る顔付きだ。

「ホレ、ヒロ。ぐずってると先生が辛いわよ。一気に犯(や)っちゃいなさい♪」

「……ヒロクン。処女膜を味わいたい気持ちも判るけど、余り時間を掛け過ぎるのも好くない」

「あ、晶姉……優姉。何しに、ここにいるのさ」

 恩師の初体験を仕組んだ張本人なのに、まるで他人事(ひとごと)のような態度を取る従姉に宏は思いっ切り苦笑してしまう。
 そんな三人の言葉が遠くで聞こえる夏穂には、想い人と結ばれる甘い雰囲気を味わうどころでは無かった。

(うぅ……メチャ痛いっ! は、破瓜の痛みって……こんなにも辛いものなの? まるで灼けた金槌を無理矢理押し込められるみたいで……針で刺されたようだとか一瞬で済んだとかスルリと挿(はい)ったとか言ってた生徒達の言葉って……ウソだったの?)

 現在の教え子達から漏れ聞こえて来る初体験談話を思い浮かべるが、聞くと実体験とでは雲泥の差だ。
 宏が身じろぎする度に股間から激痛が走り、息が詰まって呼吸も荒く、浅くなってしまう。

「んうぅ……う゛ぅ~~~」

 そして苦痛に顔を歪めているうちに、いつしか呻き声が漏れてしまう。

「先生、辛いようなら一旦退き……」

 眉間に深い皺の寄る夏穂に、宏は恩師からの一時退却を決意する。
 このまま長引けば恩師を苦しめるだけだし、自分も暴発の恐れがあると危惧したのだ。
 それに、本懐を遂げる前に果ててしまっては男の沽券に係わるし、ギャラリーと化した従姉からも一生、何か言われ続けそうだ。
 と、戦略的撤退する宏の腰に夏穂の両足が巻き付いた。

「か、構わないから、一気に来て! 痛くてもガマンするから……このまま離れる方が辛いの!」

 しかし、涙目で見上げる恩師の愛らしさといじらしさが宏の肉棒を更に太く、硬くするハメになった。

「あ゛う゛っ!」

「先生、やっぱり……」

「いいのっ! 女になる試練だから……どんなに痛くても耐えてみせるからっ!」

「先生……判りました。んちゅっ♥」

「んふん……宏クン……♥」

 夏穂は呻き声を封印する為、宏が唇を重ねた瞬間に舌を挿し込む。
 舌全体で宏の熱さを感じつつ、何とか呼吸を整えようと試みる。
 意識してゆっくり、深く呼吸する。
 すると、股間からの激痛が多少和らいだ。

(あ……、遂に……)

 強張っていた身体から力が抜けた瞬間、肉裂に掛かる圧力が一気に増し、夏穂は本能的に破瓜の瞬間を意識した。

「先生、いきますっ」

 凛とした掛け声と共に、三十年間守り続けた純潔の証が宏に渡る。
 身体を引き裂かれるかのような激痛の中、夏穂は自分と宏との距離がゼロになった嬉しさに涙し
た――。


     ☆     ☆     ☆


「あれ? 夏穂姉さんは? まだ帰ってないの?」

 夕飯前の一時(いっとき)。
 帰宅し、着替えを済ませた飛鳥はリビングのソファーに腰を下ろしつつ対面に座る妹に声を掛けた。

「えっ!? 夏穂お姉さん、いないの?」

 飛鳥の三歳年下の妹も今気付いたとばかり、手にした雑誌から顔を上げてキョロキョロと辺りを見渡す。
 キッチンでは若菜と千恵、真奈美が足取り軽く動き回り、ダイニングテーブルではほのかが新聞を広げていた。

「ホントだ。そう言えば美優樹、帰ってから夏穂お姉さんの姿、見てないわ」

「玄関の靴箱に、いつも履いてる靴があったから、てっきり帰ってるもんだと思ったけど……どこ行ったんだろ?」

「それじゃ、お風呂じゃないの?」

「あ、そっか。夏穂姉さん部活で汗掻くから、帰るとすぐにお風呂に直行するもんね-」

 煌めく栗色のツインテールを揺らして顔を見合わせている様は、傍から見れば鏡に語り掛けているかと思う程、二人は寸分違わぬ顔と髪型をしている。
 もっとも、片方は黒のニーソと赤のミニスカにオフホワイトのブラウスを纏い、もう片方は黒を基調としたゴスロリドレスとヘッドドレスを纏っているので、傍から見る分には全くの別人だ。
 そんなツインテール姉妹の会話が耳に届いたのだろう、紫掛かった黒髪をポニーテールに纏め、ピンク色のリボンで頭の高い位置で縛った千恵がダイニングテーブルに十人分の箸を手際良く並べながら声を掛けた。

「夏穂先生なら、晶さんの部屋にいるわよ。なんでも大事な話があるとかで、二人して人払いしてったわよ」

「へ~~~、大事な話、ねぇ。あの夏穂姉さんが人様に相談事なんて……明日は大雪になるかも」

「人払い? ……晶さんと?」

 叔母を茶化した飛鳥が膝を叩いて大笑いすれば、妹の美優樹も同じタイミングで切れ長の瞳を見開く。
 流石に美優樹の歳の数だけ一緒にいるだけあって、息もぴったりだ。
 但し、飛鳥は単純に珍しがっているだけだが、美優樹には千恵の言葉が引っ掛かっていた。

(筆頭妻の晶さんと……密談? 他の奥さん達や美優樹達には聞かれたくない、聞かせたくない、って事よね。もしかしたら……宏さん絡みかしら? 夏穂お姉さんが宏さんに告白する段取りを頼んでいる……とか?)

 人並み外れた頭脳に加えて直感力もある分、ただ事では無い匂いを嗅ぎ付ける美優樹。

(もしかして、美優樹と同じ事を考え、実行しようとしているのかも。……まぁ、それはそれで構わないけど……果たして美優樹達と一緒に宏さんを攻略しよう、と言ってた夏穂お姉さんが秘密裏に抜け駆けするようなマネ、するかしら?)

 自分の抜け駆けはちゃっかりとスルーし、考え込む美優樹。
 しかし、それをそのまま口にする訳にはいかない。
 自分と宏との関係を内緒にしているので藪蛇の恐れがあり、迂闊な事は言えないのだ。

(下手な事を口にすると、ほのかさんや千恵さんに勘付かれちゃう恐れがあるわね、このお二人は鋭い所があるし。 となると、ここはお姉ちゃんに話を合わせて知らんぷりを決めておくのがベストね)

 リビングとダイニングに集う面々を見渡し、瞬きする間に考えを巡らせた美優樹は姉に合わせて苦笑し、

「ホント。あしたは大雪、かもね」

 などと、肩を竦めつつおどけ、みんなの笑いを誘う。
 しかしまさかこの時、その叔母が風呂場で宏と身体を重ね、破瓜の血を流している真っ最中などとは、読みの鋭さを持ってしても想像すら出来無かった。


     ☆     ☆     ☆


「あぁ……宏クンで満たされてる……」

 子宮に注がれた精液の熱さと溢れんばかりに注がれた量に、夏穂は天にも昇る嬉しさの中にいた。
 お腹の奥がじんわりと温かく、女に生まれて心から好かったと思う夏穂。
 絶頂には遠く及ばなかったものの、宏からの想いをたくさん受け取った嬉しさで今も残る破瓜の激痛も和らぐと言うものだ。
 シャワーの温水とは別の、内腿に滴る精液の温かさと鮮血に夏穂は初体験の余韻に浸っていた。

「さて、無事にコトは済んだし、あたしと先生は先に出るわね。ヒロと先生が一緒にいるところを見られたらマズいらしいからさ」

 半ば逆上せた夏穂の耳に、晶の微笑みとも苦笑とも取れる声が届いた。

(あ、そうか。ウチは晶ちゃんの部屋にいる事になってたっけ)

 ここに来る前、晶が千恵達に話し合いがあるからと人払いを掛けていたのを思い出す。

「あんた達は、あと十分位したら出て好いわよ。それまでは仲良くしてなさいな♪」

 脱衣所に誰もいない事を確認した晶はドアを開け、振り向き様に念押しする。
 今回の事はみんなに内密にするよう、恩師から懇願されているのだ。

「それじゃ宏クン、お先にね」

「あ、はい……うわっ!?」

 夏穂は押し倒された宏とその腰に跨る優に背を向け、晶に続いて風呂場を後にする。

(あ……。痛みを庇って歩く、この姿って……)

 この時、自然と「がに股」になるのを初めて実感した。

 ――股間に残る鈍痛と、いつまでもモノが挟まっているかのような違和感――

 生徒達の体験談と一致した事に、自然と笑みが零れてしまう。

(そっか。これが……初体験(はじめて)の後の痛み、って訳ね)

 夏穂は改めて宏に抱かれた嬉しさに身を震わせた。


     ☆     ☆     ☆


「先生、好かったですね。想いが叶って」

 脱衣所に上がった晶はまず廊下の気配を窺い、誰もいない事を確認してから口を開いた。

「最初、先生があたしの部屋に来た時は何事かと思いましたよ。突然、訳の判らんヘンな事を言い出すんですもの」

 バスタオルで身体を拭きつつ、相好を崩す晶。

「あはは~、まぁ、このお屋敷では宏クンの次に晶ちゃんが頼りになると思ったからね」

 照れ臭そうに頬を掻く恩師に、晶は瞳を細める。

「でも、先生から頼りにされて非常に嬉しかったです。生徒だった頃では考えられなかった事ですし」

 相手が誰であれ人から頼られる事に昂揚感を持つ晶にとって、恩師から頭を下げられるなど今迄にない昂ぶりを覚えたのだ。
 晶は、ほんの二時間程前の出来事を振り返る。


     ※     ※     ※


「晶ちゃん。ウチをお嫁さんにして!」

「はい~? なんですと~? 」

 週末の金曜日なのに珍しく早くに仕事が終わり、定時より二時間程早く帰宅した晶は自室に入るなり恩師の襲撃を受けた。
 どうやら晶の帰宅を今か今かと待ち受けていたらしい。
 当の本人は鼻息荒く、瞳も血走っている。

「あの、先生? 何をそんなに興奮してます?」

「だからっ! ウチがお嫁さんになるのよ! 今日、これから!」

 意味不明な言葉に、晶は手早く着替えると座布団を勧めながら瞳を眇めて目の前の元・担任を見つめ返す。
 この教師はナニを言ってナニをしでかす気なのだろう――誰が見ても判る、疑問と疑惑に満ちた目で。
 そして自分も座布団を引っ張り出し、恩師の正面に腰を下ろす。

「えっと……先生。あたしは先生を嫁に貰う気は、これっぽちもありませんが?」

 親指と人差し指で僅かな隙間を作って見せながら、それでも言わずにはいられなかった。

「あたしにはヒロがいますし、第一、百合(そっち)の気は毛頭ありませんっ」

 少し強めに言ったところで、目の前の恩師は今気付いたとばかり目を見開き、すぐに破顔した。

「あ~~~、違う違う。ウチが言いたいのは、今すぐ宏クンのお嫁さんになりたい、って事よ。その段取りを晶ちゃんに手伝って欲しい、って事なのよ」

 詳しく聞くと、夏穂は職員室で練りに練り上げた宏攻略プランを実行すべく勤め先の高校から速攻で戻り(部活は顧問に任せて早退したらしい)、晶の帰宅を待って強襲したのだとか。

「もう、黙って見ているだけじゃ嫌なの。好きな男性(ひと)が手の届く所にいるのに、ずっと触れる事が出来無いなんて蛇の生殺しもいいとこだわ。遠くから宏クンの笑顔を見ているだけじゃ……女として……もう我慢出来無いの!」

 真摯な眼差しで訴えられ、晶は何も言えなくなった。
 恩師が胸を痛める想いは、自分達も経験した想いだからだ。

「あの、つまり先生は、今すぐにでもヒロに嫁ぎたい、あたしらと同じ妻になりたい、って事ですか?」

 恩師の切ない想いは伝わったが、明確な意志でちゃんとした言葉で聞きたい晶は念の為、確認してみる。
 夏穂も晶の考えが判ったのだろう、大きく頷きつつ口を開いた。

「そうよ。ウチは宏クンのお嫁さんになりたい! 晶ちゃん達と同じ立場で宏クンの隣に立ちたいの! ウチは宏クンが好き! 大好き! ずっと愛してる! 出逢ってからずっと、宏クンの事を想ってたの!!」

 最後は叫ぶようになっていた。
 おまけに、目尻に涙まで浮かべている。
 その姿は三十路と言えど、恋に身を焦がすひとりのか弱い女の姿だった。

「夏穂先生、そこまでヒロの事を……」

 晶は同じ女として恩師の心情が痛い程判った。
 この想いは胸にしまっておく期間が長ければ長い程、切なさと痛みを伴ってしまう事も。
 しかも想い人と同居する事で想いはより一層強く深くなり、そして限界値に来てしまったのだろう。

「先生の心中は判りました。で、具体的にどうしたいんです? あたしに言うよか直接にヒロに告白したらどうです?」

「だから~、それが出来れば何も苦労はしないわよっ。いきなり元・担任から面と向かって告白されたら、宏クンだって戸惑うでしょ? それを回避しつつ宏クンと結ばれたいのよ」

 飛鳥と美優樹と一緒に宏を落とそう、などと言っていた事実を伏せる夏穂。
 今は姪っ子の恋愛成就よりも、自分の恋で頭が一杯なのだ。
 それ程テンパっている、と言えるのかもしれない。

「まぁ、普通は戸惑うでしょうねぇ。でも、懐の広いヒロなら問題無く受け入れてくれると思いますが?」

(そうなのよねー。ヒロも先生のコト昔っから好いてたし、同居を機にあわよくば……な~んて考えてる節があるし)

 この従弟は高校に入学してすぐ夏穂先生に懐いて(?)いたし慕ってもいたから、逆プロポーズされれば即、首肯するだろう。

(まぁ、あたし達も先生は好きだし、ヒロがそうしたいなら奥さん仲間になっても構わないけどね。……でも)

 ただ、晶にはひとつの懸念があった。

(年長者である先生が輿入れすると、今現在、妻の座の頂点にいるあたしの地位が危うくなるのよねー)

 頭では夏穂の嫁入りに賛成するものの、心の奥底では筆頭妻の地位を脅かす女をすんなりと受け入れられないのだ。
 しかし、そんな晶の心中を予想していたのか、この恩師は殊更謙虚な言葉を投げ掛けた。

「もちろん、ウチは七番目の……末席の奥さんで構わないから。年功序列を全面に押し出し、晶ちゃんを差し置いて奥さん達のトップに立つとか宏クンを尻に敷くとか、そーゆー考えは無いから安心して♪ ウチは、宏クンの隣にいられるだけで好いの♥」

 縋るような、でもゴマすり要素満載の瞳で見つめられ、晶は一瞬、答えに窮してしまう。

(美味しい話には必ず裏がある……のは世間の常識だけど、な~んか裏に何かありそうな気がして……怪しいわ)

 恩師からの懇願にも係わらず、素直に首を縦に振れない晶。
 途中から夏穂の表情がニヤケて(?)見えるのは――気のせいだろうか。
 いつまでも逡巡する晶を見越したのか、夏穂は秘密兵器とも言える台詞を吐いた。

「だから、奥さん達の『実質的リーダー』であり、『名実共に筆頭妻』の晶ちゃんに、是非とも協力して欲しいのよ~。あと、『知力や人徳に溢れた』晶ちゃんよりは若干劣るけど、優ちゃんにも協力して貰えたら、これはもう百人力なんだけどな~♪」

 ――褒め殺し――

 そんな言葉が晶の脳内を駆け巡ったが、恩師であり現職の教員から事実(?)を明確に示されて悪い気はしない。
 それに元・担任からのお墨付きを貰った以上、千恵や若菜、ほのかに真奈美が年長者の意見を無視してまで筆頭妻を名乗る事はまず無いだろう。
 それに、夏穂自身も末席で好いと言っている。
 とすれば、自分が生涯、妻のヒエラルキーの頂点に立ち、君臨し続けるのが事実上決定した事になる。

(この話、乗っても好いわね。先生の告白がどっちに転んでもあたしの立ち位置は変わらないし。それに、恩師から頭を下げられるのって、思った以上に……か・い・か・ん♪ だわ)

 瞬き一回する間にここまで考えを巡らせた晶は居住まいを正しながら内心ほくそ笑み、顔は真面目なまま三つ指付いて頭を深く下げた。

「謹んでそのお話、お受け致します。ヒロと先生を結びつけるお役目、しかと承りました」

 かくして、アシスタントに優を引き込んだ晶主導によるビッグイベントが短時間で準備・開催されたのだった。


     ※     ※     ※


「何はともあれ、全て上手くいって好かったですね」

 足音を消し、素早く廊下を横切った晶は自室で夏穂と共に一息付いていた。
 二人一緒にドライヤーで濡れた髪を乾かしつつ、晶は一連の出来事を振り返る。

「先生が提案した優とヒロを一緒にお風呂に入れる作戦(アイデア)が当たりましたね。ヒロの背中を流すのはいつもの事だから誰も疑わないし、そこに人払いしたあたし達が混ざっても誰も気付かないし♪」

 恩師のアイデアを元に僅か数分で段取りを決め、実行して成功を収めた晶は得意満面になって胸を張る。
 長い髪を背中に優雅に払い、まさに自画自賛状態だ。
 そんな鼻高々な元・教え子に、夏穂は今なおドキドキしている胸の高まりを抑えつつ小さく頭を下げた。

「宏クンと結ばれたのも、みんな晶ちゃんのお陰よ! 本当にありがとう♪」

 眩しげに晶を見る夏穂の視線は、社会の荒波の中で立派に成長を遂げた生徒を見る温かな教師の目だ。

「あとで優ちゃんにも改めてお礼を言っとかないと。……いやぁ、それにしても見事にハマったわね。我ながら天晴れだわ♪」

 こちらも意気揚々と顔を綻ばせ、Dカップの胸(八十四センチだ)を大きく張る夏穂。
 そんな恩師の言葉に、ドライヤーを片付けた晶が小さく首を傾げた。

「先生? 何がハマったんです? ……そう言えば、部屋へ来た時に職員室で考えてた事があったとか無かったとか……言ってた覚えがありますが、それと何か関係が?」

「あはははは♪ いやね、実は――」

 想い人と結ばれ、人生最大の幸福感に逆上せ上がっていた夏穂は、職員室で練り上げた晶と優(教え子)の利用法をつい、バラしてしまう。

「口が堅く、義理堅い優ちゃんならウチと宏クンとの関係をみんなに内緒にしてくれるし、プライドの高い晶ちゃんには褒めちぎって晴れの舞台を作って貰い、その上で筆頭妻でもある晶ちゃんが宏クンとウチの関係を容認すれば千恵ちゃん達も反対はしないだろうと考えたのよ~♪」

 そして笑顔のまま、国語の教師らしく諺を交えて堂々と曰(のたま)った。

「これぞ、まさに『将を射んと欲すれば先ず馬を射よ』作戦よっ!」

「へ~、そうだったんですか…………………………………………って、あたしゃ馬ですかっ!!」

 一瞬で柳眉と髪を逆立て、眉間に深い谷を刻んだ晶の怒濤のツっ込みが屋敷を揺るがした。


                                            (つづく)

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