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     ~ラブラブハーレムの世界へようこそ♪~


恋仲(5) 恋仲(5) 美姉妹といっしょ♪~新婚編
 
 朝に晶が寝過ごし、昼に宏とほのかのバカップル振りが多数目撃された、その日の夜。
 晶は、ほのか相手に息巻いていた。
 ただし、一糸纏わぬ姿で。

「まったく、ヒロとほのかの昼食シーンを映した写メ動画を最初に見た瞬間、きっちり十秒は心臓止まったわよ!」

「いっや~、そんなに褒めるなよ。照れるじゃん♪」

「こっ……このおバカ! 褒めて無いっ! 写メ見せられた、あたしの立場ってモンを考えてよね!」

 真っ先に全裸に剥いた宏の腰に跨り、腰を上下左右に蠢かしつつ目の前の金髪碧眼ハーフ美女を責める晶。
 豊かに揺れるDカップの双丘はそのままに、夫の肉棒を貪る様は相も変わらず妖艶だ。

「写メ? 立場?」

 そして、晶の目の前には宏の顔面に無毛の股間を載せている、オールヌードのほのかが。
 夫である宏の鼻筋に縦筋を宛がい、溢れる愛液を塗り込んでいるかのように腰を前後に動かしている。
 宏の部屋では晶、ほのかの他に、夏穂、多恵子、優、真奈美もスッポンポンとなり、美女六人による饗宴(饗艶?)が繰り広げられている真っ最中なのだ。
 ベッド中央で仰向けになった宏に、真っ先に騎乗位で合体したのが筆頭妻の晶、続いて顔面に跨ったほのか、そして左右の手に跨ったのは多恵子と真奈美で、呑みに忙しい夏穂とそれに付き合う優の二人はベッドサイドのテーブルで待機中だ。

「そうよ! 事務の同僚からタブレット端末差し出されて、『晶さんも、お家(うち)ではこんな風に、旦那様に、あ~ん♥ とかしてるんですかぁ?』なんて笑いながら尋ねられたんだから! しかもオフィス中ひとり残らずニヤニヤしてあたしを窺ってるモンだから、部長職の肩書きが泣いたわよ!」

「同僚から? またなんで?」

 本気で知らないのか、ポカンとするほのか。
 しかし、腰の動きだけは止(とど)まる事を知らない。
 それはまるで、宏の顔でオナニーに耽っているようにも見えてしまう。

「あたしのいる丸の内とアンタのいる羽田の事務担当のお姉様方が同期だから、ヒロとほのかの様子が情報として逐一飛び交うのよ! いつどこでナニをどうした、ってね! しかも、アンタ等のランチの様子が一挙手一投足、U-チューブに投稿され、それが親会社やグループ会社の全社員に一斉配信されてたのよ! お陰で、廊下で擦れ違う度にひとり残らず囃し立てられ閉口したんだからっ!」

 ほのかの高い鼻に己の鼻が付く程に迫り、瞳を吊り上げ口角泡を飛ばす晶。
 しかし。

「晶ちゃん、シリアスなコト言ってるけど、宏クンを貪る動きだけは止(や)めないわね~。流石、才女だけあるわ」

「……才女は関係無いと思うけど、まぁ、お姉ちゃんだからね。身体と頭が別々に働く事が、ままあるし」

 缶ビールを片時も離さない夏穂の大笑いと、晶の双子の妹である優の淡々とした突っ込みを受けていた。
 幸い(?)、ヒートアップしている晶にはその声は届かない。
 なにせ、晶とほのかはバランスを取る為に両手を握り合い、いつキスしてもおかしくない程接近しているのだから。
 片や、そんな晶の言葉で己の属する会社の一面(裏面?)を垣間見た宏がポツリとひと言。

「お、恐るべし給湯室ネットワーク。女子社員同士の繋がりは侮れん。うん、俺も女子社員は大切にせんと」

 腰を突き上げつつほのかの熱くぬかるんだ淫裂を舌先で舐め上げ、両方の人差し指と中指で二つの蜜壷を擦り上げる宏は硬く決意するのだった。

「ん……んふん♥」

「んぁ……ぁぁぁあぅん♥」

 一方、宏の手に跨る多恵子と真奈美も、晶とほのかの会話を邪魔しては拙いと思っているのか、荒い吐息のまま夫の手淫に身を任せている。
 片手は己のバストを揉みしだきつつ屹立する乳首を摘み、もう片手の人差し指を咥えて声を出すまいとするその姿はいじらしい。
 その間にも、晶とほのかの言い合いは続く。

「あたしの肩書きに傷を付けるようなマネ、今後一切しないでよねっ!」

「オマエの立場なんぞ知るもんか。オレは宏と一緒に昼メシ、食べてただけだぜ? だのに、何でそこまで言われにゃならんのだ?」

「アンタは只でさえその容姿で目立つんだから少しは回りの目も考えて行動しろって事よ! アンタがどこでナニしようと勝手だけど、社内の風紀を乱さないで!」

「風紀なんぞ乱して無いぞ? 単に、夫婦として一緒に弁当を食べると言うスキンシップをだな――」

「だーかーらーっ! アンタ等の『あ~ん♥』が過激過ぎて他の独身者が困惑、当惑、迷惑してるって話しでしょっ!」

「はぅっ!」

 晶がほのかに向かって咆えた途端、宏からカエルが潰されたような呻き声が上がった。
 どうやら、膣奥(おく)に咥えたまま肉棒を少し変な方向へ捻ってしまったらしい。

(あんっ♥ 今の腰の動き、気持ち好かったわね。も一回、してみようかしら)

 あくまで快楽に正直な晶だった。

「迷惑? どこが? 他の独身者って、どこの誰?」

 ほのかはほのかで会話しつつ一定のペースで腰を前後に揺さ振り、快楽を貪っている。
 その所為か、宏の顔面はすっかりほのかの愛液塗れになっていた。
 宏が啜る粘っこい水音は途切れる事を知らず、ハーフ美女の欲情振りを示してもいる。

「ほのかさん、きっとそれ、コ・パイの澪さんと副所長さんの事じゃない? ホラ、俺達が昼メシ食べてたら澪さんの方から箸が折れる音がしたし、副所長さんが座ってた辺りから何か潰れるような音がしてたじゃん」

 ここで、ほのかの夫であり晶の夫でもある宏から絶妙なタイミングでフォロー(?)が入る。
 しかし、顔面と腰に裸の美女二人を跨らせたままなので、一見するとほのかの股間が喋っているようにも聞こえる。
 実際、ほのかの下の口は宏の口と重なっているのだから。
 因みに、澪は機長であるほのかとコンビを組んでいる二十四歳独身のコ・パイ(副機長)で、副所長(三十六歳・独身)は宏とほのかの勤める羽田事務所の、直接の上司に当たる人物だ。

「そうか? オレはち~っとも、気付かんかったぞ? むしろ、みんながオレ達を見る目が羨望に満ちてたと思ってたぜ? あははははっ! これぞ究極のオフィスラブ♥ だ」

「あ、アンタのその自信、いったいどこから来るのよ……」

 宏の顔に跨ったまま高笑いするほのかに唖然とする晶。
 しかし腰の動きは止まらない。
 筆頭妻らしく自らのペースで上下に動き、時折、腰を強く宏の股間に押し付けてもいる。
 根本まで剥き出しになっている秘核を宏の恥丘に押し当て快感を貪ってもいるのだ。

「と、とにかく! ほのかの無神経振りがよ~く判るエピソード、どうもありがとう、ヒロ」

「あはは、俺も褒められちった♪」

「だから褒めて無いって、さっきっから言ってるでしょうがっ! 二人して何、ボケてんのよっ!」

 夫のお茶目(?)に、怒髪天を衝く勢いで咆える晶。

(ったく、ヒロがそんなんだから、ほのかが図に乗るのよ! もう少し、夫としての威厳を持ってよねっ!)

「って、晶姉! 激しいってば! もっと抑えて! は、外れる! うわっ!? そんな方向に動いたら折れるってっ!」

 ほのかの股間から口を外した宏が慌てて懇願して来た。
 どうやら怒りに我を忘れた結果、少々腰の動きが荒くなったようだ。

(あらら、ヒロったら泣きそうな声、上げちゃってカワイイ♥ もっと虐めたくなっちゃうじゃない♥)

 萌え心に火が点き掛けるが、それでもほのかに対する腹の虫はまだ治まらない。

「しかもナニっ!? ほのか、アンタ、あたしに内緒でヒロと同じお弁当、作って貰ってたんだって!? 夕方、多恵子さんに聞いた時は耳を疑ったわよ! これはあたしに対する冒涜、裏切り、反逆、謀反よっ!」

 目の前の北欧産金髪碧眼ハーフ美女に食って掛かる、黒髪を振り乱した純国産の美女ひとり。
 しかし、話しの論点が当初から微妙~にずれ始めている事に、本人は気付かない。

「何だよ、冒涜って。だったら、宏と同じ弁当を食べたいと切望した夏穂さん、飛鳥ちゃんと美優樹ちゃんも同罪ってか? 美優樹ちゃんがオマエに謀反を企てた、ってか?」

「そうは言って無い! あたしに内緒で楽しそうな事、するんじゃ無いってコトよ!」

「言ってんじゃん。なぁ、宏?」

 同意を誘うほのかの視線がに宏に向くが、宏の顔面上にはほのかの無毛の股間があるので表情は窺えない。
 宏はナニやらモゴモゴ言っているようだが、果たして言葉を発しているのか単に目の前の淫裂を貪っているのかは、誰にも判らない。
 と、ここで晶はほのかの発した言葉に、引っ掛かりを感じた。

「――って、チョッと待て。夏穂先生と飛鳥ちゃんと美優樹ちゃんも同じ弁当食べてるだって!?」

 ここで初めて、晶の(腰の)動きがピタリと止まる。
 しかも腰を浮かせたタイミングなので、愛液に塗れた宏の肉槍の先端――亀頭部分が晶の朱(あか)く色付く淫裂の秘所地に潜り込んでいる様が周囲から丸見えの状態で、だ。

「何だ、そんな、鳩が豆鉄砲を食ったような顔して? もしかして知らなかったのか? オレが宏と同じ弁当作って欲しいって千恵ちゃんに頼んでたのを夏穂先生が聞いてて、翌日に夏穂さん、更にその翌日には飛鳥ちゃんと美優樹ちゃんも弁当箱、用意して千恵ちゃんに頼んでたんだぜ?」

「う、嘘っ! 本気(マジ)でっ!?」

「そのいずれもオマエ、リビングにいただろうが。もっとも、宏と話し込んでたりミケ相手にじゃれてたりしてたから、聞いてたかどうかまでは、オレは知らんが」

 我関せずと言った表情のまま、相も変わらず宏の顔に淫裂を擦り付けているほのか。
 ミケとは、真奈美が昨年秋に助けた雌の仔猫で、ほのかはミケと呼んで可愛がっているのだ。

「そ、そんなの聞いて無いし、今初めて知ったわよ! それじゃ、あの新しい四つの弁当箱って……」

 弁当箱四個の持ち主が全て判明した瞬間、晶はきっちり十秒、フリーズしてしまった。
 しかも身体を小さくプルプル震わせてもいる。

「晶?」

 ほのかは突然フリーズした晶を訝しみ、視線を向ける。
 そんな、感情丸出しな筆頭妻を「まぁまぁ」と宥める美女がひとり。

「晶さん? 愕然とするお気持ちは判らなくもありませんが、今は宏さんとの、大切な夫婦の時間ですから……ね」

 暗に、これ以上の口論は止めましょうと言っているのが誰の目にも明らかなのだが、頭に完全に血が昇った晶には通じない。

「へ? あ、いや、多恵子さん、しかしですね。このままほのかの独善と暴走を見過ごすとなると、職場でのあたしの威厳と立場を揺るがしかねない事態になりかねない――」

「晶さん」

「う゛っ!?」

 言い逸る晶だが、多恵子の底を見透かすような瞳と唇に人差し指を当てる仕草に射竦められてしまう。

「す、すみません。少し熱くなってしまって」

(多恵子さんに見つめられると、どうしても反論出来無いわね。今朝もそうだったし)

 冷や水を浴びせられたかのように、急激に我を取り戻す晶。
 この切り替えの好さも、筆頭妻たる所以だろう。

「いいえ、判って下さって幸いですわ。 それでは、宏さんとの逢瀬、再開しましょうか♥ おほほほほ♪」

 いつもと変わらぬ多恵子の明るい笑い声が屋敷に響き、掻き乱れた晶の心を解きほぐすには充分な効果を上げたのだった――。


                                            (つづく)

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メヌエット(1) メヌエット(1) 美姉妹といっしょ♪~新婚編
 
 頬を撫でる風が日増しに冷たさを増し、街の木々が色鮮やかな黄色や赤に染まった十一月の下旬。

「んと……はい、これで間違いありません」

 宏は休日を利用し、単身、東京駅八重洲口にある、とあるチケットセンターを訪ねていた。
 そこでは一般客が利用する賑やかなカウンターとは別に、店の奥にある静かで落ち着いた雰囲気の応接室に通されていた。
 しかも、ソファーに座るや紅茶とショコラケーキが目の前に置かれると言う高待遇で、だ。

「宏様には今回も弊社をご選択戴き、誠にありがとうございます。スタッフ一同、心より感謝致します」

「いえいえ、こちらこそお忙しい時期にお手数をお掛けして申し訳ありませんでした」

 ガラステーブルを挟んだ正面に座り、終始にこやかに対応してくれたセミロングの銀髪が美しいミドルレディー(ここの支店長だそうだ)に深々と頭を下げられた宏は、腰が深く沈み込むソファーから何とか上体を起こし、頭(こうべ)を垂れる。

「私共も、再び宏様御一行のお手伝いが出来て光栄でございます。そこで、今回は私共から、ささやかながら――」

「ありがとうございます。その節は宜しくお願い致します」

 胸の前で両手を合わせる支店長に最大限の微笑みを向け、再び小さく頭を下げた宏は逸る心を何とか鎮める。
 それでも、身体の芯から湧き上がる感情には逆らえなかった。
 心の中では拳を高々と掲げ、ガッツポーズを決めていた。

(よし! これで最大の懸念だった『足』が確保出来たぞ!)


     ☆     ☆     ☆


「晶姉、頼んでおいた件、どうだった?」

 その日の夜。
 一戦目(妻達との裸のスキンシップだ♥)を終えて休憩中の宏は四歳上の従姉であり筆頭妻の晶とトイレを入れ替わる際、そっと小声で尋ねた。
 屋敷の二階西側にあるこのトイレは宏の自室に隣接しているので、万が一にも部屋にいる別の妻達に内容が漏れると拙いのだ。
 すると、晶は夫の意志を読み取ったのかチラリと目線をくれるや微笑み、無言のまま小さく頷いた。

「了解。ありがと♪」

「ん」

 擦れ違い様にもう一度小さく頷いた晶は、次の瞬間には素知らぬ顔で宏のベッドに戻り、次のスキンシップに備えてガウンを脱ぎ捨てる。
 当然、その下には何も身に着けてはいない。

(晶姉、二回戦目も犯(や)る気満々だな。他のみんなは息上がってるのに、タフだよなぁ)

 宏の部屋に置かれた特注のキングサイズベッドには千恵、若菜、飛鳥、美優樹の四人が全裸のまま、気怠げに伏せている。
 皆、先の一戦で派手に気をやってしまったのだ。

(みんな、最初(はな)っからイキ捲ってたから、そりゃバテるよなぁ。美優樹ちゃんと千恵姉は仲好く手を握り合って安らかな寝息立ててるし、こっちの二人は……)

 殊に、仰向けの飛鳥と四つん這いで覆い被さる若菜の二人は重なったままピクリとも動かない。
 オマケに、宏と合体した姿のままなので愛液と潮に塗れた無毛の股間が丸見えになっている。
 宏の妻達は全員、股間の翳りが一切無いのだ。

(若姉と飛鳥ちゃん、互いに見せ付けるようによがってたから余計に疲れたのかも――って、若姉から垂れたのが飛鳥ちゃんのパイパンマンコに滴って……これはこれでそそるなぁ♪)

 若菜に膣内射精(なかだし)した白濁液と飛鳥に注いだ精液がひとつに合わさりシーツに拡がってゆく様が目に飛び込んで来た。
 しかも重なる二人のバストが互いに潰され、ボディの横からはみ出ている様が何とも妖艶で色っぽく、五回射精(だ)した肉棒にみるみる血液が集まる要素にもなる。

(ひと休みしたら、今度は飛鳥ちゃんから抱きたいな。あの、絶妙な微乳の揉み心地がたまらんし♪ で、それはそれとして――)

 横目でみんなの様子を窺った宏はトイレに籠もるや喜色満面、全身でガッツポーズを決めた。

(――晶姉に頼んでおいた件も片付いたし、これで全ての準備が整ったぞ! あとは実行あるのみ!)

 余りの嬉しさに、宏はいつまでも戻らない夫を心配した(実際は焦れて我慢出来無くなった)晶がドアをノックするまで狭いトイレで狂喜乱舞していた――。


     ☆     ☆     ☆


 色取り取りなイルミネーションに飾られた街の商店街ではクリスマスソングが絶え間無く流れ、歩道を行き交う人々もコートの襟を立てつつ週末に控えるクリスマスをどう過ごすのか盛り上がっている頃。

「さて。みんな自分の部屋の戸締まりは確認したかな? 忘れ物は無い? 好ければ出発しようか」

「「「「「「「「「「は~い♪」」」」」」」」」」

 宏が妻十人を率い、留守番役の仔猫に見送られながら朝靄に煙る屋敷を後にしたのが約九十分前。
 一行は様々な国籍の人達で賑わう羽田空港の国際線ターミナルに来ていた。

「ねぇ、宏ちゃん~。今年の年末年始は海外で過ごすって話しだけど、どこ行くの~?」

 車寄せからチェックインカウンターまでの道すがら、左隣を歩く若菜がニコニコ顔で尋ねて来た。
 濡れ羽色に煌めくストレートロングの髪と先端を縛った純白のリボンが腰の上で軽やかに弾み、浮き立つ心情を表しているかのようだ。
 紫色のトレーナーとバギーパンツの組合せも、シンプルだが決まっている。

「えっとね、それは――」

「こら! おのれは何度聞けば気が済むのよ! あと数分もすれば判るんだから、それまで大人しくしてろって!」

 宏が返事するよりも先に、千恵の右膝が若菜の尻にクリーンヒットした。
 千恵は若菜のやや左後方を歩き、しかも右手には小振りなカートを牽いていたので手よりも足が先に出たらしい。

「きゃん! いった~い! 姉さん、横暴~!」

 振り向き様に頬を膨らませ、口を尖らせ抗議する若菜に、毎度の事とばかり笑いの波が一行に拡がる。
 宏も、二歳上の幼馴染でもある双子の美姉妹(しまい)に相好を崩す。

「あはは! 千恵姉、俺は構わないよ。どのみち、チェックインする時に判る事だし」

「まぁ、宏がそう言うなら……ふふ、しょうがないなぁ♪ 宏と行く久々の海外だし、勘弁してやるか」

 千恵は眉根を寄せ不満そうに言うものの、次の瞬間には満面の笑みに戻っている。
 どうやら妹への蹴りは、旅行に行く嬉しさの裏返しらしい。
 その証拠に、高く結い上げた赤いリボンとロングポニーテールが若菜同様、ピョンピョン跳ねている。
 こちらは赤で揃えたトレーナーと黒のレギンスにジーンズスカートを纏っている。

「ま、今回の旅は、カレンダーの並びで会社のクリスマス休暇と年末年始の休みがひと続きになったからみんなで海外に、って事さ」

 そんな宏の言葉に、筆頭妻らしく夫の右隣をしかとキープし、旅の企画に妻達の中では唯一加担した晶が笑顔で後を引き取った。

「みんなも知っての通り、ヒロやあたしの所属する会社は外資系だから、日本では馴染みの無いクリスマス休暇が歴然として存在するのよ。取引先の多くも海外企業だから、今の時期は殆ど休みだし」

 晶は今年で二十六歳、心身共に円熟味を増した美女である。
 仕事中はビジネススーツをビシッと纏い、凜とした表情と態度を崩さないが、プライベートタイムでは一転、表情はより豊かに、仕草も年相応以上に若々しくなる。
 現に、早暁の出発にも係わらず起床からずっと笑みを絶やさず、纏う衣装も手編みのハイネックセーターとスリムジーンズと言う出で立ちだ。

(晶姉も、久々にプライベートで海外行くからルンルン気分みたいだ。ま、回りの景色見れば誰だってそうなるよなぁ)

 窓の外では出国気分を煽るかのように各国の旅客機が所狭しと動き回り、その奥では翼をしならせた大型ジェット機が数分おきに轟音と共に雲ひとつ無い蒼空へ飛び立ってゆく。
 ターミナル内に目を移せば髪の色や瞳の色、肌の色や纏う衣装が地球人類の見本市みたく揃い、朝の時間帯にも係わらず大いに賑わっている。

(あ、そっか。今はヨーロッパや中東からの便が数多く到着する頃合いだっけ)

 目の前を横切る外国人越しに窓の外をぼんやり眺めている間にも、晶の熱弁が続いていた。

「しかも、あたし等が所属してるのは日本支社だから、日本の文化とも言える盆暮れ休暇が当然あるし、取引先もそんな状況だから、この期間はぶっちゃけ、仕事が無いのよ」

 苦笑いし、ヒョイと肩を竦める晶だが、足取りは誰よりも軽く、真っ先に進みたがっているようにも見える。
 そこへ、宏の就業に際し絶大な功績を上げたほかが更なる補足をしてくれた。

「だからクリスマス直前から松が明けるまでの約二週間、日本支社の連中はまるまる休暇に充てる者が殆どなのさ。重役連中の出張すらこの期間は無いから、オレ達を含めてみんな一斉に休暇が取れるのさ」

 波打つ金髪を朝日に煌めかせ、サムズアップしたほのかが微笑みながらウィンクする。
 晶と同い年のほのかは北欧生まれのハーフ美女(父親が日本人なのだ)だけあって、国際線ターミナルに立つとひと際、画になる。
 切れ長の碧眼と彫りの深い美顔、染みひとつ無い白い肌とスラリと長い手足はスーパーモデルも裸足で逃げ出す程だ。
 それは着古した真っ赤なトレーナーとダメージジーンズを纏っていても、人目を引くには余りある程に。
 他にも、晶の双子の妹の優(蒼のトレーナーとデニムのミニスカート)、晶の大学の後輩で二十五歳の真奈美(オフショルダーのセーターとチノパン)と言った美女も、簡素な衣装ながら充分、注目の的になっている。

(優姉と真奈美さんも、俺のドッキリにすっかり慣れたなぁ。今回だって数日前に行き先秘密で海外へ行くって言ったら、ニコニコするだけで余計な詮索、しないもん)

 宏が一年半前に晶、優、ほのか、真奈美、千恵、若菜の六人にドッキリハネム~ンを仕掛けて以降、幾つかのドッキリを企て実行して来ただけあって、夫の隠密企画にはすっかり慣れっこになっているらしい。
 むしろ、それを楽しんでいる節も見受けられるのでドッキリを企てる宏としては遣り甲斐があると言うものだ。

「ま、飛鳥ちゃんと美優樹ちゃんの学生組は四週間の冬休みになったばかりだし、現役教師の夏穂先生も仕事の都合が上手い具合に付いたからね。このチャンスを逃す手は無いって考えたんだ」

 最後は宏が引き取り、この旅が実行されるに至った決め手を暴露する。

「幸い、チケットが往復分、取れたからね♪」

 ほのかを真似てサムズアップとウィンクで応える宏。

(なにせ、民族大移動の真っ最中に人数分のチケットが取れるなんて望み薄だったし)

 ひと月前に東京八重洲口に居を構える航空会社(エアライン)のチケットセンター(兼・日本支社)に自ら赴き、期待半分諦め半分で往復航空券を申し込んだ時の、ハラハラドキドキ感。
 そして「宏様いらっしゃいませ! ようこそお越し戴きました」と支店長自ら出迎えてくれ、にこやかに「ご希望の日程でお席をご用意致しました」と言われた時の、あの歓喜の瞬間。

(よもや、すんなり取れるとは想像して無かったからなぁ。余りに簡単に取れたから逆に拍子抜けした位だし)

 今回、尽力してくれた女性支店長の笑顔が頭にポワンと浮かぶ。

(今回使う欧州系のエアラインは二度目だけど、あの支店長さん、初対面なのに俺の事を知ってたもんな)

 それとなく理由を聞くと、羽田空港で挙げたあの結婚式が航空業界にも広く知れ渡っているとの由。
 どうやら式の様子を映した海賊版のブルーレイディスクやらDVDやらビデオテープやら動画データ等が日本を発着とする各航空会社に出回っているらしい。

(氏名と面が割れて、まるで指名手配されてるみたいだけどねー)

 余り愉快な事では無いので、つい苦笑いしてしまう。

(でもまぁ、それで特別サービスが付加されるのなら悪い事じゃ無いわな。実際、今回だって送迎のマイクロバスを屋敷まで出してくれたし、人数分のスーツケースの運搬も同時に引き受けてくれたから至れり尽くせりだよなぁ♪ しかも、帰りも屋敷まで送迎してくれるって言うし!)

 宏達は航空会社のロゴが入ったマイクロバスで屋敷から羽田の国際線ターミナルまで送って貰っていたのだ。
 しかも、屋敷の玄関に山積みとなっていたスーツケース十一個を運転手さんがあっという間にバス後部のカーゴスペースに積み込む手際の好さに、宏達は感心し感動もしていたのだ。

(ま、こうして身軽に動けるのも、往復で乗るエアラインのお陰だな)

 人数分のスーツケースは到着と同時に出迎えてくれたグランドスタッフによってチェックインカウンターまで運ばれているので、宏達は皆、手荷物ひとつだけなのだ。
 晶は仕事でも使うジュラルミン製の小型カートを牽き、ほのかは右肩に小振りなバッグを掛けている。
 他の妻達も似た様なスタイルなので、一見すると近場のリゾートへ一泊二日の小旅行にでも行くかのよう。
 とてもこれから二週間の海外バカンスへ旅立つようには見えない。

(これも、機内持ち込みのサイズを晶姉がみんなに周知してくれたお陰だな)

 仕事上、飛行機を使って出張する重役のサポートを多々手掛ける晶ならではの手腕に、宏は改めて感謝の視線を向けるのだった。

「まぁ、そんなこんなで今回の旅行と相成った訳だから、みんな楽しんでね。特に多恵子さん、夏穂先生、飛鳥ちゃん、美優樹ちゃんは初めての海外だし♪」

 宏の顔が、到着早々物珍しそうに周囲を見渡し続けている四人に向く。
 この四人は春先に下地島で宏と結婚式を挙げる際に、ここ羽田から発ってはいるが、それはあくまで日本人で溢れ返る国内線ターミナルであり、今回は外国人が多数闊歩する国際線ターミナルなので(窓の外は国外の旅客機が多数見える)、早々と外国の雰囲気を感じ取っているのかもしれない。
 果たして。

「いっや~、宏クンと出掛けると何が起きるか、どこへ連れてってくれるか楽しみだわ♪」

 赤ら顔の夏穂が缶ビール片手に大笑いする。
 この恩師、送迎のマイクロバスに乗るや否や呑み始めたから恐れ入る。
 しかも、

「飛行機乗ると機内の気圧が低くなって酔いが回るからもう止めた方が……。第一、その格好のまま公の場所で缶ビール呷るのは絶対に拙い……」

 と、宏や晶、千恵が何度忠告しても聞き入れないのだ。
 挙げ句に、

「前回、宮古島への機内で経験したから大丈夫! 身体も慣れてるから酔わないわよ~♪ 服装だって見て見ぬ振り、してくれるわよぉ♪」

 だそうだ。
 オマケに、

「酔っても寝れば醒めるから平気~♪ アルコールがウチの原動力~♪」

 などと豪語し、ここへ来る間に数本の缶ビールを空けていたのだ。
 昨夜も『前夜祭♪』と称して、ほのかと二人で(当然の如く宏も餌食となった)深夜まで酒盛りしていたのに、大したものである。

「夏穂先生、ご機嫌なのは好いですけど、その格好はいったい……」

 二日酔いには強い(ならない)宏が屋敷を出てからずっと気になっていた恩師の服装について、改めて尋ねる。
 マイクロバスの車中では何度か翻意を促したが、本人は缶ビールを空けるのに忙しいと取り合ってもくれないのだ。
 すると、気分上々のお陰か、はたまた酔った勢いかは判らないが、本人の口からやっと応えが返って来た。

「へっへ~、宏クンとの初・海外デートだもん。勝負服に決まってるでしょーが♪」

 手にした缶ビールを突き付け、思いっきりのドヤ顔でポーズを決める夏穂。
 その余りに自信満々な態度に、まるで尋ねたこちらが誤っているのかとさえ思ってしまう。

「勝負服? それが?」

 夏穂の勝負服発言に宏は勿論、その場にいる妻達(ひとりだけ手で顔を覆い天を仰いだ)が一斉に首を傾げ、訝しむ視線を向ける。
 なぜなら。

「あの~、夏穂先生? どこからどう見ても、それって……セーラー服、ですよね?」

 襟と袖に臙脂色のラインが三本入った黒のセーラー服を身に纏い、その場でクルリと一回転する夏穂。
 肩を覆うセミロングの黒髪と膝上までのプリーツスカートがフワリと舞い上がり、黒のストッキングに包まれた太腿が露わになると同時に取り巻くギャラリーから感嘆の声が上がる。
 しかも、黒のガーターベルトをきっちり装着しているから開いた口が塞がらない。

(か、夏穂先生ってば、容姿が若いのに外見(そとみ)の衣装まで若くしたら、本気(マジ)で女子高生に見えるから凄いよなぁ。それでいて下着は超色っぺ~モノ、着けてるし、あれで三十二歳なんだから恐れ入るわ。多恵子さんも、ともすれば小 学生に見えなくもないし……若く見える遺伝子、侮りがたし!)

 そんな宏の思いを余所に、酔っ払い夏穂の暴走が続く。

「そうよん♪ 宏クンが引率の担任でぇ、ウチが担任に身と心を捧げた女子高生よん♥ 因みに、これは冬服バージョンだからね♪」

 最後に右手を頭に、左手を腰に当て、思いっ切り「しな」を作って決めポーズ(?)を取る、三十二歳の、なんちゃって女子高生。
 これが私立の女子高で教鞭を執り、生徒達から絶大な支持を得ている(本人談)担任教師とは到底……否、絶対に思えない。
 しかも、自ら女子高生と言い張りつつ缶ビールを豪快に呷るのだから始末に負えない。
 そんな、余りのふてぶてしさに一同が唖然としていると、宏の背中をツンツンと突(つつ)く、ひとりの妻が。

「宏さん。いっそ、空港警察に突き出してわたくし達だけで旅行する事を強く推奨致しますわ」

 眉根を寄せ、思いっ切り渋い顔をした多恵子だ。

「このまま出国させたら宏さんが悪者になってしまいます。ひいては日本の恥です」

 そして、辛辣なお言葉まで。

「わたくし、今朝から何度も着替えるよう言ったのですが聞き入れなくて。昨夜の準備段階では、てっきり宿泊先でコスプレする為に持って行くものとばかり思っていたものですから、よもやお屋敷を出る時から着るとは思ってもみませんでした。姉として監督不行届で申し訳ございません」

 一転、済まなそうに目線を下げる多恵子。

「わたくしの力が及ばず、宏さんや皆様に見苦しいモノを晒すハメになってしまいました」

 どうやら姉として妹の暴挙を止められず、心苦しく感じているらしい。

「あ、それでさっき、勝負服云々の所で、手で顔を覆ったんですか?」

 宏の指摘に、恥ずかしそうに頷く多恵子。
 それでも、姉としての矜持なのか、凜とした表情で見つめて来た。

「宏さん。夏穂ちゃんはこのまま捨て置きましょう。これは……燃えるゴミで好いのかしら? それとも危険物?」

 散々扱き下ろしつつも右手を伸ばし、宏が纏うジャンバーの裾をチョコンと摘んで来た。
 その瞳は潤んでいるようにも見え、宏の心拍数が一段、上がる。
 なにせ多恵子は小柄な体格ながらメリハリのあるボディラインなので、美女揃いの集団にあっても、少しも見劣りしないのだ。
 むしろ、小柄だからこそ注目されているようなものなのだ。

「多恵子さん……。多恵子さんの白いワンピース、メチャ素敵です。まるで妖精のようで、俺、朝見た瞬間にときめいちゃいました」

 宏の視線(と周囲の視線)が多恵子に集まる。
 多恵子は屋敷最年長の三十八歳にして二児――飛鳥と美優樹の母なのだが、外見は全く違う。
 広い額に若々しい小顔、そして低い身長(百四十八センチなのだ)なので妹である夏穂(百七十センチ)や飛鳥と美優樹(二人して百八十センチなのだ)と並ぶと、どこからどう見ても四姉妹の末っ子にしか見えないのだ。
 そんな、ロリっ娘(?)多恵子が身に纏うのは、白のレースがふんだんにあしらわれたサテン地のワンピース。
 しかも、肩にはシルクのショールが。
 アップに纏めた黒髪と相まって、一見すると、お忍びで来日したどこぞの姫様に見えなくも無い。
 現に、送迎バスを降りてからここまで擦れ違う人達は例外無く振り返り、多恵子に視線(携帯やカメラ)を向けて来たのだから。

「うふふ♪ 宏さんのお気に召して貰えて嬉しい限りですわ♥ おほほのほ♪」

「多恵子さん♥」

 一挙手一投足が妙~に色っぽい多恵子に、目が外せない宏だった。

「と、ところで宏先輩!」

 そんな、宏の熱視線を引き寄せた夏穂と多恵子に嫉妬するかのような飛鳥の声が。

「私達の結婚式の時は、宏先輩が『デートしようか』って言うから付いて行ったら宮古島まで飛行機乗せられたけど、今回も行き先、最後まで教えてくれなかったですね」

 白の長袖シャツに赤のミニスカート姿の飛鳥が真っ直ぐ見つめながら身体ごと擦り寄って来た。
 その仕草はじゃれつく小猫を彷彿とさせるが、時折、珍しそうに周囲をチラチラと見渡してもいる。

「あはは♪ みんなを驚かせたくてチェックインするまで秘密にしておきたかったからね――って、飛鳥ちゃん?」

「あ、スミマセン! 同じ羽田でも、前に来たターミナルとは雰囲気が全然違うんだなー、って思っちゃって」

「そっか、こちら側は免税店や有名ブランド店が並んでるし、耳に入る会話も日本語よか英語とかフランス語の方が断然多いもんね。しかも、こっちには日本を紹介するブースもあるしね」

 今はどこへ行くのかよりも、国際空港ならではの造りと雰囲気に興味津々らしい。

(それにしても飛鳥ちゃん、今日もバッチリ決まってるなぁ♥ 可愛いなぁ♥)

 飛鳥と同居し始めてから一年少々、妻に迎えてから半年以上経つが、宏の飛鳥へ向ける熱視線は一向に衰える事を知らない。
 飛鳥は現在、総合女子大の文学部に通う二年生で、宏と同じ中学と高校に通った二歳下の同窓生であり、同じ部活仲間――陸上部の後輩でもあるのだ。

(飛鳥ちゃんの長い脚を最大限に魅せるアイテムだよなぁ、アレって)

 宏の熱視線(レーザービーム?)が後輩の足下から徐々に上に向かってスキャンし出す。

(飛鳥ちゃんは脚が長いから、ミニスカと黒のサイハイソックスの組合せが一番、映えるんだよなぁ♪ あぁ、あの絶対領域に早く頬擦りしてぇ~)

 朝っぱらから場所もわきまえず、エロい方向へ思考が向き始める宏。
 当然(?)、パンツの中でも『如意棒』がご主人の意志を反映してムクムクと成長し始めてもいる。

(やべっ! 勃(た)っちまった! こんなの、誰かに見つかったらナニ言われるか判ったモンじゃねぇ!)

 もっとも、妖艶な「なんちゃって女子高生」の夏穂、幼い容姿ながら「艶っぽい」多恵子、そして「絶対領域」が目に眩しい飛鳥と三連コンボを食らえば、誰だってそうなるだろう。

(けど、厚手のジーンズ穿いてるからバレないよな?)

 内心、必死に円周率を唱える宏だった(3.14までしか知らなかったが)。
 そんな、額に汗する夫を見かねたのか、それとも股間の膨らみに気付いたのかは不明だが、

「宏さん、今日は小春日和で温かく、絶好の旅行日和ですね。それでお姉ちゃん。私達は宏さんに黙って付いて行けば好いのよ」

 飛鳥の反対側から、お屋敷最年少の妻が微笑みながらそっと寄り添って来た。

「美優樹ちゃん!」

(た、助かった~。渡りに船とはこの事か!)

 僅かでも気を紛らわす事さえ出来れば、これ以上勃起肉に血液が集まる事は無い。
 宏のズボンの膨らみも、美優樹に視線を移している隙に平常時へとシフトする。

(美優樹ちゃん、海外へ行くにも黒のゴスロリドレスなんだな。まぁ、外国の人には大受けしてるけど)

 今や日本のゴスロリファッションは広く海外に浸透し人気を博しているので、空港ターミナルを行き交う人達の半数以上が携帯やらスマホやらを美優樹にも向けて来るのだ。

(頭には白レースで縁取られた黒のヘッドドレスを載せ、足首まで隠れる長袖のドレスも袖や裾が白レースで飾られてるし、しかも今日は黒のロング手袋までしてるから、美優樹ちゃん自身、気合が入ってるみたいだ。ドレスも冬バージョンだって、今朝言ってたし)

 宏の視線が改めて十七歳の少女へ向く。
 歳は若くとも、れっきとした宏の妻なのだ。
 美優樹は姉の飛鳥と同じ大学に通う工学部在籍の二年生で、中学高校と飛び級を繰り返した才女でもある。

(腰まで伸ばした栗色のツインテールは陽の光を受けて煌めいているし、九頭身ボディの色香は八頭身ボディの晶姉やほのかさんにも引けを取らないし)

 それが姉である飛鳥と服装以外は鏡で映したかのようにそっくり同じでも、宏にとって美優樹は美優樹なのだ。

(こんなにも可愛い女の子が俺の奥さんだなんて、ギャラリーには判んないだろうなぁ♪)

 ちょっとした――否、大いなる優越感に浸る宏を余所に、美優樹の、宏への信頼は止(とど)まる所を知らない。

「たとえ行き先が地獄でも、美優樹は喜んで宏さんにお供します♪」

「美優樹ちゃん♥」

 などと目元を朱(あか)く染め、琴線に触れる事を言うから堪らない。
 高まる鼓動が更に二段階アップし、思わず正面から抱き締めたい衝動に駆られてしまう。
 すると、ここで金髪碧眼ハーフ美女からとんでも無い台詞が飛び出した。

「おいおい美優樹ちゃん! これから飛行機に乗ろうって人間が地獄は無いだろ? せめて三途の川にしときなよ♪」

 ウィンクとサムズアップ付きで悪ノリしたほのかの、何とも場違いな(否、もっとも似つかわしい?)ひと言。
 これには皆、時が止まったかのように固まり、屋敷のムードメーカでもある若菜もどう返して好いのか考えあぐねているのか、片頬がピクピク引き攣っている。
 この旅のグループリーダーである宏でさえ、

「ほ、ほのかさん……。それ、パイロットを生業としてる人が空港で言う台詞じゃ無いっしょ!」

 思わず突っ込んでしまった。
 そんな、誰もがどう反応して好いのか判らないでいると、いち早く復活した者がひとり。

「お、お、お、おのれは~~~~っ。言うに事欠いて~~~~っ!」

 腹の底から響く、重く低い声。
 見るまでも無く、長い髪をメデューサの如く蠢かせ、瞳に剣呑な光りを宿した晶だ。
 見目麗しき美顔をおどろおどろしい般若顔に変え、ほのかに一歩、また一歩と迫ってゆく。
 どうやら晶も宏同様、ほのかの台詞を素直に受け入れられないらしい。
 片や。

「「「ひ、ひえぇ~~~~~」」」

 突如、大魔神と化した筆頭妻に真奈美と飛鳥が抱き合って震え、千恵の後ろに隠れるように美優樹が身を隠す。
 もっとも、身体の大きな美優樹が屋敷では二番目に小柄な千恵(身長百五十センチなのだ)に隠れようが無く、むしろ千恵を盾にしているようにも見えて……。
 そんな、妻達の(可愛い♥)反応にお構い無しに、晶に怒りのピークが訪れた……らしい。

「こ、こ、こ、こっ――」

 しかし、余りに頭に血が昇った所為か、言葉がスムーズに出てこない。
 それでも、誰もが「このおバカ」と続くと思った、その時。

「コケコッコ~?」

 何とも間の抜けた合いの手が。
 二番目に復活した若菜だ。
 そんなニワトリの鳴き真似に、一同(高みの見物と洒落込んでいた周囲のギャラリー達をも)、大いにずっこけてしまった。
 ところが、そんな場の空気をほぐしてくれた(?)若菜に迫る影が。

「あ、あ、あ、あんたね~~~~っ! なんで、そーやって人をおちょくるような台詞、吐くかなっ!」

 千恵の、本日二度目の突っ込み。
 しかも、前回よりも激しさを増した、ぐーパンチで、だ。
 どうやら、人の怒りを小馬鹿にするかのような妹の言動が我慢ならないらしい。

「きゃいん、きゃいんっ! いった~い! 痛いってばぁ! 姉さんのいけず~。咄嗟に思い付くんだから仕方無いじゃない~」

「場の空気も読まず咄嗟の思い付きを口にするおバカがどこにいるっ!」

 ぶたれた頭を抱え、溢れ返る人を巧妙に避けつつ逃げ回る若菜と、瞳を吊り上げ、拳を振り上げ人を掻き分け一直線に追う千恵。

「……………………」

 そしてこの追いかけっこを、半ば唖然として見守る妻八人と、その場に偶然居合わせた数多くの旅行者と空港に勤めるスタッフ達。

「若姉、千恵姉、いつもよか姉妹のスキンシップに熱が入ってる? ま、いっか。この隙にチェックイン、済ませちまおうっと♪」

 そして引率責任者たる宏の、寛大なのか放置プレイなのか判然としないお言葉。
 奇しくもこの様子は、翌日の空港新聞(と羽田空港の公式ホームページ)の一面を飾るのだが、宏達がそれを知るのは帰国して暫く経ってからだった――。


                                            (つづく)

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