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 ライトHノベルの部屋  ライトHノベルの部屋  ライトHノベルの部屋
     ~ラブラブハーレムの世界へようこそ♪~


コンチェルト~飛鳥(3) コンチェルト~飛鳥(3) 美姉妹といっしょ♪~新婚編
 
「まったく、夏穂姉さんったら自分だけ抜け駆けしちゃって……ナニよっ、私を除け者にして! 美優樹も美優樹よっ! 可愛い顔してやる事はえげつないんだからっ!」

 飛鳥が叔母である夏穂と妹の美優樹と冷戦状態に陥って一週間。
 大学(がっこう)では友人達の手前、何とか普段通りに過ごすものの、本当は誰とも口を利く気分にはなれなかった。
 出来れば、ずっと部屋に立て籠もっていたい程に。
 実際、二階に宛がわれた部屋には飛鳥ひとりで、夏穂や美優樹は冷戦突入から寝る時以外は殆どリビングで過ごしていた。
 お互い、顔を合わせるのが気まずいのだ。

「でも……宏先輩は悪くないのよね……。ただ、夏穂叔母さんと美優樹の想いを受け取っただけなんだろうし。それに、晶先輩達は元・担任の命令を断り切れなかったに違いないし、千恵先輩も美優樹からの懇願に負けたって言ってた……。だのに、みんなを無視するような態度取っちゃって……悪い事しちゃったな、私」

 大家さん達(宏以下六人の奥方)にも仏頂面(だんまり)で接してしまい、好い加減、自分で自分が嫌になって来た。
 殊に、想い人である宏から向けられる言葉や視線すら思わず拒絶してしまう天の邪鬼な性格が心底嫌になる。
 いっそ開き直って夏穂や美優樹のように素直に宏の元へ……などと割り切れないだけに、自分の恋愛に対する消極的な性格がこの時程、恨めしく思った事は無い。
 そんな落ち込む飛鳥の心に、最悪のシナリオが浮かび上がってしまう。

「こんな私、宏先輩に嫌われても仕方無い……よね」

 そう思った途端、頭から一斉に血の気が引き、恐ろしい程の喪失感に襲われた。

「……寂しいよ、宏先輩。せっかく一緒に住んでるのに……こんなのって無いよ」

 同じ屋根の下で一緒に御飯を食べ、同じ浴室を使い、手を伸ばせば届き、声を掛ければいつでも振り向いて貰える近さにいるのに、遙か遠くに宏がいるかのように感じてしまう。
 しかし、胸が圧し潰れる程哀しいのに、涙の一滴も出やしない。

「こんな意地っ張りな私だから……宏先輩を好きになる資格なんて無いし、振り向いても貰えないんだ」

 どんどんネガティブな思考へ入り込む飛鳥。
 ひとりでいると悪い方、悪い方へと考えが向かってしまう。

「今迄こんな想いしなかったのに……何でこうなっちゃったんだろう……」

 晶や千恵がここにいれば、「それらを含めて『恋の病』と言うのよ♪」と言い切るだろうが、今の飛鳥には判る筈も無かった。

「あ~あ。もう、疲れちゃった。このまま時間が止まらないかな。そうすればモヤモヤした気分も感じなくて済むだろうし……」

 大きな溜息と同時に机に突っ伏すと、全身から力が一気に抜けていく。
 このまま化石になった方が遙かに楽になれるかと本気で思い始めた、その時。

「飛鳥、入るわよ」

 静まり返った部屋にノックの音が大きく響き、同時に柔らかいアルトの声が飛鳥を呼び覚ました。
 それは、聞き慣れた温かみのある、心に沁みる声だった。

「あ、お母さん? そっか、いたんだっけ」

 首だけ振り返ると、微笑みを浮かべた多恵子がドアを開けたまま近寄って来るところだった。
 思考のどん底にいた飛鳥は、母親が上京し訪ねて来た事さえ忘れていたのだ。

「飛鳥。話があるので、ちょっとこっちへ」

「話? 今……そんな気分じゃ無い」

 飛鳥は眉根を寄せるものの母親に腕を取られ、半ば強引に階下へと連れ出されてしまう。

「ちょっと、お母さん!? 私、みんなには……」

 てっきりリビングへ連れて行かれるものと思った飛鳥は、お屋敷の面々に顔を合わせ辛い面もあって思いっ切り腰が引けてしまう。
 そんな尻込みする娘に、多恵子は東階段を下りた数歩先で振り返り、にこやかに告げた。

「違いますよ、飛鳥。貴女が今、一番に顔を合わせなければならない人の所へ行くのよ」

「一番に? ……って、ここは宏先輩のっ……!」

 驚いて立ち止まる娘を尻目に、多恵子はドアを開けると娘の手を引いて部屋の中へと入った。


     ☆     ☆     ☆


「あ、多恵子さん……に、飛鳥ちゃん!?」

 宏がノックに続きドアの開く音に顔を向けると、そこには小さな多恵子に手を引かれ、頭ひとつ分は優に高い娘の飛鳥が所在気無く立っていた。
 多恵子は屋敷に来た時と同じ膝丈長袖ワンピースに黒ストッキング姿、飛鳥は普段着の白のブラウスに赤のチェック柄ミニスカートと黒のオーバーニーソックス姿だ。
 母親は常に微笑みを浮かべているのに対し、娘は横を向き、ここ最近デフォルトとなった不機嫌そうな顔付きをしている。
 もっとも、視線が落ち着き無く泳いでいる所を見ると、本気で嫌がっている訳では無さそうだ。
 その証拠に、チラチラと宏の方を見ては顔を赤らめている。

「えっと、多恵子さん? いったい何を始める……」

 飛鳥の登場に戸惑いつつ多恵子を伺うが、見た目十代の母親は宏の言葉を目線で遮ると娘の手を放し、後ろ手にドアをロックすると宏の前に進み出た。
 そして――。

「宏さん。わたくしも宏さんのお側にいとうございます。是非、わたくしを妻の末席に付け加えて下さいませ♥ そしてこのまま契りを交わして戴きたく存じます」

 ベッドに腰掛けていた宏の首に両手を回し、ワンピースが大きく捲れ上がるのも構わず膝上に跨って抱き付いた。
 小柄で体重の軽い多恵子だからこそ出来る、電光石火の早業だ。
 これには抱き付かれた宏は勿論、飛鳥も目を剥いて金切り声をあげる。

「ゐ゛っ!? た、多恵子、さん!?」

「……って、お母さんっ! ナニしてんのっ!!」

「あら、私は好きな殿方へアピールしているだけよ?」

「好きっ!? ……って、お母さん! 何言ってるか判ってんの!?」

「判ってますよ。私は宏さんの事を以前からお慕い申し上げてたの。ひとりの女として愛している、と言っても好いわ。だから妻として……ううん、側室でも内縁の妻扱いでも構わないから抱かれたい、それを言ったまでの事。何か、問題でも?」

 宏の胸元に頬擦りしながら、いけしゃあしゃあと曰(のたま)う母親に絶句する飛鳥。
 この母親はいったい何を言っているのだろう、そんな唖然とした顔だ。

「あの、多恵子、さん? これは一体……」

「宏さん。ここはわたくしに話を合わせて戴けませんか。あの娘(こ)の為に」

「飛鳥ちゃんの為? ……判りました。仰る通りにします」

 突然抱き付かれ、両腕の行き場所に迷っていた宏は、耳元で囁かれた内容に無意識のうちにそっと多恵子を抱き締め、コクリと頷いていた。
 もっとも、飛鳥の為と言いつつ多恵子から立ち昇る甘い匂いと色香に惑わされていた事も確かだ。
 なにせ、いくら見た目は十代でも、中身は熟れ切った(?)三十半ばの女性なのだ。
 十五歳年下の宏では太刀打ち出来無い、滲み出る妖艶さに無意識にノックアウトされていたと言っても過言ではない。

「ご協力、感謝致しますわ♪」

 耳朶に掛かる熱い息と耳に残るアルトの声に、宏はすっかりと骨抜きにされていた。
 多恵子の妖艶さは他の妻達とはまるで次元が違う。
 これが未亡人の色香であり、経験(歳)の差、だろうか。
 宏は多恵子の言葉に、何度も首を縦に振るのだった。

「嘘……信じられない……」

 頬を寄せ合い、熱く抱き合っている二人を、飛鳥は呆然と見下ろしていた。
 まるでこの世の出来事とは思えないシチュエーションに、これは夢なのかとさえ思った。
 しかし。

「宏さん、後生ですからわたくしにお情けを下さいませ。わたくしも精一杯、ご奉仕させて戴きますので」

 上目遣いに言い放った多恵子は、あっという間に宏をパンツ一枚に剥いてしまう。

「って、多恵子さん! 飛鳥ちゃんの目の前でナニを……んむっ!?」

 未亡人のお色気に逆上せていた宏がやっと我に返るが、多恵子の薄い唇が続く言葉を塞いでしまう。
 それは、飛鳥にとっても衝撃的なシーンだった。


     ☆     ☆     ☆


「……あ、宏先輩がお母さんにキスされて……って、キス? …………キス!? ………………えぇっ!?」

 夢現(ゆめうつつ)に目の前の光景を眺めていた飛鳥だが、次の瞬間には心からの叫びを上げていた。

「お母さんやめて! 私の先輩を取らないで!! これ以上、私に寂しい想いをさせないでぇっ!!」

 美優樹、夏穂と知らぬ間に想い人を攫われて傷心の日々を過ごしていたのに、事もあろうに今度は母親によって好きな男性(ひと)が目の前で奪われようとしている――。
 栗色の長いツインテールを振り乱し、飛鳥は我を忘れて叫んでいた。

「私から宏先輩を取らないでぇ……お願いよぅ……」

 胸の前で拳を握り、切れ長の瞳に大量の涙を浮かべた娘の絶叫に、多恵子は唇を合わせたまま小さな笑みを零した。
 そんな多恵子の態度に、突然のキスに戸惑っていた宏は目を見開いた。

「まさか! わざと飛鳥ちゃんを揺さ振った!?」

 思わず漏れ出た言葉に、多恵子は満足そうに頷くと再び耳元で囁いた。

「お察しの通りです。あの娘(こ)の嫉妬心と焦りを宏さんへの恋心に昇華させました。これであの娘の本音も聞けましたし、後はお任せしますわ♪」

 頬にチュッ、と軽いキス。
 宏は多恵子の母親としての深い愛情に(方法はともかく)、感嘆の声を上げた。

「判りました。俺も、飛鳥ちゃんを失いたくはありません。多恵子さん、俺、飛鳥ちゃんを貰います!」

 小さくて細い身体を力強く抱き締め、耳元で決意を述べる宏。
 相手である飛鳥に告白する前に、母親にお伺いを立ててしまったのは……この場合は仕方無いだろう。
 大きく頷く多恵子を膝から降ろし、立ち上がった宏は二歳年下の後輩に一歩、近づく。

「飛鳥ちゃん。俺、飛鳥ちゃんが好きだ。後輩としてではなく、ひとりの女性として飛鳥ちゃんが好きだ!」

「……っっ!! ひ、宏……先輩!?」

 凛々しい顔で面と向かって告白する先輩(でもパンツ一枚の姿)に、飛鳥は目を白黒させてしまう。

(……あ、宏先輩って、着痩せするんだ。二の腕や胸板に好い筋肉が付いて……体脂肪もヒトケタな感じ)

 今さっきまで母親とキスを交わしていた人物からの突然のラブコールと一連の状況変化に思考が付いて行かないのだ。
 それでも、宏からの熱い言葉が混乱中の飛鳥を現実の世界へと引き戻す。

「俺がハッキリとしないばっかりに今迄辛い思いをさせてゴメン! これからは妻の一員として一緒に人生を歩んで行こう!」

「宏……先……輩?」

 真剣な眼差しで見つめられ、手も握られた飛鳥の心拍数が急上昇する。

 ――焦り、失意、絶望、そして光明――

 強く握られた手の痛さと温もりは、決して夢では無いと告げている。

「飛鳥ちゃん、好きだ。愛してる♥」

 そっと抱き締められ、瞳を見つめられながら囁かれた言葉が心に深く染み渡る。
 同時に、胸の奥底から何かが徐々に湧き上がって来るのが判った。
 それは、これまでの陰鬱で暗く冷たい塊では無く、温かみのある大きな塊だった。

「宏先輩に告白されて……抱き締められてる……? 私の事を……好きだと言った!?」

 宏の心をハッキリと意識した途端、悦びが弾けた。

「宏先輩っ!! ~~~~~~っ♥」

 言葉にするのももどかしく、飛鳥は目の前で微笑む愛しい男性(ひと)に、初めて自ら抱き付いた――。


     ☆     ☆     ☆


「んちゅぅ~~~~っ♥ んむ……ん…………っ!?」

(あぁ……、私、宏先輩とキスしてる……。私のファーストキス、宏先輩に奪われちゃった♥ ……でも、キスってこんなにも苦しいものなの!?)

 唇が塞がれ、呼吸が出来無くなった飛鳥は吹き出す前に何とか逃れる事に成功する。
 それでも、宏の前でぜ~ぜ~と荒い息を吐(つ)いてしまう。
 そんな飛鳥を、面白そうに見ていた宏が小さく笑う。

「ふふ、飛鳥ちゃん。キスの最中は鼻で呼吸をすれば好いんだよ♪」

「へ? あ、そ、そっか。それもそうですね」

「では、改めて♥」

「あん、先輩ったら……んちゅぅ~~~♥」

 鼻で小さく呼吸をしつつ、宏のキスに身を委ねる飛鳥。
 今度こそ、真のファーストキス(?)に酔いしれるのだった。
 一方、目の前の極上美少女にテンションが上がりっ放しになっていたのは宏だ。

「うっは~~~~♪ ミニスカ・ニーソ・ツインテール美少女とのキス~~~~♥」

 後輩のファーストキスを貰った瞬間から、脳ミソと股間が沸騰していた。
 なにせ、妖艶な多恵子に抱き付かれて燻っていた情欲が、飛鳥との初キスで一気に噴火したのだ。
 結果、宏のキスは時間と共に白熱してゆく。

「んん~~~~~~♥」

 唇の間から舌先を挿し込み、ツインテール少女の口唇を蹂躙し始める宏。
 挨拶用のライトキスでは満足出来ず、身体を重ねる為のキスへとシフトさせたのだ。
 当然、フレンチキスがいつの間にかディープキスに変化し、その余りに濃厚で官能的な刺激に脳内が真っ白になる飛鳥。

「!? ……っっ!! んふん…………♥ あぁ……先輩のキスで蕩けちゃいましたぁ♥」

 腰が抜け、ひとりで立てなくなった飛鳥はベッドまで連れて行って貰い、そのまま仰向けに倒れ込む。
 この時、少し勢いが付いていたのか、ミニスカートが大きく捲れ上がって純白のローライズショーツが灯りの元に晒されてしまう。
 しかし、ファーストキスの段階で覚悟を決めていた飛鳥はスカートを直さず、そのままにしておいた。

(後は……せ、先輩に、お任せ……します)

 無言のまま、そっと目を閉じる。

(これ以上口を開くと、きっと天の邪鬼になっちゃう! 素直になれないっ! だったら、いっそ黙っていよう)

 頭の片隅で決めた事を実行する飛鳥。
 ところが、そんな飛鳥の決意は簡単に揺らいでしまう。
 キスをしながら宏が胸元に手を伸ばし、ブラウスのボタンを外し始めたのだ。

「あぁ、ダメぇ! 胸はダメです、先輩!」

 慌てて上体を起こし、一歩後退る飛鳥。
 横に振る首に合わせて栗色のツインテールが勢い良く左右に翻る。

「ん? どうして? 脱がないと出来無いよ?」

 デリカシーの無い台詞に飛鳥の顔は真っ赤に、ベッドの隅で控えて(見守って?)いる多恵子は苦笑するが、血気盛んな宏(とその愚息)には理由が判らない。

「ですから、あの、その……」

(乳お化けの夏穂姉さんや同じ容姿の美優樹と比べられちゃうじゃないっ!)

 はだけそうなブラウスを両手で掴み、胸をガードするよう必死になって腕を交差させる飛鳥。
 理由なぞ、恥ずかしくて絶対に言えない。
 そんな言い淀む娘に、笑いを堪えた多恵子が一歩前に進み出た。

「飛鳥は胸の大きさを気にしているのですわ。なにせ八十・Bカップの美優樹よりも更に小さい七十四のAカップ、ですから♪」

 あっさりとネタバラし(?)してしまう母親を、飛鳥は殺気の籠もった瞳(でも涙目)で睨む。

「バカぁ! 気にしてるのにぃ~~~っ!!」

 甘いムードが霧散しようかという空気の中、宏は飛鳥のスレンダーボディをそっと抱き締め、安心させるように頬にキスし、耳元で囁いた。

「飛鳥ちゃん。俺は大きさとか見た目とか気にしないよ。飛鳥ちゃんそのものが好きなんだ♥」

 その言葉に、飛鳥は昔を思い出して大きく頷く。

「そう……でしたね。先輩は私のこの髪同様、見た目に誤魔化されない男性(ひと)ですもんね」

 愛おしげに栗色のツインテールに手を伸ばし撫でさする飛鳥と、その手ごと手の平で包み込む宏。
 二人の心は、自然と中学時代に飛んでゆく。



「私が初めて宏先輩と言葉を交わしたの、覚えてます?」

「覚えてるさ♪ 中学の時、俺が部長を務めてた陸上部に入った時だよ。中一とは思えない長身だったから、ずっと印象に残ってた」

「でも私、その時には既に学校やクラスメイト達とトラブってて……」

「この綺麗な栗色の髪が問題視されてたんだよね」

「そうなんです。入学前から地毛の色だと何度も説明してるのに全然聞いて貰えなくて、『茶髪は不良の証拠だ』、なんて言われて。周りの生徒も私が不良だと言う噂を信じてたし、仕舞いには、『髪を黒く染めろ』、って教師からスプレー缶片手に迫られて……そんな学校が嫌になって……」

「入学早々、不登校になっちゃって」

「はい、二週間位でしたけど。でも、宏先輩は最初(はな)から噂を信じないで、むしろ私の事をずっと気に掛けてくれてて……」

「あはは、そう……だっけ? よく覚えて無いや」

「私は今でもハッキリと覚えています。あの時、宏先輩が、飛鳥は普通の女の子だ。第一、『髪を染めてはいけない』と言う校則なのに『髪を染めろ』とはおかしい、って学校側に言ってくれて……」

「俺も学校側のやり方に黙っていられなくなってね。当時は教師や学校の都合に合わせて生徒を拘束・管理する校則が横行してた時代だったからね。誰の為の何の為の校則か、甚だ怪しかったもん。なので、飛鳥ちゃんの為に、ちょこっと攻勢を掛けてみました~」

 肩を竦めておどける宏に、飛鳥の熱い視線が注がれる。

「宏先輩は入学したての一年生(わたし)の為に全校生徒の協力を取り付け、その親や家族、果ては集落全体から校則を変える為の署名を集めてくれて……最後は学校側をねじ伏せてくれたんです」

「まぁ、部長の他に生徒会の役員もしてたからね。使える手段は使わないと損だし。それに俺自身、あの校則は間違ってると常々思ってたから、変える切っ掛けにもなって丁度好かったんだ。でもまぁ、あの小さな田舎町で、たった二週間で千二百近くの署名が集まるとは想像もしなかったけどね~。全校生徒ですら二百六十弱しかいない学校だったのに」

「その署名活動が地元新聞の地域コラムに載って……全県レベルで理不尽な校則を見直す気運が高まると同時にお役所(県)に知れる事になって……果ては校則を裏で作成・指示してた教育委員会を改編させるというオマケも付いて」

「あはは、そんなニュース、見た記憶が……」

 恥ずかしそうに俯く宏に、飛鳥の熱弁は止(とど)まる所を知らない。

「正義は必ず勝つ、権力にだって負けない、って宏先輩が教えてくれたんです。実際、その通りになって……嬉しかった。何の取り柄もない私の為に骨身を削ってくれて、結果、『地毛に手を加えてはならない』と校則を変えてくれたんです」

「あ~~~、そんな事もあったっけねぇ~」

「それで私、救われたんです。今の私があるのは、先輩のお陰なんです! いえ、私だけじゃありません。他のクラスにいた赤毛の娘や天然パーマの娘達も救われたんです!」

「あはは……。天パー(天然パーマの事だ)も当時は目の敵にされてたからねぇ~、『パーマは不良の証だ』、なんて言って。しかも、校則に『パーマを掛けてはならない』ってあるのに、『パーマを掛けて真っ直ぐ伸ばせ』、な~んて矛盾するバカな事、校長が平気で言ってたし」

「みんな、宏先輩に感謝してました。宏先輩って、一年生の間じゃヒーローだったんですよ♥」

「ヒーロー?」

 飛鳥は首を傾げる宏の手を取り、そっと胸に抱き締めた。

「今でも宏先輩の名前、中学の伝説として残ってます。権力(学校)をねじ伏せたひとりの生徒(ヒーロー)として」

「……それ、初耳」

「そして、私の永遠のヒーローなんです♥」

 恥ずかしいやら照れ臭いやら、顔を上げられない宏。
 一方、多恵子も娘の言葉に大きく頷き、会話に加わる。

「宏さんが毎日、部活後にわざわざ家(うち)に寄って下さり、その日の出来事や学校側との進捗具合を教えて戴いて、わたくしも感謝しておりますのよ。それはもう、感謝しても足りない位に」

「確か……その時に美優樹とも出逢ったのよね。でも、まさか小学生だった美優樹まで宏先輩に惚れるとは思わなかったけどね」

 苦笑する飛鳥に、多恵子が知られざる真実を語り出した。

「あら、わたくしもその時に宏さんの人柄に惚れたのよ? 知らなかった?」

「……今、初めて知ったわよっ!」

「あ……あはは……」

 口から火を噴く勢いの飛鳥に、宏はただただ照れ笑いを浮かべるだけだった。



「先輩は、いつも心を見てくれてます。そんな先輩だから惹かれて……いつしか好きになってました」

 すっかりと素直になった飛鳥の回想に、宏は照れ臭そうに鼻の頭を掻く。

「あはは……。そんな時代もあったねぇ」

 今更ながらに、自分のしでかした事が猛烈に恥ずかしくなる。

「いいえ。そんな宏さんだから、わたくしも惹かれましたのよ♥」

 愛おし気に宏の二の腕を撫でさすったのは多恵子だ。
 娘と同じ、熱い目で宏を見つめている。
 いつの間にか、ベッドで胡座を掻く宏の両側に母親と娘が陣取る形となっていた。
 当然、そこに割り込むのは飛鳥だ。

「……って、ナニ見つめ合ってんのよっ! 今は私と宏先輩の時間よっ!!」

 言うが早いか、宏の顔を両手で挟むと自分の方へ向かせ、唇にむしゃぶり付く飛鳥。
 宏も、飛鳥とハードな口付けを交わしつつ、片手で残ったブラウスのボタンを外そうと試みる。
 頑なに隠す飛鳥の美乳(微乳?)を是が非でも拝みたいと思ったのだ。
 しかし、無い乳を誇る(?)飛鳥のガードは殊の外、強力だった。

「先輩、ダメったらダメですっ!」

 先輩の威厳も何のその、飛鳥の強烈な平手打ちが宏の手を直撃した。


                                            (つづく)

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