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ライトHノベルの部屋
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~ラブラブハーレムの世界へようこそ♪~
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恋模様(2)
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美姉妹といっしょ♪~新婚編
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「ん~~~、どうしよう。ちっとも終わらない~」
夕餉も済み、いつもと変わらない一家団欒の時間。 飛鳥は手にしたペンを放り投げ、ダイニングテーブルに突っ伏した。 額をぶつける鈍く重い音がリビングに響き、そのまま身動ぎひとつしなくなる。 頭の下には書き掛けのレポート用紙が何枚も散らばり、周りにはネット検索用にと優から借りたノートパソコンが点り、大学の図書館で調達した分厚い本も開いた状態で幾つも積み重なっている。 飛鳥は毎月出される課題を仕上げている真っ最中なのだ。
「う~ん、いっそネットや本で拾った文章を適当に並べ替えてレポート仕上げちゃおうかなー。どこぞの学者や教授もそうして論文作って地位と名声上げてたしー」
レポート用紙に顔を埋めたまま、人としてあるまじき行為を本気で考え、口にしていると。
「その学者や教授は全ての学位や資格を剥奪され即刻解雇されたわ。お姉ちゃんもそんな事したら一発で退学よ? まぁ、それが望みなら止めはしないけど」
黒を基調とするゴスロリ衣装を纏った美優樹が隣に立ってジト目で見下ろしていた。
「美優樹!? いつの間に……」
テーブルに突っ伏した状態から身長百八十センチの妹を見上げると威圧感が半端無いのは……気の所為では無いようだ。 なにせ、蔑むような目で睨んでいるのだから。
「う゛っ!」
とても三歳年下とは思えない迫力に、つい、言葉に詰まってしまう。 しかも、相手は正論を言っているので反論すら返せ無い。 美優樹はダイニングテーブルの有様に一瞥くれると溜息混じりに言い放った。
「お姉ちゃんったら、まだ課題抱えてたの? これで何度目? 日頃から少しずつ課題をやれば、って散々言ってるのに……締め切り直前まで何もせず、挙げ句に頭を抱えるんだから好い加減、『勉強』すれば好いのに」
辛辣な台詞を淡々と浴びせると冷蔵庫から野菜ジュースを取り出し、コップに注ぐと喉を鳴らして飲み干してゆく。 どうやら休憩で部屋から降りて来たらしい。 そんな、見た目とは裏腹な美優樹の厳しいツっ込みに、リビングのソファーでくつろいでいるほのかが破顔した。
「課題と頭を抱える……巧いコト言ってんな~。しかも課題の勉強と覚えろと言う勉強も掛けてるし」
ほのかの解説に、宏を中心に集っていたギャラリー達がやんやと沸き立つ。 いつも凛とした雰囲気を常に纏う晶やクールな表情を崩さない優ですら歯を見せて笑んでいるし、夏穂と若菜に至っては缶ビール片手に大笑いしている。 今や、飛鳥と美優樹姉妹の掛け合いはすっかりと屋敷の名物になっているのだ。 姉妹の母親である多恵子でさえ、二人を止めるどころかニコニコと笑みを湛えたまま宏と一緒に笑い合っている。 そんな、かまびすしいギャラリー達を余所に、痛い所を突かれてカチンと来た飛鳥が妹に向かって叫んだ。
「美優樹とは頭の出来が違うから! 私は私の道を行くから放っといて! 第一、実験の邪魔とかで部屋を占領してんのはどこの誰よっ!」
「お姉ちゃんは資料を漁って自分の考えをレポートに纏めるだけじゃない。美優樹は光発電と推力のバランスを、模型飛行機を使って計ってるんだからどうしても広いスペースが必要なの。仕方無いじゃない」
「だからって追い出すコト、無いじゃない! お陰で私ひとりがダイニングテーブルの一角を占領して皆さんに迷惑掛けるハメになってるし!」
飛鳥は美優樹から「実験の邪魔!」とばかり部屋から追い出されていたのだ。
「そこはお姉ちゃんの人柄がモノを言う部分でしょ? 美優樹、そこまで責任持てないわ」
「うわっ! 姉に対して何たる暴言! それが妹の取る態度かぁ!?」
椅子に座ったまま睨む飛鳥と見下ろす美優樹の間に電撃が飛び交い、険悪な空気になりかけた、その時。
「飛鳥ちゃん。気にしなくて好いわよ。私達は平気だから。美優樹ちゃんも、あんまり責めないであげて」
絶妙なタイミングで真奈美のフォローが入り、姉妹間の電撃がピタリと止む。 飛鳥が周りを見ると、屋敷に住まう全員が興味津々とばかり、こちらを見ている。 どうやら、完全に見せ物と化していたようだ。
「あ……す、すみません! 熱くなって、うるさくしてしまいました」
飛鳥は腰を浮かせ、ダイニングテーブルの対面にいる真奈美や宏達に向かってペコペコと頭を下げる。 美優樹もこれ以上騒ぎを大きくするのは拙いと思ったようで、バツの悪そうな顔になって一気にトーンダウンする。
「と、とにかく、美優樹の実験はあと二時間で終わるから、お姉ちゃんもそれまでにレポート終わらせてね」
真奈美の仲裁もあって、美優樹はリビングの面々に一礼すると栗色のツインテールを小さく揺らして自室に戻ってゆく。 そんな妹の背中を見送りながら、飛鳥は真奈美に小さく頭を下げた。
「あの、重ね重ねスミマセン。何だか恥ずかしいトコばかり見られてますね」
平身低頭の飛鳥を気遣うように、真奈美は飛鳥を座らせるとニコリと笑う。
「うふふ♪ 二人の絆の強さが判って好かったわ。美優樹ちゃんは美優樹ちゃんなりに飛鳥ちゃんを心配してるのよ。だから言葉が強くなっちゃうんだと思うの」
温かな真奈美の瞳に見つめられ、飛鳥の鼓動が少し、速くなる。 もっとも、妹からの攻撃(口撃?)が少なからず効いている飛鳥は真奈美の言葉を素直に受け入れられない。
「いやぁー、そうでしょうか。妹なのに居丈高に散々コキ下ろして、とても心配してるようには見えませんが」
「ううん、とても心配してるわ。だって、何とも思って無ければ何も言わないもの。気に掛けているからこそ、ああして様子を見に来たのよ。でなければ、お部屋に冷蔵庫があるのにわざわざここまで来ないわ」
飛鳥と美優樹の部屋には宏が使っていた単身者用のツードア冷蔵庫が置いてあり、自前のドリンクやアイスにチョコレートなどの菓子類が多種多様入っているので、勉強の息抜きでキッチンまで来る必要は無いのだ。
「あ……」
真奈美の指摘に、今気付いたとばかり目を見開く飛鳥。 そんな「お姉ちゃん」に、真奈美の解説が続く。
「それに、美優樹ちゃんは飛鳥ちゃんに二時間経てば部屋に戻っても好いって言いに来たんだと思うの。美優樹ちゃんらしい、遠回しな言い方だったけど♪」
「そう……ですね。そうかもしれません」
(美優樹のヤツ、もちっと素直に言えば好いのに、いつも悪態吐(つ)くんだからっ。それにしても、真奈美さんから言われると夏穂姉さんやお母さんから言われるよか説得力があるわ)
にこやかに、そして柔らかな声で言われれば、無条件で納得するから不思議だ。
(やっぱ、癒しの真奈美、だからかな? あの瞳を見てると、ささくれ立った心がいつしか和んでるし)
俯き加減でぼんやり考えていると、湯気の立つマグカップが目の前にそっと置かれた。
「それに飛鳥ちゃん。レポート作成するのに、あんまり根を詰め過ぎるとかえって煮詰まっちゃうわ。これで少し頭を休めてリフレッシュすると好いわ」
鼻をくすぐる芳醇な香りに顔を上げると、お盆を胸に抱いた真奈美が小さな笑みを浮かべて隣に立っていた。
「あ、すみません! 自分で淹れなきゃいけないのに――」
飛鳥は慌てて腰を浮かせるも、手を翳して制した真奈美に素直に従い、椅子に座り直す。
「うふふ♪ 好いから。私はこれ位しか力になれないもの。それじゃ頑張ってね♪」
「いえ、そんな事は……とにかく、ありがとうございます。戴きます」
ニコリと微笑んでから立ち去る真奈美に小さく一礼し、飛鳥はマグカップに手を伸ばす。
「あ~~美味しい~~~心が安まる~~~♪」
鼻に抜けるジャスミンティーの香りと後味の好さ、そしてさり気ない真奈美の心遣いが心を鎮めてくれる。
「それにしても……」
飛鳥はリビングを所狭しと動き回る真奈美を目で追う。
(真奈美さんって、私達を好く見てるよなー。誰かのお茶が無くなりそうになると、すかさずお代わり注ぐし、お茶請けのお菓子もそれぞれの好みに合わせて用意してるし、無くなる前には小まめに補充してくし)
飛鳥はレポートそっちのけで真奈美を観察し出す。
(美人揃いの奥さん集団の中にあっても真奈美さんは引けを取らないよなー。背中の半分まで届く真っ直ぐな黒髪は艶々してるし目鼻立ちは整ってるし細身の身体に形の好い膨ら脛は美脚モデルみたいだし)
飛鳥の視線がスキャンするかのように下りてゆく。
(それに、みんなが言う程、垂れ目でも無いと思うけどなぁ。でも、ふんわりとした笑顔と黒曜石みたいな瞳に見つめられたら癒されるって言うのは判るわ~。実際、さっき癒されたばかりだし)
などと癒し美女に魅入っていたら。
「あの、飛鳥ちゃん。そんなに見つめられると恥ずかしいわ」
「へっ!? あ! ごめんなさい!」
どうやら、じ~~~っと見つめ過ぎたようだ。 再びペコペコと頭を下げる飛鳥に、今度は外野から茶々が入った。
「おいおい飛鳥ちゃん、宏から真奈美に鞍替えしたのかい? あははははっ」
大口開けて笑うほのかと同調するように、リビングに笑いの渦が巻き起こる。 ほのかは夕食が終わっても叔母の夏穂とずっと晩酌を続けているので、結構、アルコールが回っているようだ。 透き通る白い肌が、今や遠目でも判る程に紅(あか)く色付いている。
「そうですね。……真奈美さんなら宏先輩同様、幸せにしてくれそうです♪」
満面の笑顔で言い切った飛鳥の、今日一番の切り返しにリビングは歓声に包まれた。
☆ ☆ ☆
(飛鳥ちゃんったら、あんなコト言って。でも、そう言ってくれて嬉しいわ。何だかまた少し、距離が縮まったみたい)
真奈美は下地島へ行く迄は新規参入組の奥さん四人に、ある程度の距離感を持っていた。 宏の許に集まった奥さん達の中で、自分だけが外寄りにいたからだ。
(宏君と出逢ったのが一番遅かったのは私とほのか先輩だったからね。夏穂さんは早くから担任として接していたし、多恵子さんと飛鳥ちゃんは中学の件で深くお世話になったし美優樹ちゃんも飛鳥ちゃんの妹として接していたし。それに、ほのか先輩は明るい性格だからすぐにみんなと仲良くなって今や完全に溶け込んでる。なのに私は……)
つい、弱気な自分が顔を覗かせるも。
(これまでの私なら、心の中にいるネガティブな自分に付き従っていたんだろうなー。お前は所詮、後(あと)から来た女なのだ、来るもの拒まずの宏にぶる下がっているだけの女なのだ、って。それで自ら落ち込んで。……でも)
心の奥底に、去年迄は感じなかった温かな光が今は常に灯っているのが判る。
(若菜ちゃんから教えられたもの。もっと素直な自分を出しても好い、って。人目を気にせず好きな気持ちを表わしても好いんだ、って。今は晶先輩や夏穂さん達と同じ立ち位置にいるんだ! って。それに……)
真奈美は、額に汗を浮かべ必死にレポートを仕上げている飛鳥を見つめる。
(飛鳥ちゃんも私と同じく宏君に助けられたからかな? すごく身近に感じる。それに、色んな事に夢中になって四苦八苦して……昔の私を見ているみたいだわ)
他人事(ひとごと)とは思えない飛鳥の立ち回りに、真奈美は今迄に無い親近感を覚えていたのだ。 そんな真奈美がダイニングテーブルのリビング寄りに座ってみんなと談笑していると、マグカップを持った飛鳥がやって来た。
「あの、隣、好いですか?」
「あら、飛鳥ちゃん。レポートの調子はどう……って、無事に終わったみたいね」
何冊も拡げられていた本やパソコンは全て閉じられ、レポート用紙もクリアファイルに綺麗に納まっていた。 リビングの壁時計にチラリと視線を向けると、美優樹が去ってから既に一時間半以上経っている。
「はい、何とか仕上げました。ここで挫けたら美優樹にナニ言われるか判ったモンじゃありませんから」
妹の美優樹と寸分違わぬ顔で微笑む飛鳥に、真奈美はレポートが上手く纏まったのだと判った。
「それはお疲れ様♪ さ、座って」
飛鳥は椅子を真奈美に向けて座ると、すぐに椅子ごと身を乗り出して来た。
「あの、宏先輩との出逢いの詳細を聞いても好いですか? ずっと聞きたいと思っていたんです」
「詳細?」
「はい。困っていた所を救われた、と迄は聞いていますが具体的には……。私も宏先輩に救って貰った身なので、ずっと気になってたんです」
「そっか、飛鳥ちゃんも宏君に助けられたクチだものね。私と同じく」
「そうなんです。だからこそ詳しく知っておきたい、と思って。あの、聞いたら御迷惑……ですか?」
自身の事もあって古傷に触れるような事だと思ったのだろう、躊躇いがちに聞いて来る。 細く長い眉は八の字に下がり、言葉も小さく弱くなる。
「辛い事じゃ無いから大丈夫よ。ううん、むしろ私の運命を幸せに導いた出来事だったわ。そう、あれは……」
安心させるよう笑顔で快諾し、すぐに記憶が当時に飛ぶ。 真奈美にとって非常に大切な想い出なので、昨日の事のように語る事が出来るのだ。
「事の起こりは今から五年前、私が大学の二年、二十歳(はたち)の春だったわ。そう、今の飛鳥ちゃんと同じ歳の時で、時期も今頃の話よ」
真剣な表情で頷く飛鳥に、真奈美は懐かしみもあって微笑んだまま話を続ける。
「私がうっかりお財布と定期券を忘れたままバスに乗っちゃったの。当然、降りる段階で気付いて運転手さんに申告したんだけど、これがまた揉めちゃってね」
「揉めた……んですか? 普通、『次に乗った時に払ってくれ』ってんで注意されつつ即時解放されるんじゃ無いんですか? バスなら後が詰まって時間無いだろうし」
「終点だったから、時間的余裕があったの。それにその運転手さん、年輩の男性(ひと)だったんだけど杓子定規で頑固だったのね。私が何度も『次に払いますから』って言っても『払わない以上、ここから降ろさない!』って強い口調で言われて……。私、ホントに泣きたい位だった。お金も持ってないから身動き出来無くなっちゃったの」
「そ、それはまた……悪い人に当たりましたね」
「まぁね。それに、先に降りた何人かの人が私のトラブルに気付いたみたいだったけど、誰も助けてくれなかった」
「非道い! うら若き女性が困ってるのに、誰も手を差し伸べないなんてっ」
眉根を寄せ切れ長の瞳を吊り上げて怒りを露わにする飛鳥に、真奈美は宥めるよう微笑む。
「仕方無いわ。見ず知らずの人間にお金を立て替える義理や道理は無いもの。今もそうでしょ?」
「そ、それは! ……まぁ、そうかもしれませんが……あの、それでどうなったんですか?」
続きが気になるのか、瞳を輝かせた飛鳥が先を急かして来る。
「捨てる神あれば拾う神あり、とは好く言ったもので、私の直前に降りた男性(ひと)が引き返してくれたの!」
「なるほど! ここで救世主の登場なんですね!」
喜色満面となる飛鳥。 まるで自分が体験しているかのように感じているのだろう、素直に感情を露わにする飛鳥に釣られて真奈美の感情も当時と同じように昂ぶり出した。
「そうなの! 運転手さんにひと言ふた言交わしたと思ったら私の分の運賃を払って、すぐ駅に消えちゃったの」
「まるでヨーロッパのラブロマンス映画のプロローグみたいですね」
「今思うと、その通りね。でも、その時の私は気が小さくて臆病でどうしよう、どうしようって頭の中が真っ白になってたの。だから運賃を立て替えてくれたその男性(ひと)を追い掛けるどころか、すぐにお礼を言う事すら出来無かった。お金を払うのを隣でぼやっと見てて……バスを降りても人混みに紛れてゆく背中を立ち竦んで見送るだけだった」
「…………」
気持ちが判るのか、飛鳥は黙ったまま何度も頷いている。
「だから、次の日から同じ時間、同じ場所でその男性(ひと)が現われるのを待ち続けたわ。雨の日も風の日も一日として欠かさず毎日、ね」
「ま、毎日ですかっ? それは凄いですね」
「でも、なかなか逢えなかった。バスの降り場だけで無く、駅の改札前でも探してもみたけど現われなかった。待つ時間を倍に拡げても……一ヶ月経ち二ヶ月経って半年経っても逢えなかった。名前も知らない男性(ひと)だったから、私には待つしか無かった」
「真奈美さん……」
「お礼も言えぬまま、ましてや立て替えてくれたお金も返せないまま秋になって……悔しかった。自分が猛烈に嫌になった。自分には人として生きる価値や資格さえ無いと思い始めていたわ」
「……………………」
「そんな落ち込んでいた時に、晶先輩から紅葉狩りに行こう、って誘われたの。今なら判る。それは私への思い遣り、気分転換させようとしてたんだ、って。でも当時の私は、とてもそんな気分にはなれなかった。そんな時間があればその男性(ひと)を探す事に費やしたかった。それに私が紅葉狩りに行っている間にその男性(ひと)が現われたら……と思うと、とても参加出来る心境じゃ無かった。でも猛烈に脅され、後輩だから仕方無く連れ出されて……ね」
「ちょっとっ! 誰が猛烈に脅した――んぐぐっ!?」
と、ここで晶の猛抗議する声が上がるが、すぐに夏穂とほのかの『呑み友連合』によって鎮圧される。 口を塞がれ羽交い締めにされ、くぐもった声と抵抗する衣擦れの激しい音がリビングの隅から聞こえて来る。 片や、目の前の飛鳥は身を乗り出して続きを待っていた。
「そしたら……あの時助けてくれた男性(ひと)が現われたの! 私、夢でも見ているのかと思った。願望が見せる幻かと思った」
「……(ごくり)」
飛鳥の、息を呑む小さな音が静まり返ったリビングに大きく響く。 宏達(晶を除く)もこぞって聞き耳を立てていたのだ。
「でも違った。本物の……紛れも無く私を助けてくれた男性(ひと)だった。私が探しに探し、求めて止まなかった男性(ひと)が目の前に君臨したの!」
両手を胸の前で組み、祈るようなポーズをすると、飛鳥からホッとしたような声が漏れた。
「それが宏先輩だったんですね」
「後から判ったんだけど、宏君、あのバスと駅を使ったの、その時が初めてだったんですって。お友達の家を訪ねた帰りだったから、あの時一回限りの利用だったんだって」
「そ、それじゃ、幾ら待っても逢えない訳だ」
「そう、まさしく一度っきりの『擦れ違い』だったの」
真奈美は祈るようなポーズを続けたまま、そっと目を閉じた。
「再び出逢った宏君を前に、私は嬉しかった。嬉しくて嬉しくて……それ迄の苦労が全て報われたと思った。でも違ったの。私、その男性(ひと)を探しているうちに恋していたの。さり気無い優しさに、いつしか強く惹かれていたの。だから再会出来た時には、既に私は宏君の虜になっていたの」
そっと目を開けると、目の前に瞳を潤ませた飛鳥の美顔が迫っていた。
「判ります! 私も宏先輩の優しさと強さに惹かれましたから。宏先輩がいてくれたからこそ、無事に中学に復帰出来たんです!」
「うふふふ♪ 私達は宏君に助けられた女同士、だわね♪」
「あはは。そうですね。やっぱり宏先輩は凄いです。私、宏先輩と出逢えて幸せです♥」
「私も宏君と出逢えた幸運に感謝するわ♥」
飛鳥と真奈美の台詞に、それまで息を潜めて聞き入っていたギャラリーから一斉に同調する声が湧き上がった。
「おいおい、宏と出逢えてハッピーになれたのは、何も二人だけじゃ無いぜ? オレ達も一緒だってコト、忘れて貰っちゃ~困るぜ♪」
ほのかが自分の胸に向けて親指を差し、他の面々も満面の笑みで大きく頷いている。 そして話の中心となった宏と言えば……。
「俺、こっ恥ずかしいコト、してんなー。嗚呼、穴があったら入りたい」
ひとり掛けソファーの上で蹲るように小さくなっていた。 首から上が真っ赤になっている所を見ると、どうやら照れ臭さで顔を上げられないらしい。 九人の美女軍団(いつの間に部屋から降りて来たのか美優樹も交じっていた)が宏を取り囲んでいたのだ。 一方、詳細を聞いた飛鳥は切れ長の瞳に薄っすらと涙を浮かべ、真奈美の両手をしっかと握り締めた。
「貴重なお話をありがとうございます! 何だか、全ての重しが取れた感じです!」
飛鳥の温もりを両手に感じつつ、真奈美は飛鳥との距離感がゼロになったと思った――。
☆ ☆ ☆
「それじゃ、今夜はその二人とだ!」
宏の夜伽指名に真奈美と飛鳥が小躍りして悦んだのはさておき。
(ぐへへ♪ 柔らかな渓谷と弾力のある丘陵のコラボじゃ~♪ フカフカ、プルプルが堪らん♪)
バストサイズ最大値ホルダーの真奈美と最小値ホルダーの飛鳥からのダブルパイズリを受け、宏は盛大に白濁液を噴き上げていた。
「あぁ……今夜の一番搾りは胸に射精(だ)しちゃった。二人のオッパイ、気持ち好過ぎだよ♪」
「宏先輩、出すの早過ぎっ! でも、これはこれで美味しいし……次は膣内(なか)に射精(だ)して下さいねっ♥」
射精しても尚、硬く滾る肉棒を舐めしゃぶる飛鳥。 真奈美も竿に舌を伸ばして滴る精液を舐め取り、味わうように嚥下してゆく。
「うふふ♪ 宏君、私達のオッパイで気持ち好くなってくれたのね。でも、まだまだ元気♥ なら、今度は……ね♥」
「判ってる。今度は俺が交互に可愛がるから♥」
宏はM字仰向けの飛鳥に真奈美を四つん這いで覆い被らせ、無毛の股間同士を重ね合わせた。
「それじゃ、レッツ、インサート!」
気の向くままに熱くぬかるんだ秘孔を挿し歩いては潮を噴かせ、それぞれに射精を繰り返す宏。
「はぁん! 宏先輩がゴリゴリ膣内(なか)を抉ってる~♥ 熱い精液刷り込まれてるぅ~♥ 真奈美さんのデカ乳も気持ち好いっ♪ オッパイはフカフカなのにコリコリの乳首が擦れて……またイッちゃうっ!」
「あん♥ あん♥ あん♥ 宏君のおちんちんが私のおまんこに挿ってるぅ♥ 飛鳥ちゃんのオッパイ、プリプリしてて気持ちイイッ♪ もっと抉って……もっと乳首擦ってぇっ! 宏君の濃ゆい精液注がれてイクぅ~~~♥」
「二人共、とっても綺麗だ♪ 飛鳥ちゃん、真奈美さん、愛してるよっ♥」
宏が選んだこの組合せは、飛鳥と真奈美の結び付きをより強固にする結果となった――。
(つづく)
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