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     ~ラブラブハーレムの世界へようこそ♪~


コンチェルト~飛鳥(1) コンチェルト~飛鳥(1) 美姉妹といっしょ♪~新婚編
 
 夏穂が宏と結ばれた翌日の土曜日。

「ねぇ、夏穂姉さん? 昨日からやたらとテンション高いけど、何かあった? 給料でも上がったの?」

 昨夜からず~っと気分ルンルンな叔母に、飛鳥は昼食の席で首を傾げつつ尋ねた。
 何しろ事ある毎に締まりのない蕩けきった笑顔を浮かべ、今日の午前中など鼻歌交じりに布団を干したりスキップで掃除したりしていたのだ。
 今もチャーハンを頬張りつつ、目元がだらしなく垂れ下がっている。
 そんな困惑気味の飛鳥に向かい、幸せの絶頂に駆け上って浮かれまくっている夏穂は余りの嬉しさに、つい口を割ってしまった。

「でへへへ~♪ ウチ、宏クンとエッチしちゃった♥」


     ☆     ☆     ☆


 夏穂の仰天告白(自白?)に、屋敷は蜂の巣を突(つつ)いたかのような騒ぎとなった。

「ほ~~~、下宿した恩師を手籠めにするなんざ、流石、我が夫だな。天晴れ天晴れ♪ ん? 手籠めじゃなくて夏穂さんから迫られたって? なんだ、もう尻に敷かれているのか?」

「宏君ったら、やっぱり夏穂さんと相思相愛だったのね。現役教師さんと元・生徒さんだなんて、萌えるわ~♪」

「宏ちゃんのいけずぅ~! どうして私も交ぜてくれなかったのよぉ~~~っ!」

 時々、怪しげな日本語を使い廻すほのかが大口開けて笑えば真奈美も予想通りと大きく頷き、一大イベントに参加出来無かった若菜が漆黒の長い髪を振り乱して地団駄を踏む。
 そんな夏穂受け入れ派が手放しで喜んでいる一方。

「か……夏穂先生。あたし達の苦労って……」

「……………………」

 脳天気女教師の台詞に額を押さえて天を仰いだのは晶だ。
 恩師の意に沿って宏との逢瀬を内密にセッティングした意味はなんだったのだろうかと脱力してしまう。
 優も同じ思いなのか、レンゲを持ったまま呆けるよりも唖然として浮かれた女教師を見つめている。

「か、夏穂先生もっ!? それじゃ、み……っ!!」

 片や、ポニーテールを跳ね上げて驚愕した千恵は「美優樹ちゃんと一緒じゃない!」と言う言葉を寸前で呑み込む。
 美優樹からのお願い事――宏さんとの事はまだ内緒にしてて下さい――が頭を過ぎったのだ。

「あ~~~えっと……その~~~」

 そして片方の当事者である宏も中華スープのお椀とレンゲを持ったまま、恩師と妻達を交互にチラチラと眺めている。
 夏穂の口から「内緒ね」、などと念押しされたのに恩師自ら暴露してしまい、どうしたものかと戸惑っているのだ。
 そして、一足早く宏と結ばれた美優樹は。

「夏穂お姉さんってば、いつの間に宏さんと……。ずっと口先ばかりでのほほんと構えてたのに、やる(犯(や)る?)時はやるのねー。……きっと、宏さんへの想いが溢れちゃったんだろうな」

 叔母の意外な行動力に目を見張っていた。
 これまでは宏を落とすだの何だの言っていたが全て希望的観測だっただけに、人知れず実力行使に出た勇気に驚いたのだ。
 もっとも、美優樹自身も抜け駆けしたので行為自体を責めはしない。
 むしろ、叔母と一緒に宏の妻の座に就けた事を内心、喜んでいた。
 いくら想い人と結ばれたと言っても、夏穂達に内緒にしたままで心苦しい部分が少しはあったのだ。

「となると、お姉ちゃんは……」

 その心苦しく思っていた最大の要因である飛鳥を見ると……。

「……え゛? 宏先輩と…………エッチした? ………………ゐ゛ヰっ!?」

 手にしたレンゲをポロリと落とし、目と口をポカンと開けたまま震える指先で宏と叔母を交互に指しながら全身真っ白になっていた。
 傍から見ると、まるで氷像の如く固まっている。

「さもありなん。結局は夏穂お姉さんにも抜け駆けされちゃったもんねー」

 己の事はちゃっかりとスルーする美優樹。
 姉の宏に対する想いを誰よりも長く深く知っているだけに一瞬同情するが、最早どうする事も出来無い。
 結局は姉自身の問題だからだ。

「こうなる前にさっさと告白すれば好かったのよ。下宿して宏さんとの距離が一気に縮まったんだから、これを活かさない手は無いのに……」

 目の前で鳶に油揚を攫われた姉に、容赦無い感想を呟く美優樹。
 その内容はゴスロリドレスを纏った美少女とは到底思えない辛辣なものだ。

「はてさて、理性を失ったお姉ちゃんはどう出るかしら? 天の邪鬼的な思考回路をショートさせたお姉ちゃんが暴れなければ好いけど」

 妹として、むしろこの後の展開が気になった。
 形好い眉を顰めて思案に暮れる美少女に、その本人から突然声が掛かった。

「美優樹! あんたもそう思うでしょっ!?」

 姉から肩を揺すられるものの一瞬状況が掴めず、辺りを見回す美優樹。
 ひとり考え込んでいるうちに、事態が動き出していたようだ。
 場の雰囲気からすると、姉が叔母に向かって自分達に内緒で宏にアタックした事を猛烈に責めていたらしい。

「あ……えっと、その……」

 しかし、ここで下手に姉の意見に乗ってしまうと、後々もっとややこしくなる事は火を見るよりも明らかだ。
 何せ、自分は既に宏と結ばれているのだから。

「だったら……」

 瞬き一回する間に考えを纏めた美優樹は口元を引き締め、腹を括った。

「えっと、お姉ちゃん。実は美優樹も宏さんと……」

 白のレースがふんだんに飾られた黒のゴスロリドレスとヘッドドレス。
 肌理細やかな肌の白さと、ツインテールに結われた栗色の艶やかな髪が柔らかく揺れるその様は、まさにアンティークドールそのもの。
 そんな美少女から発せられた内容に、屋敷は再び激震に見舞われた。

「どっ……どうしてっ! 何で内緒にすんのよっ! 私に黙って宏先輩と、え……エッ……するなんて卑怯よ!」

 エッチの部分は恥ずかしさから小声になり、口の中で呟く飛鳥。
 ひとりだけ椅子から勢い良く立ち上がり、指を突きつけて糾弾する少女に、叔母の夏穂は残りのチャーハンをパクつきながら平然と曰(のたま)った。

「あら? 好きな男性(ひと)に告白するのに飛鳥ちゃんの許可がいるの? 好きな男性(ひと)と結ばれるのに飛鳥ちゃんの許しがいるの?」

 不遜に映る叔母の態度に、怒りの導火線が一気に縮んだ飛鳥も負けずに言い返す。

「だって上京前に、一緒に宏先輩を攻略しようって言ってたじゃないっ! なのに、何で内緒に事を進めるのよっ!」

「うん、言ったわよ。でも、約束した訳じゃ無いでしょ?」

「ねえ、お姉ちゃん。だったら美優樹達と一緒に宏さんに告白して、三人一緒に結ばれた方が好かった?」

「う゛っ! そ、それは……っ!!」

 二人からの指摘に言葉を詰まらせる飛鳥。
 たとえその通りだとしても、恥ずかしさや照れ臭さで結ばれるどころか告白さえ無理だろう。
 その事が誰よりも判っているだけに反論出来無い。

「でもっ……う゛ぅ……………………」

 結果、感情的な唸り声を上げて押し黙る飛鳥。
 片や、平然とした夏穂と理路整然とした美優樹。
 宏と六人の既定妻達も固唾を呑んでそんな三人を見守っている。
 『みんな仲好く♥』がモットーの若菜も飛鳥を擁護したくてウズウズしているが、今は我慢して参戦を控えている。
 これは叔母と姪の問題でもあるので、みんな安易に立ち入れないのだ。
 どれ位時間が過ぎただろうか、低く唸っていた飛鳥が遂にキレた。

「バカぁっ! もう知らないっ!!」

 長く垂らしたツインテールを真横になびかせ、食事もそのままに自室へ駆け込む飛鳥。
 宏には、その顔は怒りよりも泣いているかのように見えた――。


     ☆     ☆     ☆


 飛鳥が冷戦(?)状態に陥ってから一週間。

 ――おはようございます、おやすみなさい、行って来ます、ただいま帰りました、いただきます、ごちそうさまでした――

 朝晩と食事、登下校の挨拶以外、飛鳥は殆ど口を利かなくなってしまった。
 弾けるような眩しい笑顔と軽やかな笑い声を忘れてしまったのではないか、とさえ思われた。
 ただ、大学(がっこう)では普段通りに友人達と接している(美優樹談)ものの、帰宅後は食事と風呂以外は部屋に籠もりがちになり、感情も表わさず無表情のまま下宿生活を続けているのだ。
 宏達から話しを振っても目も合わさずに最小限の言葉――はい、いいえ――で応えるだけで、飛鳥から話し掛ける事は一切無かった。

「宏ちゃん~、飛鳥ちゃんが可哀想だよ~、何とかしてあげようよ~」

 リビングで顔を揃えるや否や、飛鳥の痛々しさに見るに見かねた若菜が宏の手を取ると形好い眉を八の字に下げて懇願し、心配気なほのかと真奈美も反対側の手と腕を取って大きく頷く。
 土曜の午前中にも係わらず、みんな飛鳥を心配して自然とリビングに集まって来ていた。
 本来、この時間は自分の部屋を掃除したり廊下や風呂場の掃除を手伝ったりしている時間帯なのだ。

「何とか……って言ったって、こんな状況で何か言っても、かえって逆効果なような気もするし……」

「いいのよ、宏クン、放って置いて。あの娘(こ)が勝手に拗ねて自分の殻に閉じ籠もっているだけなんだから、無視して構わないわよ~」

 騒ぎの発端を作った夏穂が読み掛けの雑誌を丸めて左右に振り、教師とは思えない台詞を吐いて姪を突き放す。
 しかも赤地に白のラインの入ったジャージ姿で居丈高に構えているので、まるでドラマに映る陰険な体育教師のようだ。
 しかし、晶にはソファーでふんぞり返る恩師の真意を汲み取っていた。

「つまり、飛鳥ちゃんからも歩み寄らないと恋は成就しない、って事よ。まぁ、どうやって水を飲ますかじゃないけど、あたしらもこのまま手をこまねいている訳にもいかないし。……あの娘、結構頑固そうだけどね」

 的を射た解説に、なるほどと頷く一同。
 敢えて突き放した夏穂もバレたか、と小さく肩を竦め、元・教え子の鋭い観察眼に苦笑いする。
 同時に、高校の頃より人間的、性格的に丸くなっている晶に安心もする。
 高校時代の晶ならば、放って置いたままとうの昔に切り捨てていただろう。

「ホント、お姉ちゃんってば頑固で意気地無しなんだから。こんな事で宏さんに嫌われたら元も子もないでしょうに」

 美優樹も姉と一緒に登下校し(会話も無く、黙って後ろを付いていくだけだが)、ベッドや机が隣り合っている分、もろに不機嫌オーラを浴び続けているので好い加減辟易し、どうにかしたいとは思っている。
 しかし、自分も夏穂と同じ立場――しかも真っ先に抜け駆けした張本人なので、何を言っても聞き入れて貰えないのだ。

「すみません、宏さん。お姉ちゃんの所為でお屋敷の雰囲気を悪くしてしまって……本当にごめんなさい」

 沈んだ顔で髪が床に着くほど頭を下げるゴスロリ美少女に、屋敷の面々(除く夏穂)は大きく首を横に振る。

「いやいや、気にしないで! むしろ、俺も責任の一端はある訳だし」

「いいえ、宏さんは少しも悪くありません。夏穂お姉さんと美優樹の想いを受け取って下さっただけですから。悪いのは自分の気持ちを素直に表わし、行動出来無いお姉ちゃんです」

 これこそ事態の核心なのだが、当の本人は聞く耳持たないので説得のしようもない。

「まぁ、自分の思い通りにならなかったからって拗ねてるようじゃ、恋なんて無理無理。百年早いわよ」

 ソファーの上で長い足を組み替え、鼻であしらう夏穂。
 まるで『飛鳥vs夏穂』の様相を呈し始め、心底困り果てる宏以下六人の妻達とゴスロリ美少女の美優樹。

「……………………」

 明るい陽射しが降り注ぐリビングに重苦しい空気が漂い始めた、その時。

 ♪ ピンポ~ン、ピンポ~ン、ピンポ~ン~♪

 膠着状態を打ち破るかの如く、何とものんびりとした電子音が屋敷に響いた。
 宏の屋敷では、門にセットした赤外センサーにより誰かが敷地に入るとチャイムが鳴り、インターホンのモニター画面に来客者が映るシステムを採っている。
 果たして、すぐに呼び鈴が鳴った。

「はい、どちら様で……て、えぇっ!?」

 カメラ付きドアホンに対応した千恵が驚きの声を上げる。
 そこには、屋敷の誰もが知る人物がボストンバッグ片手に微笑んでいる姿が映し出されていた。


                                            (つづく)


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コンチェルト~飛鳥(2) コンチェルト~飛鳥(2) 美姉妹といっしょ♪~新婚編
 
「お、お母さんっ! ホントにっ!?」

「お母さん?」

「あら、姉さん。どーしたの、こんな辺鄙なトコへ?」

 千恵に先導され、リビングに現われたのはツインテール姉妹の母であり、夏穂の姉である多恵子、本人だった。
 急遽、部屋から呼ばれた飛鳥は驚きの余り目を剥いて固まり、美優樹は不思議そうに首を傾げ、夏穂は下宿人の立場を忘れて尊大に構え(晶から殺気の籠もった視線を向けられた)、身内を迎える。

「宏さん、ご無沙汰しております。皆様も、お久し振りでございます」

「多恵子さん、ご無沙汰してます。……と言っても約ふた月振り、ですが。でも、急に来られたんでビックリしました」

 慌てて立ち上がった宏は深く腰を折って礼を返し、満面の笑みを向けてソファーセットの上座に案内する。
 なにせ、下宿している恩師の夏穂よりも人生経験が豊富で長いのだ。
 いくら自分が大家の立場であっても、人としてはまだまだ若輩なので敬意を払うのは当然だった。

「言って戴ければ、東京駅まで迎えに出ましたのに」

 晶の言葉を皮切りにほのかや若菜、優も立ち上がると丁寧にお辞儀し、それぞれ二言三言、挨拶を交わしてゆく。
 千恵はその間に手際良くお茶を淹れ、真奈美はお茶菓子を小皿に移して多恵子の前にそっと置く。
 そんな息の合ったコンビネーションに多恵子は目を細めて小さく頭を下げ、晶に向き直る。

「いえいえ、それには及びませんわ。これはわたくしが勝手に行動したまでの事。宏さん達のお手間を取らせる訳には参りません」

 あくまで低姿勢なまま、軽やかに笑う多恵子。
 その落ち着いた態度と丁寧な言い回しは三十六歳の女性として相応しいが、外見はまるで違う。
 なにせ、身長は千恵より低い百四十八センチで、おまけに顔付きも十代のそれ。
 上背が百八十センチある娘の飛鳥や美優樹と並ぶと誰もが三姉妹の末っ子だと断言してしまう程で、とても子供が二人いるようには見えない。
 しかも、今日は長い黒髪を三つ編みにして一本に纏め、着ている衣装も薄ピンクの膝丈長袖ワンピースに黒のストッキングと言う若々しさ。
 腰に巻いた真紅のベルトと首元の黒のチョーカーが可愛らしさをより強調しているので、誰がどう見ても親戚の中高生が訪ねて来たようにしか見えない。
 もしこのまま夜の繁華街を歩けば、十歩も歩かぬ内に補導されるのは確実だ。
 そんな多恵子に、妹でもある夏穂が真っ先に尋ねた。

「それで今日はどうしたの? 連絡も無く上京するなんて、姉さんも宏クン目当てで家を出たの?」

 笑いながらジョークをかます夏穂に、引き攣った表情を浮かべる屋敷の面々。
 殊に飛鳥など、懲りない夏穂に殺気の籠もった視線を向けてさえいる。
 そんな微妙~な空気が漂う中、知ってか知らずにか多恵子はにこやかな笑みを浮かべたまま宏に視線を向けた。

「いえ、たいした事じゃありませんの。ただ、夏穂ちゃん、飛鳥、美優樹の三人がこちらでお世話になって二ヶ月。そろそろ飛鳥が何か問題を起こした頃ではないか……と思い、様子を見に立ち寄った次第です」

 飛鳥が拗ね始めて一週間。
 その余りにもジャストなタイミングに、一同声も出ない。

「こ、これは何かの偶然……かしら? それとも、何かがお母さんを引き寄せた……とか?」

 美優樹は事態を打開すべく母親へ連絡しようかと考えていた矢先だったので、驚きもひとしおだった。

「これって、テレパシー?」

 不思議そうに首を傾げた若菜のひと言で、大方の事情を察する多恵子。

「やはり、飛鳥の我が儘が噴出しましたか」

 これが母娘(おやこ)の絆、だろうか。
 誰もがそう思っていた所へ、飛鳥が猛然と食って掛かった。

「我が儘……ってナニよっ! 私は大人しく静かに暮らしているだけよ! そんな問題児みたく言わないでっ!」

 怒りでツインテールを蠢かす飛鳥の言葉に、屋敷の面々は顔の前で手を横に振って「違う違う」と一斉にツっ込む。
 そんな相も変わらず血気盛んな娘を尻目に、多恵子は居住まいを正すとテーブルに三つ指付いて深く頭を下げた。

「宏さん、ご無礼を承知で申し上げます。飛鳥の起こした問題は親であるわたくしの責任でもあります。ですので、問題が解決するまで、わたくしをこちらに置いて下さる訳には参りませんでしょうか。わたくしは夜露が凌げれば玄関や廊下で寝泊まりしても構いません。どうかお願い申し上げます」

「ちょ、ちょっと姉さんっ! 本気なの!?」

「お母さん!?」

 これにはみんな目を見開いて驚いた。
 何より、直接の身内でもある夏穂と美優樹はソファーから飛び上がって驚いている。
 どうやら、ここまで積極的な態度を見るのは初めてらしい。

「……なんでお母さんが泊まんのよ。私の問題でしょうに」

 身内から問題視された飛鳥は腕を組むとプイと横を向き、口の中でぶつぶつと文句を言いながら不満気な態度を取っている。
 しかし、強く反対しない所を見ると母親が泊まる事に満更でも無いらしい。
 その間にも、多恵子の直訴(?)は続く。

「わたくしを置いて下さるのならば、家事など率先してお手伝いさせて戴きますので、何卒ご検討戴きたく……」

「えっと、その、ちょっと待って下さい! 余りに急な事なので、俺の……私の一存では応えかねます。みんなと相談するお時間を少々戴いてもよろしいですか?」

 慌てて手を翳し、多恵子の申し出に待ったを掛ける宏。
 いくらこの土地と屋敷の主とて、決して独裁者ではない。
 ここは『みんなの』家なのだ。

「はい。それは勿論です♪」

 ニコリと頷く多恵子をリビングのソファーに残したまま、宏と六人の妻達はダイニングテーブルに移動する。
 下宿組三人にはその間、多恵子の話し相手になって貰う。
 特に飛鳥と美優樹にとっては母親とのご対面なのだから、積もる話もあるだろう。

「えっと、それじゃ……」

 着席と同時に、宏議長による首脳会議(G7?)が始まった。


     ☆     ☆     ☆


「俺としては、飛鳥ちゃんを心配してわざわざ上京までしたんだし、無下に断わる訳にいかないと思う。それに、夏穂先生や飛鳥ちゃん、美優樹ちゃんの普段の暮らしぶりを見て貰えば、これから先、ずっと安心して貰えるんじゃないかとも思う」

「まったく飛鳥ちゃんと言い多恵子さんと言い、何かと話題に事欠かない人達ね~。いきなり泊めてくれだなんて、いくらお屋敷が旅館っぽく見えてもここは個人宅だっつーの。……でもまぁ、全く知らない相手じゃないし、なんたって恩師のご家族でもあるしね。部屋も余ってるし、せいぜい気の済むまで居させてあげましょ♪」

 宏の言葉に、晶も苦笑混じりに首肯する。
 何だかんだ言いつつも、相手の意に沿う形にしてあげるのが晶の好い所なのだ。

「うん、賛成~♪ 人数が多いと色々と楽しいもんね~」

「そうだな。多恵子さんって、小さくて可愛らしいからな。これからどうなるか楽しみだぜ♪」

「ふふ♪ 下宿人がどんどん増えて楽しいわ~♪」

「真奈美さん、下宿する訳じゃ無いんだけど……。まぁ、宏が好いなら、あたいはそれに従うわ。それに、飛鳥ちゃんや美優樹ちゃんのお母さんなんだもん。悪い女性(ひと)じゃ無い事は確かだしね♪」

「……うん。ボクも賛成。但し、脳天気な夏穂先生と同じ血が流れている点が……ちょっと不安要素だけど」

 満面の笑みで若菜が真っ先に手を挙げ、ほのか、真奈美、千恵が諸手を挙げて追従し、優も概ね賛同する。
 みんな、元より優しくて気の好い女性(ひと)なのだ。

「それに……」

 眉根を寄せ、言葉を濁す宏に優が小さく首を傾げる。

「……? ヒロクン、何か気になる事でも?」

「……うん。多恵子さんって、下宿が始まるまでは夏穂先生と暮らしてたんだよね。でも今は一軒家で一人暮らししているから寂しいだろうな、心細いだろうな、とも思ったんだ。それなのに飛鳥ちゃんを心配して上京までして……。だからこそ安心させて上げたいし、俺としては出来る限り力になりたいんだ」

 宏の意表を突く思い遣りに、妻達は息を呑む。
 確かに、多恵子は未亡人の肩書きを持っているとは言え、齢(よわい)三十半ばのか弱い女性なのだ。
 そんな女性(ひと)がたったひとりで家を守る苦労や不安などを考えると、宏で無くとも手助けしたくなる。
 ましてや、相手は自分達にとっても全く見ず知らずの他人では無いのだ。
 六人の妻達は宏の懐の広さや深さに感動し、この男性(ひと)の妻となって本当に好かったと心から思った。

「そしたら、取り敢えず飛鳥ちゃん達の隣の区画(ブース)を客間に仕立てようか。隣に母親がいれば、美優樹ちゃんや飛鳥ちゃんも喜ぶだろうし。真奈美、千恵ちゃん、それで好い?」

 宏の言葉に柄にもなく瞳を潤ませた晶は、主に洗濯を担当している二人に顔を向ける。
 冬場の今、十人分の洗濯物は殆ど二階で干している。
 陽射しはあっても冷たい北風の吹くバルコニーや庭で干すよりも、温室のような二階の方が短時間で乾くのだ。
 晶は、それに支障が無いかを尋ねたのだ。

「ええ、大丈夫です。多恵子さん用に区画を割(さ)いても、まだ四十畳程の広さがありますから♪」

 真奈美と顔を見合わせて頷き合った後、にこやかに応える千恵。
 この二人も、さり気なく瞳を拭っている。
 ほのか、若菜、優に至っては唇を噛み締め、顔を乱暴に擦ったり天井を見上げたりして零れ落ちる涙を必死に堪えていた。
 どうやら、宏の心遣いにノックアウトされたようだ。

「それじゃ、決まりだね♪ あとで俺が客用の布団と座布団を上げておくよ。……あ、余ってるホットカーペットも敷いておこうか。いくら天井にエアコンが組み込まれていても、この時期、朝晩は底冷えするからね」

 莞爾と笑う宏に、心の底から温かくなった妻達は満面の笑みで頷いた。


     ☆     ☆     ☆


「……なるほど。やはりそうでしたか。飛鳥がご心配をお掛けして申し訳ございません」

 ティーカップを静かに置いた多恵子は、苦笑混じりの溜息を吐(つ)くと小さく頭を下げる。
 G7を終えた宏達や美優樹から娘の現状を根掘り葉掘り聞き出したのだ。

「まったく、我が娘ながら情け無い。要は夏穂ちゃんや美優樹に先を越されて拗ねてるだけじゃないの」

 母親の容赦無いツっ込みに、妻達は目を見開く。
 娘可愛さに庇護したりなだめすかしたりするものかと思っていただけに、突き放すかのような台詞が出て来たので意外に思ったのだ。
 ただ、宏だけは、

「多恵子さんも相変わらず飛鳥ちゃんには厳しいなぁ。ま、愛の鞭、って感じかな」

 などと、六年前に出逢ってからずっと変わらない多恵子の言外の優しさに微笑んでいた。

「とは言え、天の邪鬼な飛鳥をこのまま放って置いても皆様がお困りでしょうから……」

 睨み付ける飛鳥の視線を物ともせず、多恵子は宏に視線を向けると母親の顔になって提案した。

「飛鳥の事はわたくしにお任せ下さいます? 決して皆様にご迷惑はお掛けしませんから」

「それは構いません。どうぞ普段通りに振る舞って下さい。俺達も出来る限り協力しますので」

「恐れ入ります。では、今晩からさっそく手を打ちますわね♪」

 何やら楽しげな顔で、多恵子は宏達に頭を下げた。


     ☆     ☆     ☆


 夕食後、宏の部屋を訪ねた多恵子は娘の不機嫌の要因は何であるかと尋ねてみた。
 何しろ、中学時代から長女が想いを寄せている男性(ひと)でもある。
 ここは是非とも、今後の進展の為に当事者の考えを聞いておきたかったのだ。

「俺は……たぶん、ですけど、もしかしたら……」

 前置きした上で、宏はここ一週間ずっと考えていた事を打ち明ける。
 それは六人の妻達との、これまでの経験を踏まえた上で導いた推測だった。
 宏は座布団の上で胡座を掻いたまま、一言一句確かめるように口を開く。

「飛鳥ちゃん、自分だけが取り残されたかのように感じたから怖かったんじゃ無いか、と思います。だから、心にも無い言葉が出たり想いとは逆の態度になったりしてしまったんじゃ無いか、と思います」

「なるほど、宏さんはそうお考えなのですね」

 宏の言葉に、正面に座った多恵子は満足そうに瞳を細めて大きく頷く。
 きちんと娘に向いてくれている事が判り、大満足だったのだ。

「それでしたら、あとは簡単です。今夜にでも、宏さんが娘を慰めて戴ければ問題解決です。お願い出来ますかしら?」

 多恵子の言葉に、小さく首を傾げる宏。
 どうやら、何を指して言っているのかが判らないらしい。

「慰め……ですか? いえ、ずっと声を掛けてはいるんですが、飛鳥ちゃん、俺にもすげない返事に終始してて……」

「宏さん、そっちの慰めではなくて、『こっち』の慰め、ですわ♪」

 案の定、朴念仁な一面を覘かせた宏に苦笑した多恵子は、座ったまま宏の横へ素早く移動すると甘えるようにしな垂れ掛かった。

「って、多恵子さんっ!? い、い、い、いったい……何を……」

「男女の間で『慰める』、と言えば、こっちの事に決まっていますでしょ?」

 顔を急接近させた多恵子はトーンを落とした声で囁き、慌てふためく宏の首筋を舐(ねぶ)るマネをして見せた。

「あひゃぁっ! うぁぁ……」

 若い外見とは裏腹に、アダルトムード満載でお色気ムンムンな仕草に宏は身を震わせた。
 どうやら、首筋に掛かる熱い吐息に激しく性感を揺さ振られたらしい。
 さっきまでは影も形も伺えなかった股間が見る間に盛り上がり、立派なオベリスクが建立されるとこれでもかと自己主張を始める。

「そうです。飛鳥の機嫌を直すには言葉よりも態度で示さないと効き目がありませんわ。あの娘(こ)、誰に似たのか思いの外、頑固で天の邪鬼ですから。ここで実力行使しないと、一生、冷戦状態のままですわよ」

 チラリとオベリスクに熱視線を送った後、目元を紅く染めた多恵子は身体をゆっくりと離し、軽やかな笑い声を上げる。

「た、多恵子さん~、冗談は程々にして下さいよ~」

 宏としては笑い事では無いが、そう言われてみれば、そのやり方もアリ、の気がしてくる。
 実際、千恵や晶が拗ねた時や若菜がご機嫌ナナメな時に濃厚なエッチでご奉仕すると、翌日にはすっかりと機嫌が直っているのだから。
 ただ、娘に対する母親の勧めとしてはどうか……とも思う。

「でも、飛鳥ちゃんの意志を聞かずにゴリ押しするのは……」

「宏さん。『嫌よ嫌よも好きのうち』、ですわ♪ 何でしたら、これからわたくしが証明して見せますわ」

 そう言うと、多恵子は妖艶な笑みを浮かべて立ち上がった。


                                            (つづく)

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