|
ライトHノベルの部屋
ライトHノベルの部屋
ライトHノベルの部屋
|
|
~ラブラブハーレムの世界へようこそ♪~
|
|
|
|
|
|
ララバイ(1)
ララバイ(1)
|
美姉妹といっしょ♪~新婚編
|
|
|
「多恵子さんが見事、ご懐妊なさりました♪」
妻達からの視線を一身に集める中、宏はリビングの中央に立つと厳かにそう告げた。 隣に並ぶ多恵子の肩に手を置き、二十二歳の若輩ながら妻を十人率いる者として、そして男として責任ある振る舞いをした――のだが。
(あ、あれ? 予想外に反応が無い!? なして?)
それまで幾つもの笑い声や談笑する声に満ちていた温かな空間は、一瞬で水を打ったようになった。 耳に届くのは、壁に掛かるアナログ時計が刻(とき)を刻む音とテレビから流れる音、そして北西の強い季節風が屋敷を吹き抜ける音、これだけだ。 息を呑んでいるのか、妻達の息遣いすら聞こえない……のは気の所為だろうか。
(おいおいおいっ! これじゃ――)
てっきり、すぐさま祝辞の雨あられが隣に立つ最年長妻の多恵子や自分に降り注ぐものとばかり思っていたのに、この静まり様はいったいどうしたことだろう。 背中にじんわりと冷や汗を浮かべつつも、意気込んで告げただけに拍子抜けしてしまった。
(これじゃ、多恵子さんだってきっと困惑して――ないみたいだな。さっきからずっと俯いてモジモジしてら)
最年長ながら、二年弱と新妻期間が最も短い妻を気遣うつもりでチラリと見たら、アップに纏めた黒髪のお陰でうなじから耳まで薄っすらと赤味を帯びていた。 どうやら、二十代が揃う若い妻達より真っ先に受胎した事実に、未だに照れ臭さが残っているらしい。
(まぁ、多恵子さんは他の面々から見たら鳶に油揚――とまで言わないまでも、俺の奥さんとして最初に次の段階(ステップ)へ昇進したようなもんだからなぁ。常に控え目で奥ゆかしい多恵子さんにとっては注目を集める事態になった、ってコトだもんな)
多恵子は(夏穂、飛鳥、美優樹もだが)、既存の妻六人(晶、優、ほのか、真奈美、千恵、若菜だ)より約半年遅れて同居し始め、正式な婚姻も先の六人より約八ヶ月遅れて結んでいる。 つまり、十人の新妻の中で最短で妊娠した事になるのだ。
(先日、多恵子さんから妊娠したと聞かされた時も、三十八歳で懐妊出来た嬉しさで真っ赤になってたっけ)
瞬き二回分で回想していると、それまで全く聞こえなかった周囲の雑木林や竹林が葉を揺らす音すら、今は手に取るように聞こえて来た――そう思ったのも束の間。 最初に歓喜の声を上げたのは、生まれながらの幼馴染にして妻のひとりでもある若菜だ。
「わ~~いっ! 多恵子さん、おめでとう~! 宏ちゃんもおめでとう~♪」
丸くしていた切れ長の瞳を思いっ切り細め、これ以上無い位の笑顔で、こちら目掛けて突進して来た。 そして両腕を拡げるや多恵子と一緒に抱き付き、二人の頬に何度もキスの雨を降らせてゆく。
「うわっ!? わ、若姉、落ち着いて! 俺は逃げも隠れもしないからっ。でもありがと♥」
「わ、若菜さん、くすぐったいですわ。でも、ありがとうございます♪」
宏は若菜の心からの祝辞に、胸が熱くなった。
(多恵子さんも、きっと同じ想いをしてるだろうな。嬉しそうに目を細めてるし)
そんな、白い肌と腰まで伸ばした濡れ羽色のストレートヘアを有する若菜のはしゃいだ声と拍手を機に、それまでフリーズしていた三人の妻が一斉に息を吹き返した。
「おめでとう! 本当におめでとうございます! 好かったですねっ! 本当に……好かったっ!」
満面の笑みを浮かべ、背中の半分を覆う黒髪をなびかせ多恵子に駆け寄ったのは二十五歳の真奈美だ。 両手を取るや何度も上下させ、少し垂れ目がちな瞳には薄っすらと涙まで。
「た、多恵子さん、おめでとうございます! ――って、余りにビックリしてあたい、暫し固まっちゃった」
若菜の双子の姉で二十四歳の千恵は、自身の反応に戸惑いつつも満面の笑顔で祝いを述べる。 頭の高い位置で纏めた赤いリボンと腰に届くポニーテールも軽やかに弾んでいる。 因みに、千恵の身長は百五十センチで八十四センチのDカップ、小柄ながらも手脚が長く、ボディーバランスがとても好い。 片や、妹の若菜は身長百七十五センチで七十八センチのCカップ、スーパーモデルに引けを取らないボディーラインと大和撫子を具現化したような外観を有しているので、二人を並べると双子にはとても見えない。
「……多恵子さん、おめでとう。ヒロクンとの、愛の結晶、だね♪」
ゆっくりと歩み寄った従姉の優は、普段のクールな表情を忘れたかのような笑顔を向ける。 身長百六十五センチ、シャギーにしたショートヘアと華奢なボディラインは一見すると美少年の様だが、ちゃんと出る所は出て(七十七センチのCカップなのだ)、括れる所は括れているスレンダー美人だ。 常に冷静な思考と的確な判断で株やFXに精通し、お屋敷の(億単位の♪)家計を一手に引き受ける、唯一無二の大蔵大臣でもある。
「多恵子さん、おめでとう! これからは無理せず、オレ達に家事とか用事、言い付けて下さいね!」
サムズアップとウィンクで祝し、優しいハグで多恵子を包み込むのは、北欧はスウェーデン生まれのハーフ美女にしてお屋敷唯一の金髪碧眼娘、ほのかだ。 身長百七十三センチ、八十三センチのCカップボディーと長い脚、切れ長の二重瞼と彫りの深い顔立ちは日本人では到底太刀打ち出来無い美を備えている。 腰に届くまで伸ばした波打つ金髪は光を受けて常に煌めき、透き通った碧眼はどこまでも吸い込まれそうだ。
(若姉、千恵姉、真奈美さん、優姉、ほのかさん、ありがと!)
気付けば、それまで静まり返っていたリビングは歓喜の渦に満ち溢れていた。 二十四歳から二十六歳の若妻五人に取り囲まれた多恵子もニコニコと応じ、何度も相槌を打っては目尻に指をそっと這わせてもいる。
(よかった! みんな元に戻った。多恵子さんも安堵の表情、浮かべてら)
一瞬とは言え、反応の無かった妻達の心情を危惧した宏だったが、この様子ならば大丈夫そうだ。 お屋敷では筆頭妻たる晶の次席にいる優(晶の双子の妹なのだ)と、お屋敷のムードメーカでもある、若菜とほのかの二人が祝っているのならば、この後も決して暗い雰囲気にはなるまい。 それに、『歩く常識』と評されている千恵と、『癒しの真奈美』と謳われて久しい真奈美もいるので、場の空気を重くするような言動は誰も取るまい。
(若姉も心から祝ってくれてるみたいだ。『あ~ん、先を越されたぁ~』とか言って泣き出すかと思ったけど、杞憂に終わって好かった♪ で、こっちはそれで好いとして……あっちは少々アレ、かな?)
内心で安堵の息を吐(つ)いた宏は、未だソファーから動かない、残り四人の妻達へ目を向ける。 そこは二十畳あるリビングの窓側に位置し、三人掛けと二人掛けソファーが並んで向かい合い、上座にひとり掛けソファー――五十インチのテレビを真正面に見る席で主に宏が使うが、今はみんなで世話している仔猫が丸くなっている――が大きなガラステーブルを取り囲むようレイアウトされている。 食後の団欒は、こことすぐ後ろ――キッチン寄りにあるダイニングテーブルとに分かれて(適度に散って)座る事が多く、今夜はダイニングテーブル側のソファーに食後の酒を楽しんでいる夏穂と晶が、窓側のソファーはテレビを見ていた飛鳥と美優樹が席を占めていたのだった。
(ありゃりゃ、夏穂先生と飛鳥ちゃんと美優樹ちゃん、完全にフリーズしてら。まぁ、多恵子さんにより近い身内なら、ある意味、こうなるのかな?)
宏の目は、多恵子の六歳下の妹で高校時代の恩師(晶と優、千恵と若菜の恩師でもある)が缶ビール片手に石化している様子を捉えていた。 肩を軽く覆うセミロングの黒髪や、今は真ん丸く見開かれた切れ長の瞳、そして薄くスライスされたサラミソーセージを突き刺した直後なのだろう、爪楊枝を持つ手すら微動だにしていない。 しかもよくよく見ると、息も詰めているのか呼吸に合わせて微かに上下動する豊かな胸(千恵と同じ、八十四のDカップなのだ♥)すら動いていないではないか。
(夏穂先生からすれば、新たな親戚が誕生するんだもんなぁ。心中穏やかじゃ無いのかも)
身長百七十センチで三十二歳の恩師にとって、見た目は二十代前半で通用する若々しさと、『男を魅了するナイスボディー(但し本人談)』を誇ってはいても、姉に三人目の子が宿り、生まれるとなると、否が応でも自身の年齢を意識しない訳にはいかないのだろう。
(夏穂先生、『アラサー』とか『三十路』とか言われるの嫌ってるしなぁ。もしかして己の現状と年齢を突き付けられた気分にでもなったのかな。だとしたら、この後、変に暴れなきゃ好いけど……)
宏は一瞬、リビングで大暴れする恩師を必死な形相で宥める自分の姿を想像し、身震いしてしまった。 相手は恩師でも、今や妻のひとりなので夫として放って置く訳にはいかないのだ(他の面々は難を恐れ、隠れて見ているか自室に逃げ込むのだ)。
(でもまぁ、幸いな事に今日の晩酌の相手が晶姉で好かった。万が一、夏穂先生が大暴れしても即、制してくれるだろうし)
晶と夏穂は年齢が六つしか離れていない所為か、元生徒と恩師よりも姉妹の関係に近い。 二人共、背丈が同じだし竹を割ったような性格をしているので共感する部分が多いらしい。 実際、夏穂が(主に酔っ払って)暴走しても、歳下にも係わらず容赦無い突っ込みを入れるのは晶なのだから(時々、優も突っ込むが手厳しい言葉だけだ)。
(まぁ、晶姉は筆頭妻としてのプライドも持ってるからな。それに、相手が誰であろうと物怖じしないし)
昼間は飛行業務部長と言う事務方のトップにありながらも実質、会社のトップとして君臨し、八面六臂の活躍をしている晶なので、仕事から離れたプライベートタイムですら凜とした態度を崩さないのだ。
(もっとも、晶姉の場合は単に、みんなの前では『ええ格好しぃ』なんだけどねー)
晶は幼い頃から人の先頭に立つ事が好きで、目立ちたがり屋で負けず嫌いなのだ。 そんな従姉の可愛らしさに、つい、ニヤニヤと薄笑いを浮かべてしまう宏。 今夜の夏穂の相手は、最後まで従姉に任せるとする。 ……断じて、恩師からのとばっちりを受けたくない! と思ったとしても、表情には出さないスキルは修得済みだ。
(夏穂先生はともかく、こっちの二人が固まるのは意外だな。新たな家族が増えるのに、何か問題、あるのかな?)
宏は多恵子の第一子である二十歳(はたち)の飛鳥と第二子である美優樹の様子を注意深く覗ってみる。 この姉妹は三歳差にも係わらず鏡で映したかのように瓜二つ――否、全く同じ外見をしているのだ。 身長百八十センチと屋敷一高く、脚の長さも身体の半分はありそうな九頭身ボディー。 切れ長の二重の瞳と細い眉、鼻筋の通った小顔に薄ピンクの小さな唇。 明るく艶やかな栗色の髪は頭の高い位置でツインテールに結い、その先端は優に腰まで届いている。 声質も全く同じで、同時に同じ言葉を言われるとまるでステレオ放送かと錯覚してしまう程だ。
(これで同じ服を着たら、普通の人は見分け、付けられないもんね。いつだったか、試しに同じ服を着させてリビングに呼んだら、みんな目を白黒させて、どっちがどっちなのか判んなくなっちゃったもんねー。その後はタネ明かしして大爆笑したし)
飛鳥と美優樹、夏穂の三人がこの屋敷に同居し始めた直後の話だ。 宏が悪戯心を発揮し、同居して最初の休日に朝食の席で仕掛けたのだ。 そのお陰で既存の女性陣と、より打ち解け(同居以前から顔見知りではあったのだ)、同居に伴う互いの緊張も程好くほぐれたのではないかと宏は思っている。
(まぁ、普段は服装で見分け、付くからね。飛鳥ちゃんはミニスカと黒のサイハイソックスがトレードマークだし、美優樹ちゃんに至っては白のレースで縁取られた黒のゴスロリ衣装が普段着や外出着だもん)
特に、美優樹の纏うゴスロリドレスは今も昔も、どこへ行っても注目の的だ。 女性としては高い身長と煌めく栗色のツインテールだけでも目立つのに、完璧なゴスロリ衣装が加わるのだから人目を惹か無い訳が無い。 頭には常に黒のヘッドドレスを載せ、夏でも足首まで届く長袖のゴスロリドレスを纏うその姿は歩くアンティークドールの様。 オマケに中学で一年、高校では二年、飛び級した才女でもある。 そんな幼くも容姿端麗な才女が総合女子大――しかも工学部の航空学科へ通っているのだから、今尚、周囲から人垣が絶える事が無いらしい。
(でも、よくよく見ると妹の美優樹ちゃんの方がオッパイ大きいんだよねー。八十のBカップに対し、飛鳥ちゃんは七十四のAカップ~♥)
微(美)乳好きでもある宏には、飛鳥の手の平に収まる『ちっぱい』はこの上無い貴重品(?)なのだ。 加えて、中学の二年後輩――同じ陸上部に所属していた――でもある飛鳥の絶対領域は目を見張るものがある。 ミニスカートから伸びる白い肌と黒のサイハイソックスの絶妙なバランスは、今でも興奮するネタになっている。
(陸上短距離で鍛えた長い脚は伊達じゃ無いからね~♪ カモシカの様に締まった太腿は芸術品だよなぁ♥)
飛鳥は当時からミニスカとサイハイソックスを好んで着用していたので、宏は密かに(横目で♪)見ては瞳を煌めかせ鼓動を早めていたのだ。 しかも嬉しいコトに、飛鳥は今も昔と変わらずミニスカとサイハイソックスで休日を過ごし、大学(がっこう)へも通っている。 立派なレディに成長しても常に絶対領域を見せてくれる(?)飛鳥に、脚フェチ属性を発した宏が心惹かれるのも当然だろう。 因みに、宏の最もたる属性はパイパンであり、天然パイパンの若菜と多恵子、飛鳥を除いた妻七人は宏の好みに合わせて自ら股間の翳りを剃り落としている。
(今日の飛鳥ちゃん、赤地に黒のタータンチェックのミニスカ、だもんなー。絶対領域が強調されて目が吸い寄せられるー♪)
黒いサイハイソックスの縁が白く張り詰めた太腿に僅かに食い込んでいる様が特に色っぽく、情欲をそそられるのだ(ズボンの前がムクムクと膨らんで来た……)。 目尻と鼻の下を思いっ切り伸ばした宏がソファーに座る飛鳥の太腿に魅入っていると、何やら澄んだ声が途切れ途切れに聞こえて来た。
(ん? 飛鳥ちゃん、何か呟いてる?)
リビングの喧騒に掻き消されぬよう、摺り足で少し近付き、陸上部で鍛えた――でも筋肉質では無いムッチリとした太腿を凝視したまま耳を澄ましてみると。
「お母さんに……子供? お母さんの……子供? 宏先輩の子供をお母さんが!?」
三人掛けソファーの中央に座る飛鳥は、食べかけの塩煎餅を咥えたまま視線が彷徨っていた。 どうやら事の重大さに混乱しているらしい。 しかし、ソファーに深く腰掛け、両膝を大きく開けているので薄ピンク色のショーツが丸見えになっている。 オマケに、プックリと丸く膨らんだクロッチには深い縦溝が刻まれ、その中心部が笹の葉状に僅かだが色が濃くなってもいる。 どうやら今日一日穿き続けていた所為か、体液か何か(!?)で薄っすらと汚れてしまったようだ。
(飛鳥ちゃん、パンツ見えてるっ! 女の子ならもっと慎みを持って! ……でもまぁ、家(うち)の中では、もっとリラックスしても好いかなぁ♥)
声に出して注意するでも無く、妻となった後輩のショーツをガン見し、誰が見ても丸判りになる程、完全(フル)勃起させる宏だった。 一方、その隣では多恵子や飛鳥と同時に娶った美優樹も目を丸くし固まっていたが、両手をパチンと打ち鳴らし、ハッと気付いたように破顔した。
「お母さんに子供? 宏さんとの間に!? ってコトは、お姉ちゃんと美優樹に妹が出来たってコトじゃないっ!」
(美優樹ちゃんは……フリーズが解けたみたいだな。でも――)
飛鳥から美優樹に視線を移すと、夏に咲く向日葵の如く、見る間に満面の笑みを浮かべてゆくのが判った。 しかも美優樹の脳内では、生まれ出る子は女の子に決まったらしい。
(美優樹ちゃん、気が早いって! まだ男か女か判んないって。 でもまぁ、多恵子さんの三人目の娘なら美人で可愛いコト、超、請合いだな!)
美優樹同様一気に破顔し、早くも親バカ振りを示す宏だった(でも股間のテントは張ったままだ)。 片や。
「姉さんに……子供? 宏クンとの……子供!?」
飛鳥の正面に陣取る夏穂の切れ長の瞳は真ん丸のまま、依然として唖然とした顔のままだ。 よくよく見ると頬が小さく引き攣り、金属音を立てて缶ビールを大きく凹ました手が細かく震えてもいる。
(夏穂先生、缶ビール握り潰して……嬉しく無いのかな? 新たな姪が生れるかもしんないのに)
恩師の笑顔を見られない宏は眉を僅かに寄せ、心が少し重くなりかけ――たら。
「姉さんの子供ってコトは、ウチにとって新たな甥っ子の誕生かっ?! やったぁ!!」
こちらも一気に破顔し、潰したままの缶ビールを一気に呷る夏穂。 どうやら祝杯を上げる夏穂の脳内では、生まれ出る子供は男の子に決まったようだ。 流石、夏穂と美優樹は叔母と姪の間柄だけあって、行動パターンが同じだ。 しかも。
「ハッ!? ま、待てよっ!? もし男子ならば……叔母であるウチが年頃になった甥の童貞を捧げられたり貰ったりなんかしたりして、これぞ本職による保健体育実習――」
普段の凜とした現役国語教師とは思えない緩みきった顔でじゅるり、と涎を啜り、ぐへへ、と思いっ切り相好を崩した直後。
「ナニをバカな事言ってるの、あなたはっ!」
「ナニ、ドアホなコト言ってるっ! この腐れ女教師がっ!」
鈍いながらも小気味好い打撃音が二つ、屋敷全体に同時に響き、リビングの喧騒が一瞬で止む。 歓喜に湧いていた女性陣は唖然とし、ソファーで丸くなっていた仔猫は反射的に首をもたげて何事かと辺りを見回し、宏も呆気に取られたまま見つめる先には。
(た、多恵子さん。すっげ~)
右の掌をグ~にしたまま瞳を吊り上げ、アップに纏めた黒髪のほつれ毛が炎の如く揺れ動く多恵子の姿が。 崩れ落ちた夏穂の背後で、フ~フ~と鼻息荒く仁王立ちしていた。 どうやら、若菜達祝いの輪から数メートルの距離を瞬時に移動したらしい。 驚くべき早業に、宏は改めて目を見張ってしまった。 そして。
(晶姉……。ド突くにしても、それで頭ド突いたらシャレにならんって)
恩師の隣で晩酌の相手をしていた筆頭妻の晶は三角にした切れ長の瞳を何事も無かったかのように元に戻し、未開封の缶ビールを左手で握ったまま悠然と肴を摘んでいた。 どうやら、夏穂の暴言(妄想……欲望?)に、反射的に腕が伸びたらしい。
(晶姉も、夏穂先生には手加減しないな。でもまぁ、割と歳も近いし、気さくに触れ合える好いコンビなのかも。だったらこの先、我が家は安泰だな!)
宏にとって四歳と十歳上の妻同士の絆(?)の深さに、改めて感銘を受けたのだった。
(でも夏穂先生、座ったまま完全に伸びてら。暫く放って置いても大丈夫……だよな?)
二人からのキツ~い突っ込みが見事シンクロしたらしく、夏穂はソファーに座ったままガクリと頭(こうべ)を垂れ、ピクリとも動かない。 片手に缶ビール、もう片手は肴に伸ばした腕がそっくりそのままの形で固まっている。 どうらら、かなりの痛手(ダメージ)を喰らい、瞬殺されたらしい。
(俺、多恵子さんがここまでキツい鉄拳振るうの、初めて見たかも)
普段は淑やかな言動の多恵子だが、妹の夏穂だけには時々、感情を露にする事がある。 今までに軽い突っ込みや窘めは幾度かあっても、ここまで激しい突っ込み(制裁?)は初めてだ。
「多恵子さん、落ち着いて。夏穂先生の妄想暴言は今に始まった事じゃ無いでしょ?」
屋敷では一番小柄で、今尚息の荒い多恵子を、宏は背後から両腕を回してそっと抱き締めた。 身長百四十八センチの小柄な身体は身長百六十九センチの宏の胸の中にスッポリと収まり、すぐに多恵子の呼吸が収まり、全身から力が抜けるのが判った。
「晶姉も、夏穂先生のジョークはいつもの事じゃん。落ち着いて――って、既に平常モードに戻ってら」
「ヒロ、恩師と言えど、言って好い事と悪い事が――って、ヒロに言ってもしょうがないわね。ま、夏穂先生は暫く禁酒刑に科しとこうか」
恩師を思いっ切りド突いて溜飲が下がったのか、はたまた仕事のストレスを発散してスッキリしたのか、喉の奥でクックックと小さく笑った筆頭妻は微かに凹んだ缶ビールを開けるや喉を鳴らして飲み干してゆく。 そんな従姉に。
「晶姉、今日はいつもよか少し呑み過ぎじゃね? そろそろ控えたら?」
「な~に。明日は土曜で休みだから構わないって! それとも、あたしの代わりにヒロが呑む? あははははっ!」
やんわりと御忠告するも晶は破顔し、ソファーの背もたれに寄り掛かっての大笑い。 普段から妻達の代表として凜とした態度を崩さない晶だが、晩酌から呑み続けている所為か、今は少々アルコールが回っているらしい。 しかも、
「晶姉、スリットの深いタイトスカートのまま片膝で胡座掻くの、止(や)めたら? さっきからセクシーなパンツが丸見えになってるよ? 筆頭妻として他の奥さんの手本となるんじゃ無かった?」
美人従姉の、あられもない姿(サービス?)に、立派なコトを言いつつも男として極自然に視線が吸い寄せられてしまう。
(晶姉、今日は紫のレース……か。丸味を帯びたクロッチに浮かぶ舟形と微かな突起が何ともエロっぽいなぁ♥)
などと、瞳を嬉しげに細めた晶に気付く事無く、宏は筆頭妻のデルタ地帯を横目でガン見する。 しかも、晶は部屋着にも係わらずガーターストッキングを着用しているので白い肌の太腿に微かに食い込む黒のガーターが何とも性欲を掻き立てても来る。 もしかしたら、年少の飛鳥と宏の視線を巡って張り合って……いるのか、いないのか。 飛鳥の、絶対領域と共通する魅惑ゾーンに、宏が時場所状況を忘れて魅入っていたら。
「あの……宏さん」
抱き締めている温かくて柔らかい肢体がもぞもぞと身動ぎした。 多恵子から立ち昇る好い香りが鼻腔をくすぐり、宏の意識が呑んだくれている晶から腕の中の最年長妻へと向く。
(あ……多恵子さんの、いつも使ってるリンスインシャンプーの匂いだ。そしてほのかに混じる、多恵子さん自身の匂いも♥ むふ♥ 今夜は無理しない範囲で、多恵子さんと二人っきりでエッチ、しようかな。……まぁ、他の奥さんが黙ってないだろうけど。特に若姉とか……晶姉とか)
などと甘い妄想に鼻の下を伸ばしていたら、当の本人からの、柔らかなアルトの声が宏の意識を呼び覚ました。
「あの、申し訳ありません。少々、取り乱してしまいました。もう大丈夫ですから。おほほほほ♪ ……それに」
夫でもある宏の執り成しに、目元を紅(あか)らめた多恵子は振り返りつつチラリと飛鳥と晶に視線を向けた後、恥ずかし気に言い切った。
「あの……わたくしの腰に、さっきから宏さんの熱くて硬い、大きく滾ったモノが当たってますの♥」
「へ?」
「宏さんったら、飛鳥と晶さんのお色気に中てられて『お元気』なまま、ですわよ? おほほのほ♥」
多恵子が教えるよう、さっきより腰を大きく動かした、その瞬間。
「はうっ!? あぁあっ!! す、すいませんっ! すぐ離れますからっ!」
慌ててハグを解く宏。 飛鳥と晶のパンチラ(パンモロ?)ですっかり臨戦態勢となったイチモツがジャージのズボンを大きく押し上げ、多恵子の腰に密着していたのだった。 宏の身長は百六十九センチなので、立った状態で背後から多恵子を抱き締めると、丁度、多恵子の腰の上辺りにイチモツが来るのだ。
「あん、残念。わたくしはこのままでも構いませんわよ? おほほ♥ でも、夏穂ちゃんの暴言にはひと言、物申さないと気が済みませんわ」
ニコリと微笑み、夏穂をノックアウトさせた理由を多恵子は事も無げに言い切った。
「息子の童貞は叔母ではなく母親が貰うものですっ! そして娘の処女は父親に捧げるものですわ!」
一瞬の静寂後、場の空気が紛糾したのは言うまでも無かった(後に、飛鳥の持つレディコミを真似たものだと判明した)――。
(つづく)
 ↑↑ 「面白かった♪・良かった♪・エロかった♥」と思われた方はクリックをお願いします♪ (ランキングサイトに投票され、作者が悦びます♪)
|
|
|
|
|
|
|