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優といっしょ(1)
優といっしょ(1)
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美姉妹といっしょ♡
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「ねえヒロ? 相談があるんだけど、時間大丈夫?」
朝食の席で晶が左隣にいる宏に声を掛ける。
「うん、平気だよ。家を出るまであと十五分あるから」
「ありがと。あのね、この部屋の事なんだけど……」
ここまで言うと晶は語尾を濁し、すまなそうな表情になって宏の顔を伺う。
「正直、五人で暮らすにはこの部屋では狭いと思うの。もっと広い所へ引越したらどうかしら?」
晶の単刀直入の提案に千恵と若菜の美姉妹(しまい)は驚いて箸を止め、晶に視線を向ける。 宏は驚きもせず、晶の言葉を待つ。
「五人で住むには余りに狭いし、お互いのプライバシーもある程度必要でしょ? それに……二人っきりになりたい時もあるでしょ?」
と言いながらみんなの顔を見渡す。 二人っきり、と言う言葉にすぐさま反応したのが若菜だ。
「うん♪ みんなで宏ちゃんとセックスするのもいいけど~、たまにはしっぽりと二人だけになりたいわ~♥」
「こっ、こらっ! 朝っぱらからセ、セックスとか言うんじゃないわよっ!」
瞳を煌めかせる若菜に顔を赤らめた千恵が素早くツッコむ。
「あら姉さん~、宏ちゃんと二人っきりになりたくないの~? みんなが見ている前で抱かれる方がいいの~?」
若菜が切れ長の目を細め、にやけた表情になって千恵を見つめる。
「だっ、誰がそんな事言ってんのよっ! あたいはっ! あたいは……あたいだって宏と二人っきりになりたいわよ……」
最後の方はごにょごにょと言葉が尻つぼみになり、首から上を真っ赤に染めて俯いてしまう。 処女を失っても初心な千恵に、みんなが顔を綻(ほころ)ばせる。
「でしょ? 毎晩毎晩四人から搾り取られたら、いくらヒロだって腎虚になっちゃうわよ。それに、『しない』人のすぐ隣で『する』のも、はばかられるでしょ?」
晶の大きな瞳が宏を捉える。 その目は笑っているが。
「ヒロがずっとこっちで暮らすなら、あたしに心当たりあるから良ければ紹介するけど? でなければ、実家に帰ってもいいんだし。向うなら部屋はいっぱい空いてるし、家賃も掛からないしね♪」
晶のもっともな意見に宏は大きく頷く。 その実、宏も同じ事を考えていたのだ。
「うん、確かにこのままではマズイと俺も思った。みんなに窮屈な思いをさせたくないし」
宏が目を覚ました時、ひとつの布団の中で右に晶、左に若菜が宏の腕をそれぞれ抱えて眠っており、宏の頭の上側には優と千恵がくっ付き合って布団に包(くる)まっていたのだ。 全員全裸のままでさすがに気恥ずかしかったが、それよりもみんなが身を縮める様にして眠っている事に心が痛んだ。 宏の部屋は六畳間と四畳半を合わせて使っていても、家具や細々した物があるので実質六畳分の広さしか無い。 そんな所へ大人が五人。 五組の布団を敷くスペースさえ、ままならない状況なのだ。
(せ、狭いっ! 何とかせんと、このままでは彼女達が可哀想だ。いっそ引越すか? でも……)
柔らかい肉布団に挟まれながら宏はずっと考えていたのだ。
「だから引越すのは構わないんだけど、その……つまり……田舎に帰るとなると、ちょっと……」
宏は肩を竦めて本心を打ち明ける。
「俺、田舎には帰りたくない。田舎には無い物がここにはたくさんあるし、住むにも比べ物にならない位便利なんだ。全てに於いて。まぁ、自然環境だけは田舎が勝るけどね」
「そう……ね。暮らすには適さなくても、住むにはとても良い所ですものね、東京は。いいわ。あたしはヒロに従うわ。ヒロが東京に居たいのなら、あたしはサポートするだけよ♪」
晶がウィンクして寄越すと、若菜は投げキッスで対抗する。
「そうだよ~。宏ちゃんが決めた事だから私も付いてくわ~。だって妻なんだもん♥」
ルンルン気分の若菜の隣で、千恵がじっと何かを考え込んでいる。
「千恵姉? 何かあるの?」
宏の問い掛けにゆっくりと顔を上げ、顔を見つめてくる。
「宏がそうしたいなら、あたいは付いてく。だけど、その……部屋を借りるだけのお金はあるの? こっちは部屋代も高いんでしょ? 無理して働く様な事にならない?」
心配する瞳に見つめられた宏は鼓動が早くなる。 愛されている事を改めて実感したのだ。
「ん~、それなんだけど……」
宏はバツが悪そうに鼻の頭を掻く。
「五人で暮らせる賃貸マンションとなると、それぞれが個室を持てる5LDKは予算的に到底無理。姉妹で一部屋使うとして最低でも3LDKは必要だと思うんだ。でも、そうなるとひと月の家賃だけで十五万以上掛かって……俺の今の給料だと全然足りないんだ」
宏はバイトの手取り額と東京での沿線別賃貸マンションの家賃相場、ひと月分の光熱費や食費など必要経費をみんなに聞かせる。
「となると……最低でもひと月二十五万は必要なのね。このままだと……毎月七万円の赤字だわ」
千恵が東京の家賃の高さに驚くと共に、赤字額の大きさに溜息を付く。
「姉さん~、私達の貯金で――」
若菜の有り難い台詞を宏が即座に遮る。
「それは駄目だよ、若姉。これはあくまで俺の給料の問題なんだから。千恵姉や若姉のお金に頼る訳にはいかない。俺が何とかしないと」
「でも、いきなり給料は上がらないわよ? ハードな仕事に変えない限りね」
今度は晶が微笑みながら宏の台詞を遮る。 宏は晶の態度に首を傾げる。 財政難の話をしているのに、随分と余裕と含みのある態度なのだ。
「晶姉、それは判っているさ。だからもっと時給の良いバイトに替えるつもりなんだ」
宏は頭の中で素早く計算する。
(時給九百五十円の仕事だと毎日十一時間働いて二五日勤務、六勤一休……か。みんなと過ごす時間が無くなるな……)
深い溜息を付き、暗く沈んだ顔の宏に今までずっと黙っていた優が初めて声を掛ける。
「……ヒロクン、パソコン借りてもいい? 見せたい物がある」
宏が頷くのを確かめてからパソコンを立ち上げ、何やら打ち込み始める。 晶がニヤニヤして宏の顔を見ているのが気になる。
「……はい、ヒロクン。これ見て」
優は都市銀行の残高照会の画面を宏に向ける。
「これって優姉の口座? 俺が見てもいいの?」
「……ふふ♪ ここ、よく見て」
優が指し示す名義人の所には宏の名前が表示されている。
「え!? これ、俺の? 何で??」
宏は訳が判らず、優の顔をまじまじと見つめる。
「……忘れちゃった? 元々はヒロクンが稼いだお金だよ♪」
「俺が稼いだ? いつ??」
「すっかり忘れている様ね。ヒロ、高校二年の夏休みの時の事、覚えてなの?」
晶が可笑しそうに口を挟んで来る。
「高校二年の夏? 今から四年前だよな……。俺、何かしたっけ? ん~~~~??」
宏は首を傾げながら虚空を見つめ、必死になって思い出すが全然心当たりが無い。
「宏が高校二年っていったら……確か夏休みにバイトしてなかった? 西瓜運びの」
千恵が当時を思い出しながら言うと、若菜がコロコロ笑いながら続く。
「そうそう、思い出したぁ~。確かあの時、宏ちゃんバイトで忙しくて全然構ってくれないから姉さんが拗ねちゃった時だ~♪」
「な゛っ! 何言ってんのよっ、あんたはっ! そっ、そんな事覚えて無いわよっ! 拗ねたのはあんたじゃないっ!」
しどろもどろになった千恵が再び顔を真っ赤に染めながら若菜を睨む。
「しっかり覚えているじゃない~、姉さん♪」
「う゛っ!」
若菜の切り返しに言葉が詰まってしまう千恵。 そんな美姉妹の漫才を他所(よそ)に、宏は当時を思い出す。
「西瓜運び? あ~~~~~っ! もしかして、その時稼いだ金か!?」
「やっと思い出した様ね♪」
晶が笑いながら肩をバンバン叩いて来る。
(さっきニヤニヤしてたのはこの事だったのか)
宏はようやく納得するが、晶の態度を見ているとまだ何かありそうな雰囲気だ。 子供が買ってもらったおもちゃが早く届かないかな、と期待して待っている様な、これから起こる楽しい事を首を長くして待っているかの様な、そんな顔つきなのだ。
(悪い事ではなさそうだけど、他に何かあるのかな? 第一、あの時稼いだ金は大した額じゃ無かった筈。それにその金、俺、どうしたっけ??)
首を傾げ、完全に思い出せないまま優に顔を向けて経緯(いきさつ)をせがむ。
「……あの時、ボクがヒロクンから預かったお金だよ♪ 覚えてない?」
「預けた? 俺が優姉に?? ん~~~~~ああっ! そうだ、そうだよ! 確かあの時……」
「……そう。何倍にもして見せる、って言ってヒロクンから預かったお金。それをボクが今まで管理して来た♪」
「そうだ、優姉に預けて……すっかり忘れてた。ありがとう、優姉。今まで預かってくれて」
ペコリと首を下げ、完全に思い出した宏を優が嬉しそうに見つめてくる。
「……だからこれは正真正銘、ヒロクンのお金♪」
微笑みながら残高の欄を優が指で指し示す。 そこには……。
(つづく)
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【 お寄せ戴いた御意見・御感想 】 |
とても面白いです 早く続きが見たい!!
見物人さん コメント&御感想ありがとうございます♪
現在週2回(中3日)ペースで掲載しております。 極力頻繁に更新したいのですが、何分遅筆なもので・・・(汗)
頑張って執筆しておりますので、次の掲載まで少々お待ち下さいませ。
初めましてこんにちは。
あぁ先が気になる! そんな終わらせ方が憎いですね。
頑張って下さい。応援してますよ
Exllen-rradayさん 応援&お越し下さいまして有り難う御座います♪
これからも御贔屓にして頂ければ幸いです♪ わたくしも頑張りますので(笑)
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